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第145話 パリっぽくない音楽を聴きつつ空港へ [パリ]

ホテル階段下の倉庫のようなスペースに保管というか放置されていた私たちのスーツケースや土産物の杖はパリの闇組織に持ちさられることもなく無事発見された。まあ、その時点で当然中身まではチェックしてはいないが。
タクシーは予約していた時間ぴったりの3時半にホテル前に到着した。タクシーといってもルーフにオレンジ色に光るTAXIサインはない。もちろん提灯や貝殻のようなサインもない。しかし違法な白タクではなく認可された合法タクシー、ただし街を流して客を拾うことのできないタクシーなのだ。そのかわり通常のタクシーよりはお得な料金設定になっている。メーターはなく事前に乗車場所付近から空港までの料金が決められているのだ。
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日本からの賓客がパリを離れるというのに、ホテル正面玄関付近にいる大勢のソルボンヌの学生たちは全く私たちに関心を示さない。記念撮影や別れを惜しんでハグを求める女子大生もいない。当たり前の話しだが。車に乗り込むとアラブ系のドライバーなのか、車内にはパリに似つかわしくない音楽が流れ、ドライバーもそれにあわせて何かを口ずさんでいる。チグリス川ではなくセーヌ川に沿ってしばらく走ると、滞在中見たこともない近代的なビルが立ち並ぶエリアに入ってきた。といっても日本の都心のような高層ビルは全く存在しない。パリ市内からみたときでも景観を損ねることのないよう厳しい高さ制限があるのだろう。
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ホテルから市内を抜け空港に向かう高速道路に乗るまでは都心の首都高速のような渋滞に巻き込まれかなりの時間を要した。別に事故があったわけではない。夕暮れ近く、毎日発生している自然渋滞なのだろう。奥さんはアラブ系音楽を子守唄にホテルを出発した直後から得意の睡眠に入っている。夕暮れのパリの風景を脳裏に焼き付けようという気はさらさらないようだ。近いうちにまた来るからとその必要性を感じていないのかもしれないが。

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