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第119話 カフェのトイレが流れない [パリ]

私と奥さんは日本ではどちらかというと便秘気味だ。しかし今回の旅行中はよく食べるせいかよく歩くせいか、とにかく快調そのもの。場所時間を問わず体はそれを要求してきた。繁華街を歩いているときならデパートに行けば用は足りる。でも英国フランス両国とも、よっぽど大きな駅構内ならともかく地下鉄の駅にはトイレがない。ちょっと商業地区を外れるとそれこそ大変。レストランやパブ、カフェに入って何かオーダーしない限り用がたせないのだ。しかしロンドンでは街を歩くうちに大発見をした。ロンドンの美術館博物館は入場無料、そしてそこには美しいトイレがあることを。ところかわってフランスではこれまた一苦労。美術館は有料だし、デパートがそこかしこにあるわけではない。どうにもならなくなったらカフェに飛び込み、飲みたくもないコーヒーを注文してから大抵地下にあるトイレに向かわなくてはならないのだ。地方の小さな街や村だったらもう宿屋にもどるしか解決法はない。いったい他の西洋の国々からきた観光客はどう対処しているのだろう、私たちは不思議でならなかったのだが、結局、西洋人と日本人では体の構造が異なるに違いないという結論に達した。
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その日の午前中、ホテルを出てからノートルダムを見学した後、セーヌ河畔を歩き、バスティーユ広場近くにあるミニカーショップに向かっていた奥さんの口数が減ってきた。色づきだした街路樹、セーヌのおだやかな流れ、建物の高さが統一されている美しい街並みなどを観る余裕すらない様子。やがて妙な歩き方になってきた。尋ねると案の定、憚りに行きたいとのこと。午前中の早い時間だったので空いているカフェも見つからない。ようやく金髪のパリジェンヌが屋外にテーブルをセットしている開店直後のカフェを見つけ飛び込んだ。奥さんはエスプレッソと私に言い残して一目散に階下へ。私はパリジェンヌに奥さんのオーダーも告げ、代金を支払い、エスプレッソを受け取り、屋外のテーブルに陣取り、車の通りもほとんどない静かな街の様子をぼんやり眺めつつ、パリのミニカーショップでは日本で見かけることのないどんな珍しい車を販売しているのだろうと、心を躍らせていた。しばらくすると奥さんがもどってきたのだが何か様子が変だ。さきほどまでの苦悩の表情は消えていたが、何か落ち着きがない。「すぐに店を離れよう」という。エスプレッソの大半をカップに残したまま、私たちはその場を立ち去ったのである。ミニカーショップに向かって急ぎ足で歩きながら、何がおきたのかと尋ねると、トイレの水が流れなかったという。トイレがもともと壊れていたのか、奥さんの体内が放出された廃棄物のボリュームによって破壊されたのかは不明である。しかし、今頃パリの巷では日本人は体の構造が我々西洋人と違うようなので、トイレは絶対使用させるなと囁かれているかもしれない。

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