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第25話 サトウ夫妻の子供たち [ロンドン]

その後しばらく談笑していると玄関ドアが閉まる音がした。そしてリビングに登場。3階に住んでいる長男のヒューだった。彼は私より5,6歳は上だと思うので、もう60を過ぎているはずだがそうは見えない。昔とほとんどかわっていない。いまだ独身とのことだが、今何をしているのか、生業についてはきかなかった。私が住んでいた頃も、葡萄の収穫のためにフランスに行くといっていたから、フリーター一筋なのかもしれない。トランプを始めとするカードに精通しているようで、短時間のうちに日本の花札のことをいろいろたずねられた。何でもインターネットでその存在を知ったらしく、絵札の意味とか遊び方もかなり知っているようである。次回訪問時には花札を忘れずに持参しなくてはなるまい。
サトウ夫妻には男女二人づつお子さんがいた。私がお世話になっていた1975年当時。長男ヒューは30歳目前だったのだろうか、この家にいたが就職をしているようには思えなかった。銀行に勤務しながら秋にはフランスへ葡萄の収穫に行くということはないだろうから。ヒューの上にあまり年が離れていない姉がいた。滞在時数度しか私は彼女にあったことがない。彼女はセイロンかどこかの国の彼氏がいるらしく同居はしていなかったのだ。その長女、今は結婚して南アフリカに住んでいるそうで、サトウ夫妻も年に1度は娘のもとを訪れているとのことである。渡航時に機内の狭いシートに座ったままの道中が苦痛だと嘆いていた。次女ジョジーナは当時二十歳前後だったと思う。彼女は同居はしていたが、ほとんどはひげもじゃのボーイフレンドの家に泊まっていたようである。なぜならあまり夕食をともにした記憶が私にはないので。その彼女、12年前に訪れた際には私がサトウ邸にくることをきいて、旦那さまと会いにきてくれた、その当時で40歳になっていただろうが、髪も長いままでまったく昔とかわっていなかった。彼女もまた私のことを全然変わっていないといっていたが、どうみても社交辞令だったと思う。彼女の変わったところといえば、一緒にきた旦那さまが、ひげもじゃ男とは別人だったということぐらいだろうか。その彼女今はロンドン郊外に住み、旦那さまとコンピュータ関係の仕事をしているそうだ。そして末っ子が当時小学校3,4年生だったロレンツという男の子。サトウ夫妻の見ていないところで苛めてやろうかと思わせるような生意気なところはまったくない純朴な子供だった。夕食の後、私が退屈そうにしているとチェスをしようかと誘ってくれる気配りのできる小学生だった。彼とも12年前に会っているが、まず電話を通じての声がまったく昔と異なるので驚いた。当然だろう、二十歳を過ぎていたわけだから昔と同じ声のわけがない。会ってまたびっくり、私より大きくなっていたではないか。君はロレンツではない。ロレンツの背丈は私の胸までもないはずだといった覚えがある。そのロレンツは教師となり、結婚して子供もいるそうである。
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サトウご夫妻の目下の悩みは、子供や孫たちがきても半地下部分を売却してしまったため泊まるところがないということらしい。しかたなくこのリビングのソファーに寝てもらっているといっていたが、日本の住宅事情と比較すれば、客人の寝泊りするスペースは十二分にあると思うのだが。

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