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第66話 フランス語は通じたのか [ニュイサンジョルジュ]

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不審な動きをする私たちの乗った車の存在を察知してか、獲物のおばさんは横道に入ってしまった。私は車を停め奥さんに獲物を追うように指令した。不平をいいながらも車を降り、奥さんはおばさんを追って声をかけた。私は車中から彼女たちの様子を伺う。獲物であるおばさんが懐から、もしくはバッグから拳銃でもだしたらすぐさま私だけでも逃げられるようにエンジンは切らなかった。おばさんは指差しながら何かをしゃべっている。
ニュイサンジョルジュの方向を指しているのだろうか。だとしたら私たちが通ってきた方向である。つまり行き過ぎたということか。それとも日本へ帰れと、日本がどこにあるかも知らないおばさんはでたらめの方向を指差して、眼前からすぐにでも日本人が去ることを訴えているのかもしれない。奥さんのフランス語は通じたのか通じなかったのか。しばらくすると奥さんと獲物は軽く会釈をして別れた。奥さんが晴れやかな顔をして車に向かって歩いてくる。これで「何いってんだか全然わからなかった」とでも言ったら、ここに彼女をおいてきぼりにしてもいいかと考えていたが、彼女は開口一番「ここはディジョンの郊外だって。それもディジョンはあっち、つまり貴方はディジョンをも行き過ぎてしまったということ」といって私を責めた。さらに「ニュイサンジョルジュは40キロぐらい戻ったとこにあるって」と言い放った。これには納得できない。40キロ戻ったらボーヌまで言ってしまう。あのおばさんはディジョンから外へ出たことがないのではないか、ニュイサンジョルジュの高級ワインなんか口にしたこともないから、ニュサンジョルジュの場所さえわかっていないのではなかろうか。
しかし、これは奥さんが40キロと14キロを聞き違えたとも考えられる。奥さんにそのあたりを問うてもはっきりした答えは返ってこなかった。獲物のおばさんや奥さんの語学力を責めてもしかたがない。とにかく私たちがニュサンジョルジュを行き過ぎてしまったことには違いないことは判明したのだから。私は勘をたよりにさきほどまで走っていた高速道路方面に車を走らせた。いつの間にか雨はすっかりあがり、薄日もさしている。高速道路に戻りボーヌ方面に車を走らせていると車窓の右手に緩やかな丘が続いていた。さきほどは見えなかったがあれがコードドールなのだろう。目的地ニュサンジョルジュは、ここからボーヌまでの間のどこかに必ずあるのだ。目的地は近い。その時点ではそう思っていたのだが・・・・・。

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