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第80話 奥様アンさま登場 [ニュイサンジョルジュ]

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大学の研究室といってもおかしくないが大きく異なるのは研究室の壁際の棚に、半世紀以上前のものと思われる数本のボトルが無造作に並べられていることだろう。キャップシールは開けられていないのだが、歳月を経るうちに蒸発したのか、ボトルの内容量は半分ぐらいに減っていた。ラベルの端が色あせてわからないが191何年のChassagne Montrachetもある。他にもMaconやブルゴーニュ地方で作られるブランデーのマールなど。どれも現在とはデザインが異なるがフェブレイ社のラベルが貼られている。私の奥さんと女性研究員のツーショットをカメラに収めた後、私たちはラボを出た。
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階段を下り誰もいない受付を通ってオフィス棟をでたとき、時刻は6時を過ぎていたが外はまだ明るい。フェブレイさんが今夜は村のダウンタウンにあるレストランに招待してくれるという。小さな村の小さなレストランだがとても評判の、おいしいレストランだそうだ。7時すぎに迎えにいくのでそれまでアパルトメントで待機するようにとのこと。その前に再びフェブレイ邸のチャイムを押すと反応があった。奥さんが帰宅していたのである。
ドアがあき、中から奥さんのアンさんがでてきた。私たち二人ともアンさんとは初対面である。フェブレイ社と取引のあるワイン輸入販売会社に勤めていたとき、フェブレイさんの奥さんはベトナム人らしいという噂があったが奥さんは間違いなくフランス人だった。ベトコンの娘だという話もあったが噂というのは恐ろしい。確かにベトナムで生活をしていたことはあるようだが。私の奥さんがフランス語で挨拶するとアンさんは「フランス語を話せるの」と驚いた様子。フェブレイさんも「上手に話す」と要らないフォローをしてくれた。その後アンさんは私の奥さんに話すときはゆっくりだが、とにかく滞在中ほとんどフランス語で語り続けたのである。
次は私の番。私はフランス語を話せないことを告げ英語で挨拶した。アンさんは毎年送られてくる私たちからのクリスマスカードや誕生日カードに大変感動しているという。私たちの家の住所をそらで途中まで口走ったときはこちらが驚いた。教会でキリスト像を前に祈りを捧げるように、私の方を向いて胸元で手を合わせて感謝の気持ちを伝える姿をみると、とても一夜漬けで私たちの住所を覚えたとは思えない。これだけ感動されると、こちらとしても4半世紀の間、一度も再会することはなかったもののカードを出し続けてきてよかったとあらためて思った次第である。ここでようやくお土産贈呈。ロンドンのサトウご夫妻同様、これは奥さん用、こちらはフェブレイさん用と説明の上、京扇子を手渡した。

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