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第2話 人影まばらな成田空港ターミナル1 [往路]

私たちの搭乗する全日空機は成田空港ターミナル1から出発する。成田空港が開港した1978年にはターミナル1しかなかったが、利用客の増加にあわせて1992年に第2ターミナルも完成。現在は日本航空がターミナル2、全日空はターミナル1を拠点として世界各地に国際線便を離着陸させている。チェックインカウンターはさほど混雑していなかった。11時半の離陸まで時間は十分すぎるほどあったが私たちはチェックイン後すぐに出国手続きを済ませ、ターミナル内で出発を待つことにした。
ターミナル2の南ウイングはほぼ全日空と提携航空会社の専用ターミナルのようなもの。改装後間もなく天窓を通して陽の射しこむコンコースは広く明るく美しい。出発便も少ないせいか歩いている人も少なくガランとした印象だった。奥さんはまず免税店に入り現地での販売価格が高い上、日本の銘柄を入手することは不可能なので、吸わない私の許容数量も合わせ2ケースの煙草を購入。私は書店でその日が発売日だった自動車専門誌を買い求め、コンコースのソファーに腰掛けて、メイルを打ったり、本を読んだりして時間をつぶすことにした。
全日空201便ロンドン行きの搭乗開始を知らせるアナウンスが流れると、ソファーから一斉に搭乗客が立ち上がる。座席も決まっているのだからあわてて搭乗口に向かう必要もないのだが、日本人は本当にせっかちである。新幹線で東京に行くとき、新横浜を過ぎると荷物を持ってドアの前に向かうサラリーマンの姿を描いた漫画があったことを思い出してしまった。
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私たちの席は最後部から二番目。ボーイング777型機の座席配置は左3、中央3、右3の横9列配置だが、後部は2,3,2の7列配置。両サイドは3席ではなく2席のみとなっている。私たち二人が陣取れば他の乗客が座ることはないのだ。出発半年以上前に購入したときは、ほぼ全席空席だったので、私たちはその席を楽々確保できたのである。登場口から機内に入ると乗客がハットボックスに手荷物を押し込んでおり、ギャングウェイをスムースに歩くことができない。まして私たちの席は最後部だ。その道のりは長い。ようやくたどり着くと私たちの後ろ、最後部の二人がけのシートにはすでに乗客が座ってくつろいでいた。新婚ではない。男二人。話すわけでもない。二人とも別の方向を向き座席ポケットの雑誌を手にしたりしている。同行者ではないようだ。二人の素振りでそれは十分わかる。しかし同性愛者でないという確証は持てない。機内の照明が落ちた途端、私たちの後方から悩ましい声が聞こえてくることがないことを望むだけだった。

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