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第1話 前泊ホテルから成田空港へ [往路]

旅が始まった途端、リーマン・ショックを引き金としたブラックマンデー以上の経済危機に遭遇することになった。ポンドやユーロの価値が下落する。買物をするにはありがたいことだ。しかし株価も世界の各地市場で大幅に下落する。日本株も同様だ。旅行資金として帰国後売却しようとしていた株も大きく値を下げる。下がれば必ず上がる。下げ続ける株はない。ブラックマンデーの時だってすぐに値を戻し、安値で買って大儲けした投資家もいる。直後に慌てて売却した投資家は逆に大損したのだ。今度も同じだ。株価は戻る。そう考えた私はやはり素人だった。リーマン・ショックは1929年に始まった世界大恐慌に匹敵する大事だったのである。
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ホテルから空港へ向かうシャトルバスには私たちと中年中国人のビジネスマンがひとり乗っていた。50人以上は乗車できるであろうバスにたった3人だけだ。運転手は中国人ビジネスマンと私たちに下車するターミナルを尋ねた。私たちも中国人も第1ターミナルと答えた。でもさらに乗客は増えた、乗り遅れたおばさんたちがいたのである。中国人ビジネスマンと私たち3人を乗せた大型シャトルバスが定刻にホテル正面玄関を出て空港へ向かう道路に出ると、後方でホテルの従業員がバスに向かって走りながら何かを叫んでいる。どうやらバスに乗り遅れた人がいるらしい。バスはその場に停車しその乗客を待つ。中国人ビジネスマンは早くも携帯を取り出し大阪にいるらしい日本人スタッフに英語で電話しはじめていた。その声のでかいこと。他人の迷惑などお構いなしである。やがてふたりのおばさんが乗車、運転手さんや先に乗車している私たちへの謝罪の言葉もない。さすがおばさんである。OBASANが、SYOSHAのように海外の辞書に載る日も近いだろう。空港のターミナルビルが見えてきたころ運転席に備え付けられた電話がなった。話の内容から察するに乗客の中にホテルに忘れ物をしてきた人がいるらしい。私たちではないことは確かだ。電話を切ると運転手さんが、ハンドルを握り前方を見ながら、フロントに貴重品預けたままお忘れになった方はいませんかと尋ねた。運転手はその対象者をすでに知っているようだ。乗り遅れたおばさんが奇声を発した。「すっかり忘れてたわ」というのである。しかし次におばさんがボソッと呟いた一言に私たちは驚いた。「ホテルの人が持ってきてくれるわよ」と言ったのである。悪びれたところなどさらさらない。ホテル側がもってくるのが当たり前という感覚なのだろう。中国人はあいかわらずズーっと大声で電話の向こうの相手と話し続けている。いつの昼飯かはわからないが、ランチの時間を指示している様子だった。バスはまず第二ターミナルに到着した。バスの乗客にここで下りる人はいない。早い便で帰国もしくは来日した乗客を乗せるためであろう。しかし、乗る人はいなかった。運転手が扉を閉めると、中国人が座席に広げた書類をあわててブリーフケースにしまい込みながら「ここでおりる」と叫んだ。ここは第二ターミナルですよと運転手がいうと、「間違いだった。ここでおりる」という。意味不明な中国人ビジネスマンであった。ああいう人と商売をする日本人はよほどタフでなければ相手にならないだろう。彼を下ろし、しばしの静寂の後、バスは第1ターミナルに到着。私たちは下車し、重たいスーツケース2個を受け取りターミナルに向かった。忘れ物をしたおばさんふたりは私たちが下車した後も車内に残り、運転手さんと協議していた。バスにそのまま乗ってホテルに帰り再度出直したのか、はたまた運転席の電話を通して交渉というか強行な態度でここまでもってくることがサービスだ言い張り、ホテル側をねじ伏せたのかは定かでない。

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