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第8話 タクシーがいない [ロンドン]

スーツケースをひきずりながら屋外にでる。歩道はもちろん土ではないが、ここで初めて12年ぶりにロンドンの地を踏んだということになるのだろうか。青空が見える。ロンドンの青い空。アルバート・ハモンドの唄を口ずさみたかったが忘れていた。歩道の一角に黒い集団がたむろしている。タクシーを待つ集団か、あれだけいるとなると私たちが乗車するまでに30分以上はかかるだろう。しかし、そこはタクシー乗り場でもなさそうだ。となると窃盗団か。私たちのスーツケースをもつ手に力が入る。用心しつつ近づいていくと、どうやら彼らも長旅の末、到着したばかりなのだろう。久しぶりの一服を味わっていたのである。
案内表示にしたがってタクシー乗り場に向かったが、客待ちで列をなすタクシーも見当たらない。それどころか通りにタクシーが走っていないのだ。空港内を巡回しているらしい空港職員がいたので不安になってタクシー乗り場を確認すると、確かにここだという。ここで待っていなさいというのだ。嘘つきにも見えないのでその場にとどまっていると、後から続々とタクシーを利用しようとする人たちがやってきて、タクシー乗り場には列ができてしまった。しばらくするとターミナル前のメインストリートをそれてタクシー乗り場につながるレーンに1台のタクシーが入ってきた。これで市内にいける。私たちの前でとまった黒塗りのタクシー。数年前より多少小ぶりになったような気がした。私はロンドンタクシー乗車の法則に従い、乗り込む前に助手席側の窓越しに「ホリデーインオックスフォードサーカス」と行き先を運転手に告げた。運転手は承諾した後、おりてきて私たちの持っていた二つのスーツケースのうちひとつを助手席に積み込んだ。
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日本のタクシーと異なりロンドンタクシーの助手席側は荷物置き場兼運転手のプライベートスペース。愛犬が乗っていることだってあるのだ。日本のタクシーのように自動ドアではないから、私たちは自ら後部ドアをあけ、もうひとつのスーツケースと手荷物を後部座席に積み込む。ロンドンのタクシーの中は向かい合う補助椅子をつかえば5人は乗車できるほど広いので、足元にはまだまだゆとりがあった。運転手も乗り込みいざ出発と思ったところに、さきほどの空港職員らしき人物がやってきて、やはり助手席の窓越しに運転手に向かって何かを言っている。どうやら正規のタクシーであるという証をみせろということらしい。運転手は助手席の前にあった書類を見せる。日本でいうところの白タクが横行して観光客を勝手に乗車させ、法外な運賃を要求するような事件が多発しているのかもしれない。物騒なロンドンになったものだ。空港職員は運転手のことを正規のドライバーと確認したようでゴーサインをだした。

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