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第5話 ヒースロー空港にて 入国審査 [ロンドン]

飛行機はヒースロー空港への着陸態勢に入った。窓から見える景色ではどこを飛んでいるのかわからない。まだ緑が広がっているのでロンドン上空というわけではなさそうだ。エンジン音が高まり車輪を出す音が聞こえてくると窓からは煉瓦作りの長屋風の家々が確認できる。とうとう帰ってきたロンドンに。12年ぶりのロンドンに涙こそこぼさなかったが私の興奮は最高潮に達していた。
「お疲れ様でした」「いってらっしゃいませ」というCAの言葉をうけながら私たちは前方の出口に向かった。12時間以上のフライトを終えた機内は、左右にあるシートのバックポケットは収納された機内誌が飛び出していたりして乱れ、床はイヤホンの入っていたビニール袋とかブランケットなどが散乱している。全日空が採用したエコノミークラスの中のハイクラスシート席プレミアムエコノミーや、ビジネスクラスも同様。私たちの航空運賃は往復二人で34万円。当初はせっかくの銀婚旅行だからと奮発し、ノーマル(通常)料金ではなく格安料金のビジネスクラスを利用することも考えたが、ロンドンに着いてしまえば同じこと。私はこれで50万円近くをセーブできたという満足感に浸っていた。
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機を離れると長い長い迷路のような空港内を歩き入国検査所を目指す。新ターミナルの建設が進む中、既存のターミナルはやがて消えていく運命なのか、随分と床や壁が汚れている印象を受けた。成田空港や羽田空港とは比べものにならない。ヨーロッパ圏内に住む人たちとは区別された入国審査所は待ち時間ゼロとはいかなかったが、グアムやハワイの空港のような長蛇の列はなかった。他の便で到着したと思われる外国人に混ざって同じ機で私たちの周囲にいた日本人たちの姿もちらほら見える。初めて外国で入国審査を受ける人たちは、たとえ団体旅行でツアーコンダクターが同行していたとしても緊張するだろう。1974年、JALパックでヨーロッパを訪れたときの自分のことを考えていたら私たちの順番がきた。審査は夫婦単位でも構わないので私たちは一緒に受けた。思えばロンドン留学を終えて帰国する際、出国審査所で「また英国に来るかい」とたずねてきた審査官に向かって「それは絶対ない」と答え「なぜだ」と質問されたことを思い出す。そのときは本当に自ら再度ロンドンにくることはないだろうと思っていたのだが、帰国して日を追うごとにロンドンへの想いは募り、今日があれから4回目のロンドンでの入国審査となる。優しそうな担当官はそれぞれのパスポートを開き、写真を見た後、私たちをちらりと見ただけで簡単にポーンと入国OKのスタンプを押す。本当に帰ってきたぞと実感させる響きであった。

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