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第109話 返却できると思ったら駐車場は別のビル内に [パリ]

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しかしまたしてもその男はとんでもないことを言いだした。「ここは事務所でではない。返却場所はあそこだ」といって道路の向こう側にそびえる高層ビルを指差した。しかし、インターネットで予約を入れた後の契約書にも返却場所と記されているのは間違いなくこの事務所でこの住所。だから私は日本にいるときインターネット上でこの界隈の地図を引っ張り出し、ここへ到達するまでのシミュレーションを何度もしてきたのである。もちろんそれが100%活かされたとは思ってはいなかったが。
それにリヨンでこの車を借りたときも、おばさん職員は返却場所としてこの住所をいっていた。それなのにここではないといわれても困る。だいたい私の緊張の糸はさきほどエンジンをきったときにプッツンしているのでる。あと数百メートルといえども無事に走りきる自身などない。だが男が代わりに運転してその場に連れていってくれそうにもないので、私は真の返却場所の所在地を再度尋ねた。
男はあのビルの地下だと道路の反対側を指差す。だがそこへいったいどうやっていくのか。こんな大通りでユーターンなど不可能だ。男はあそこを右折してしばらく走ると大きな交差点になるそこをぐるりとまわれば反対側の車線に戻れるとこともなげにいう。そりゃその男のようにパリで生活し毎日この道を走行しているのならたやすいことだろう。しかしここはフランス右側通行、日本が左側通行であることをこやつは知らないのだろう。それにパリは東京とは大きく異なりマナーやルールなど存在しない戦場のような交通状況。私の不安は募るが、ゴールを目指すにはチャレンジするしかない。
あのビルの地下駐車場に入り、駐車券をとって地下3階に行けばハーツの看板があり、そこが返却場所になるという。私は何度か確認した後、再び触れることの無いと思っていたセルをまわし、無法者ドライバーであふれたパリの大通りに慎重にかつ大胆に合流した。
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