SSブログ

第111話 運転から解放され自由の身 [パリ]

事務所に入るとやはり男がひとりで店番をしていた。男が車はどこかというので目の前に駐車しているオペルを指差す。すると車体のチェックをするのでさらに事務所近くまで車を移動するという。少しでも明るいところで丹念に検証しようというのだろうか。男が僅かな移動のためハンドルを少し切るたびにタイヤがキーキー鳴り駐車場内に反響した。車の周囲、下回りを点検し無傷であることを確認すると契約書の控えを返却してくれた。満タン返しに匹敵するガソリン代金を契約時に支払っているので追加料金は一切かからない。1週間1100キロあまり私たちとともにフランスを縦断したオペルともここでお別れである。私は無事にこの場に立っていることを神にそしてこのオペルに感謝せずにはいられなかった。
Rue_du_Commandant_René_Mouchotte_@_Train_station_@_Montparnasse_@_Paris_(30533821863).jpg
しばらくすると奥さんがエレベーターから降りたった。しかし表情は曇ったままである。トイレがないというのだ。私は大きなスーツケース2個、ボストンバッグ、そしてヴェズレイで購入した杖をもってエレベーターに乗りこみ地上に向かった。エレベーターをおりた1階には店はなかったが人通りが結構ある。上に商業施設があるせいだろうか。ここにトイレがないわけがない。少し先にエスカレーターがあったのであそこを昇っていけばお店があるから誰かにききなさいと私は奥さんにいった。奥さんは再び不自然な動きでエスカレーター方向に歩いていった。
今いるモンパルナスからホテルのあるカルチェラタンまではそれほど遠くないことはわかっている。かといってこの大荷物をひきずりながら歩いていける距離でもない。パリ市内に入ってからよく見かけたワゴンタクシーを捕まえればこの荷物も問題ないだろうと私は思った。しばらくすると奥さんがすっきりした顔でエスカレーターを降りてきた。どうなることかと思ったという。事態は私の想像以上に深刻だったようである。私たちは大荷物を引っ張りながらビルの外へでた。

nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。