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第56話 路上で夕食 コルクがあけられずワインをこぼす店員 [リヨン]

一休みした後に部屋をでてディナーにありつくことにした。フランソワに教えてもらった通りを目指す。振り返ると私たちの宿泊するル・ロワイアルが美しくライトアップされている。各窓に備え付けられたライトが建物を隅々まで照らしており、漆黒のリヨンの街に浮かんでいるようであった。レストランが立ち並ぶ通りは本当にホテルの眼と鼻の先にあった。幅数メートルの通りの両側にレストランが連なる。レストランといっても身構えるような日本のフランス料理店ではない。店の前にはたくさんのテーブルが並び、お客さんが窮屈そうにナイフフォークを操りワイングラスを手にし、時折通り全体に響く歓声があがるようなビストロ、カフェテラスのような店である。平日の午後9時過ぎだが通りは結構人通りもある。日本では夕食後の寛ぎタイムだが、欧州では夕食時間のピークなのかもしれない。どこに入っても大差はなさそうだが、あまり空いている店には入りたくないのでそこそこ店の外の席が埋まっている店を選んで入店した。
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入店といってもドアを開けて入るわけでもない。屋外のテーブルを指差し、ここに座ってもいいと店の人に尋ねるだけだ。両親とも白人ではないとわかる女性のギャルソン(ギャルソンは男の場合で、女性の場合はセルヴーズというようですが)が私たちを接客してくれることになった。ワインリストとメニューをもらう。とりあえずビールではなく、せっかくブルゴーニュ近くまできているのだから地元ローヌ県のワイン、コートドローヌの赤、そして炭酸抜きの無料ではないただの水をオーダーする。地元とはいっても日本のレストランで同じワインを頼んだときと比べて段違いに安いという気はしなかった。ここまではワインの名前をいうだけだから私でもできる。ソムリエの役割を終えた私は今夜のメインディッシュを選択する。それが何なのかわからないものは仏文科卒の奥さんに尋ねる。メニューを手にあれこれ思案しているとギャルソンがワイングラスとボトルを持ってやってきた。これでいいかと手にしたボトルのエチケット(ラベル)を見せるので、私がうなづくと彼女は開栓作業に入る。ソムリエナイフを手にはしているのだが心もとない。私の方が絶対に上手く開けられると確信した。なかなか開かない。体格の少々良いギャルソン、力づくであけようとしたのがいけなかった。勢いよくコルクが抜けてしまい、中のワインが少々というには語弊があるような量がテーブルにこぼれでてしまった。困ったような顔をするギャルソン。しかし新しいボトルを持ってくる気配はない。一流レストランならともかく町の居酒屋みたいなものだ。文句をいっても気分が悪い。奥さんだってフランス語では嫌味のひとつもいえないだろう。気にしないでというようなことを奥さんはいったのだと思う。ギャルソンは笑顔でグラスにワインを注ぎだした。当のギャルソンからパルドン(ごめんなさい)という言葉が発せられることはなかった。謝ったら負け。文化の違いをまたひとつ学習した気がした。その夜は離日前泊の成田空港近くのホテル以来、足を伸ばせるバスタブで疲れを癒した後に就寝した。

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