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第43話 床が斜めになったホテルの部屋 [コッツウオルズ]

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ひととおり村の散策を終えてホテルに戻るとハミルトンに部屋の準備はできていますといわれた。部屋まで案内してくれる様子もない。その必要もないことはすぐにわかった。10室とないこのホテルの階段を昇った正面の部屋だという。スーツケースはすでに部屋に運んでくれたとのこと。私たちはキーだけを受け取り部屋に向かった。フロントのすぐ脇にある階段は絨毯がしきつめられはいるが日本の住居のように狭い。小柄なハミルトン青年がこの狭い階段を、あの重たく大きなスーツケースを持ってあがってくれたのかと思うと申しわけない気がした。
築300年を経過しているだけのことはあって、階段の床は足を踏み込むたびに絨毯の下で異様な音をあげる。のぼりきった正面が私たちの今夜の寝床だ。鍵という名にふさわしい昔っぽいキーをドアに差し込むが容易には開かない。微妙な癖があるようである。扉を蹴飛ばせば簡単に侵入できるから鍵などあってもなくても同じようなものなのだが。ようやく開錠となって扉を開けてびっくり。部屋の壁と天井、カーテンがすべて深紅というかワインレッドというか真っ赤なのである。日本の一般ホテルではありえない配色だ。それでも落ち着かないという印象を抱かせないのは何故か。歴史の重みか。そんなものではないだろう。ルーツが欧州にある私にこの配色になんら違和感をもたらさないのだろう。部屋全体の色には違和感はないが床がどうみても傾いているような気がする。奥さんも間違いなく傾いているという。17世紀末に建造されたのだから少々の傾きは当然といえば当然なのだろうが。窓際に近づき外を見るとホテル前の広い芝生の前方に先ほどまで川べりを歩いていたウインドラッシュ川が見える。静かな夜と穏やかな朝が迎えられそうである。
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部屋でスーツケースを開けるなどしてひと休みした後、夕食まで時間もあるので再度、村にくりでることにする。川に沿って通る道路沿いのダウンタウンには数軒のお店があった。そこで掘り出し物でもみつけることにしたのである。時代ものの鍵を苦労して閉めてからフロントでハミルトンに鍵を預けた。彼が夕食の時間をきいてきたので7時にと伝える。すると彼は、レストランは向こうだが、最初にバーにきてくださいという。バーはフロントの背後にある。いきなりテーブルには案内しないのだろう。アペリティフでも振舞ってくれるに違いない。フロント横のドアをあけると先ほどまでの好天ではなく、空はなんとなくどんよりしていた。これが1日に四季があるという英国の典型的な気候なのだろうか。今夜は雨になるかもしれないと思いつつ私たちはダウンタウンに向かった。

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