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第10話 ホテル着 [ロンドン]

タクシーはオックスフォードサーカスと平行して走る車も人通りもあまりない裏道を東に向かう。この道のどこかで右折もしくは左折すればホテルだ。ロンドンでのホテル選びのポイントは、部屋からの景色でも、部屋の装備でもない。私はどこへ行くにもアクセスが良く、リージェンツパークを突き抜ければ歩いてサトウ家に行かれ、ピカデリーサーカスやボンドストリートなども徒歩圏内、加えて地下鉄の駅も近いホテルを選んだのだった。ロンドンの宿泊料金は高い。東京の一流ホテル並みの料金を支払っても部屋に冷蔵庫があるという保証はない。私は世界中どこの都市にでもあるホテルチェーンのひとつを選択した。1泊3万円程度だが、高層ホテルではない。閑静な住宅街の一角にあるせいぜい5階建てぐらいのホテルであろうと予測していた。
ホテル近くにきてタクシーの速度は極端にスローになり、ドライバーが左右キョロキョロしている。挙句の果てに再度ホテルの住所を記した紙を見せてくれといってきた。ロンドンタクシーのドライバーになる試験は厳しく、裏道も含め市内の道の名を全て覚えなければならないとかつてきいたことがある。ロンドンAZという大小全てのストリートの名が入った地図を片手に市内を真剣な顔で歩いている人間に出くわしたら、彼は次回のタクシードライバー試験の受験生だと思っていいといわれたこともある。彼は道の名を忘れたのか、それともその道の所在が曖昧なのか。いずれにしても昨今の試験はかなり甘くなりつつあるということだろうか。それとも私たちの宿泊するホテルがいかにマイナーであるかということも認識しろということなのだろうか。
Holiday_Inn_LONDON_-_OXFORD_CIRCUS-London-Aussenansicht-4-12882.jpg
幸いホテルの入口前の駐車スペースかあいておりドライバーはそこに車を停めると助手席や後部座席にあった荷物をおろしてくれた。少し道に迷ったとはいえ、運転も乱暴でもなく言葉遣いも横柄でなく、良心的なドライバーだと思ったので、私は運転席の窓越しにメーター料金に加えてプラス数ポンドのチップを渡した。運転手は満面の笑顔でホテル前から走り去っていったのである。ちょっと気前が良すぎたかもしれないと後悔しても後の祭り。手持ちの現金ポンドは一気に減少してしまったのである。

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