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第53話 迎えのタクシーがきていない [リヨン]

ゲートを抜けて出迎えの人垣の中、左右を確認しながら歩いたが看板を見つけることなく広いロビーにでてしまった。利用者である私たちが日本人であることはドライバーも知っているから容易に発見されてしかるべきである。後から出てくる人たちの邪魔にならないところから後方を振り返ってみるが看板を掲げている人は多くはいない。やがて私たちが搭乗していた便の乗客の大半がゲートを出たらしく、人波が途絶えた。いまだにゲートから出てくる人を待ち受けている人はごくわずか。その人たちの手にボードはない。このままタクシー乗り場にいって一般タクシーで市内に向かおうかとも思ったが、交通渋滞で遅れているのかしれないと善意の解釈をしてしばしドライバーの到着を待った。だが私たちがゲートをでて10分以上たってもドライバーは登場しない。私は万が一のためにそのタクシー会社の電話番号を携帯に記憶させていたので怒りの電話をすることにした。何と言い訳するつもりか、そんな予約受けてはいないとでもいうのだろうか。そんな回答がきたら、私は予約確認書も持っている、それでも受けていないというならお前たちフランス人は大嘘つきだ、空から豆腐の雨をふらしてフランス人など皆殺しにしてやると日本語で捨て台詞を吐いて電話を切り、タクシー乗り場へ移動するつもりだった。
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私の怒鳴り声で到着ロビーに不穏な空気が流れてもいけないと思い私は外へでた。7時近くになっており日は沈みかけている。これからタクシーに乗ったとしても今日はリヨンの夕景を見ることはできないと私は思った。リヨン空港はまだ建設途中。到着ロビー前は閑散としていた。一般タクシーを捕まえるにはエレベーターで出発ロビーのある上の階に行き、そこで乗り込むしか方法はないらしい。到着ロビー前に人影はなく、多分パーキングビルになるであろうコンクリート打ちっぱなしの大きなビルが目の前に建っているだけ。やがてタクシーやバスが列をなすであろう到着ロビー前の道路もまだ舗装されているところは少なかった。
電話をかけると以外にもすぐに相手は電話をとった。今空港にいるが予約した車がきていない、どうなっているのか、私は名前とメイルで受け取っていた予約ナンバーを伝えた。そしてその確認メイルの差出人がフランソワであるということも。私の意に反して、相手はあっさりと自分の非を認めた。申しわけなさそうに謝ってきたのである。そして自分がフランソワであるともいう。それほど悪いフランス人ではないと感じた。彼はこれからすぐ向かうからその場で待っていてくれという。しかしここは工事中で車も入れないと伝えたが、車は別のところに停めて、とにかくそこに行くから待っていて欲しいと。待つのはいいが30分も1時間も待つのなら別のタクシーで行くというと15分で着くという。ガイドブックによれば空港から市内まではタクシーで30分はかかると記載されていた。15分は20分、下手すりゃ30分かかるだろうと思ったが、彼があまりに恐縮しているので待つことにした。

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