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第7話 小銭欲しさに水を買い つり銭もらってレジに品物忘れる [ロンドン]

税関を出るとそこには相当数の出迎えの人がいた。面識のない相手を市内まで送るために乗客の名前を記したボードを掲げているタクシードライバーもいる。それらの間と通り私たちはスーツケースを置いてひと休みできるスペースのあるロビーに出た。黒人、白人、東洋人、雑多な人種がロビーにいる。この中に到着したばかりの観光客、特に日本人を狙ったスリや置き引きがいるに違いない。そう考えるとパスポートや現金の入ったバッグを持つ手に力が入る。私たちは天井からぶら下がる看板に目をやり、タクシー乗り場を示すサインを探した。空港から市内までは地下鉄でもいけるようになったし、昨今はパディングトンエクスプレスなる市内と空港を15分弱で結ぶ高速列車まであるらしい。だが、二つのおおきなスーツケースを持って移動すること、二人分の運賃とを天秤にかけた結果、市内へは黒塗りロンドンタクシーで行くことにしていたのである。
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私は出発数日前に円をポンドとユーロに交換しており、300ポンド近い現金を所持していた。しかし5ポンドから50ポンドの紙幣だけ。タクシーの運転手へのチップは紙幣で大丈夫だが、ホテルで部屋に荷物を運んでくれたポーターに5ポンド差し出すことは、いくらスーツケースが2個あるからといって気前が良すぎる。私は奥さんにしっかりスーツケースを監視するように言い残した後、小銭を調達すべくコンビニのような店に入った。そこで5ポンド紙幣を出してお釣りとしてできるだけコインを集める算段である。ミネラルウオーターがちょうどいい価格帯だったのでレジに持っていき精算する。思惑通り1ポンドコインが何枚かある。釣銭を受け取りながらにんまりする。子供のお使いのように釣銭を握り締めて店をでると、背後で店員が私に向かって何か言っている。振り返ると店員は私の買ったミネラルウオーターを手にして私を呼び止めていたのだった。私は釣銭だけ受け取って買った商品を忘れてきたのである。

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