SSブログ

第46話 フルコースのブレックファースト [コッツウオルズ]

朝食も昨夜と同じ階下のレストランである。さすがに朝は宿泊者以外利用する者はいない。私たちの他に2組の初老のカップルがすでに朝食をとっていた。ロンドンのホテルのようにビュッフェではない。テーブルにはディナーのようなコースメニューが置かれており、飲み物から卵料理にいたるまで何種類かが記されていて、その中から選択する仕組みである。ルームサービスで朝食を注文するときのように昨夜のうちにドアの外に食べたいものや飲みたいものをチェックしたオーダーシートのようなものをぶらさげておけば時間的ロスもないのにと思う。しかし儀式を重んじる大英帝国のなごりだろうか、テーブルにわざわざオーダーをききにくるのだった。
DSC00372.JPG
テーブルに置かれた食器は、ホテルチェーンの食器洗い機や乱暴なウエイターの扱いにも耐えうるような輝きのないものではない。日本のデパートの特選売場で販売されているブランド品ある。紅茶も私が前々から欲しいと思っていた真鍮製のポットで供される。しかし問題が生じた。私たちは8時にはレストランに入り、30分から40分で終え、部屋に戻り各自用足しをして9時半前、それも限りなく9時に近い時間帯にはチェックアウトする予定だった。そうすれば、たとえ道に迷ったとしても12時過ぎにはヒースロー空港のレンタカーオフィスに到着できるはずなのである。ところが最初のトマトジュースや紅茶が供されてから次がなかなかでてこない。卵、私の場合目玉焼きとソーセージなどはひとつの皿に盛ってくれればいいのにそうはいかない。上品なのである。卵をもってきてからソーセージが出てくるまで間があくのだ。それにコース料理だけあってその他にもいろいろとおまけがつく。せっかくのんびりした場所にきたのだから会話を楽しめというのだろうか。でもこちらにも予定があるのだ。
DSC00374.JPG
リヨン行きの飛行機に乗り遅れたらどうしよう。私たちが搭乗する4時以降のフライトは1便しかない。でもそれも満席のはずである。ヒースロー空港でスーツケースに座り込み、途方にくれる私の姿が脳裏に何度となく浮かんだ。
すべてを食べつくし飲み干した私たちがレストランを出たのは9時過ぎだった。30分は予定をオーバーしている。私たちは部屋に戻り身支度を整え、傾きかけた部屋に別れを告げた。フロントデスクにはルイスハミルトンが座っている。この人は24時間勤務なのだろうか。あるときはフロントマン、あるときはバーテンダー、そしてあるときはソムリエ兼ギャルソン。英国版多羅尾伴内のような人である。料金はディナーの時にオーダーしたワイン代が加算されて日本円で5万円強。ほぼ予定通りである。ボートンオンザウオーターとホテルの感想を聞かれたので、「必ずまたきます」と社交辞令を述べた。
トランクにスーツケースを積み、私たちはホテルの駐車場をでてヒースローにつながる高速道路M4を目指す。雨はあいかわらず降っているような降っていないような。ワイパーを常時作動させる必要もないほどの振りだった。

nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。