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第27話 See You Again [ロンドン]

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話が33年前の話におよんだときのこと。私はこの周囲も随分変貌したことに驚いたと話した。そしてこの先にあった食料品店、インド人夫婦が経営していたあの店はどうなりましたかとたずねると、お二人が口をそろえてあの店はずい分と前になくなったという。しばし間をおいてパトリシアさんが私に疑問を投げかけてきた、「あなたは食事つきでここにいたんじゃなかったかしら?」というのである。余計なことを口走ってしまったと後悔しても時は戻らない。私は時々ペプシなどの飲み物を買いにいっていたとごまかした。お宅の夕食の量が少なかったから仕方なく通っていたとは口が裂けてもいえない。
会話をする中で知ったことだが、サトウ家では私と前後して50人あまりの学生さんが滞在していたとのこと。もちろん寝るだけのため、下宿先として利用していた学生もいただろうし、私のように完全なホームステイとして家族とどっぷり生活をともにした人もいただろう。しかし、今もってカードや手紙などによって交流がある人は私と、ドイツ人の二人だけだという。決して居心地が悪かったわけでもないだろうが、一宿一飯の恩義という言葉が西洋にはないのかもしれない。でも私がサトウ家でお世話になった日本人第1号ではないと当時きいていたのだが。
時計を見ると2時を過ぎていた。思い出話を含め双方話は尽きないが私たちも短いロンドンの滞在を有意義に過ごさなくてはならない。今日のノルマはこれからナショナルギャラリーに行くこと。もちろん1時間や2時間で観て回れるわけもないが、今日を逃すと時間がない。明日もテートモダンに行きたいし。私たちはおいとますることにした。これまで知らなかったメイルアドレスを交換し、スポールのマグカップの入った紙袋を忘れることなく私たちは席を立った。メイルアドレスを知ったということは、今後はクリスマスカードだけではすまない。近況報告を随時していかなくてはならないだろう。いかに平易な単語で自分の気持ちを伝えるか、英作文を必死に構成する自分を想像すると少しばかり気が重たくなった。玄関に行く狭い廊下でハグをして外に出る。ロンドンらしからぬ青空は広がっていた。そして玄関前の階段で記念撮影。パトリシアさんはご主人にぴったりと寄り添う。近いうちにまたお会いしましょう。お互いにそうはいったものも私たちがロンドンを訪れない限り会うことはないだろう。絶対近いうちにロンドンに帰ってきたい。私のロンドン行きたい熱が再び大きく燃え上がった瞬間である。

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