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第50話 ターミナル5でアジア系空港職員に捕まる 原因はファンタ [ロンドン]

リヨン行きの便はヒースローのターミナル5から飛び立つ。ヒースローの中で最も新しいターミナルだけに日本からの便が到着したターミナル3とは異なり広々しているし何よりどこもかしこも明るくきれいだ。一部長距離便を除く全ての英国航空便の乗客はこのターミナルを利用することになる。
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無事ターミナルに着いたはいいが出発時間まで3時間はあった。幸い2時間前でないとチェックイン手続きはできませんということはなく、ロビー内に点在する自動チェックイン機で搭乗券をゲット後、カウンターでスーツケースを預けることができた。これでいつ出国検査を受けるまで自由だ。市内まで15分でいけるというパディングトンエクスプレスの乗り込みロンドン市内に戻りバッキンガム宮殿の見物ぐらいできる時間はあるかもしれない。でも乗り遅れたら取り返しがつかないので、しばし出発ロビー内を散策することにした。
出国検査では手荷物の徹底チェックが行われた。911テロの記憶が薄れかかっているアメリカの検査に比べるとかなり厳しい。私はX線検査を何事もなくパスしたが、奥さんが引っかかった。X線横の味も素っ気もないテーブルに手荷物を移動させられる。そして検査官がバッグの中身を検査するというのだ。検査官は男。しかしやけに陽気である。どこからきたの、どこへいくの、いつまでそこにいるの、自分は忙しいから旅行などできない、お金もないから外国にも行けない、などと終始笑顔、ジョークを飛ばしながらバッグの中身をひとつずつとりだし、それが何であるか確かめる。どうせ何か飲料のペットボトルでも紛れ込んでいるのだろうと、最初から犯罪の臭いなど感じていないに違いない。検査官の推測は正しかった。バッグの中からファンタのペットボトルが出てきたのである。ヒースローに向かう高速道路のサービスエリアで購入したものの、キャップもあけずにバッグの中に放置されていたものだ。検査官はファンタと取り上げ、にっこり笑って没収させてもらいますとひとこと。後方のテーブルにおいた。検査官に楽しい旅行をといわれて奥さんを無罪放免となった。検査官は私たちに向かって最後に「さよなら」と日本語で言っていた。しかし明るい検査官である。彼ならディズニーランドのアトラクションのひとつであるジャングルクルーズのガイド役が務まると私は思った。日本の税関職員もあの明るさを見習うべきではなかろうか。
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手荷物検査を終えて私たちは出発ゲートに向かった。ゲート周辺には免税ショップやみやげ物店などが立ち並んでいる。フランスに渡ればポンドもペニーも使えない。ここで使い切るしかない。日本で両替しておいたポンド紙幣はきれいさっぱりなくなっていたので、私の財布に残っているのは小銭だけ。それでも集めれば2,3千円にはなる。奥さんはその小銭入れを握りしめて土産物店へ向かった。まるで初めてのお使いである。しばらくするとビニール袋を手に奥さんが帰ってきた。配れるような小物のみやげ物を購入してきたという。残金は小銭で1ポンド強か。次回英国に帰ってくるまでその小銭はとっておくことにした。

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第49話 無事返却 英国での任務完了 [ロンドン]

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しばらくするとバスは走り出しおばさんは私に合図して私たちの車の前にでた。ターミナルビルをぐるりとまわりさきほどとは違う到着ロビー前のコンコースで車を停めた。そこはバス専用のレーンのようである。一般車は皆無。他のレンタカー会社のバスとか団体客を送迎すると思われる一般の大型観光バスが何台か停車しているだけだ。私は不審な車を取り締まる係員に見つからないようバスの背後にぴったりついて停車し出発をまった。何人かの乗客をのせてようやくバスは走り出したのである。ターミナル5は他のターミナルから離れた場所にあるので、このまま事務所に直行するはず。バスは滑走路の外側を走る広い道路にでた。まっすぐなその道の両側にはレンタカー会社の事務所棟が点在している。そして進行方向とは逆サイドに大きなHertzの看板みえた。先の信号で大きくUターンすると、おばさんドライバーは窓から手をだし私たちに先にいきなさいと指示する。多分バスの利用者を降車させる場所と車の返却場所が異なるのだろう。ここまできたらひとりでもいけるでしょということか。私はクラクションをならし謝意を表しバスをぬいた。返却車両の入口はすぐ先にあった。
表示通りに進むと屋根のあるレーンにたどりつきエンジンをとめた。体の力が瞬時にぬけ、どっと疲れがでたような気がする。すぐに係員らしき若い女性が車に近づいてきた。私が契約書を見せるとそれに簡単に目を通し、車の周囲をぐるりとまわり、大きな損傷のないことを確認。これから搭乗するターミナルをたずねてきた上で、そのターミナルビルに向かうシャトルバスの乗り場を伝えた後、車から立ち去っていった。借りるときと異なりなんとあっさりした対応だろう。私たちはスーツケースを下ろし事務所棟に入ってひとやすみすることにした。空港敷地内にたどり着いてからかなりの時間を費やしていたがリヨン行き飛行機が出発するまでの時間には十分すぎる余裕がある。私たちは事務所棟のトイレを利用した後に、ターミナル内でランチでもしようとシャトルバスにすぐに乗り込むことにしたのである。重いスーツケースをターミナル5行きのバスに引っ張りあげる。乗客は私たち以外いない。「Oh-!」運転席からなんともいえない奇声がきこえた。運転席をみるとさきほどのマリアさまが座っていた。私はマリアさまにお礼をいってシートに腰をおろした。窓の外では雨がいまだに降り続いている。まさに欧陽菲菲の世界。雨のエアー・ポートだった。

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第48話 ヒースロー空港 マリア様に救われる [ロンドン]

トンネルを抜け出した私は大型車を借りないでよかったと胸をなでおろした。大型車だったらトンネルの中ほどでどうにもならない状態に陥っていたことだろう。しかしここはどこ、私は誰?の状態からはぬけだしていない。問題は何も解決していないのだ。今私が第何番のターミナルの敷地内にいるかなどということはどうでもいいこと。レンタカーの返却場所を探すことが先決だ。しかし左右を見渡してもHertzの看板はみあたらない。成田空港周辺ならそこかしこに看板が林立しているだろうに。不親切きわまりないとおこっていても問題は解決しないのだ。
ターミナル1か2を周回するとまた前方にトンネルがみえてきた。どうやらもときた道に戻りそうである。どげんかせんといかんと思ってみてもこのまま道なりにいくしかない。仕切り直しである。ロンドン市内方面にいってはいけないと左に左に走っていったら、なんとさきほどまで走っていた高速道路に合流してしまった。それも逆方向。つまり車はコッツウオルズ方面に向かっている。次の出口でUターンするしかないのか。すると前方にターミナル5方面への出口を示す看板がみえた。上り車線にもターミナル5の出口があったのだから下り車線にもあって当然だ。レンタカーの返却場所とどんなに離れていようが同じヒースロー空港内。空港敷地内を走っていればそのうちなんとかなるだろう。こんな事態を予測して、ボートンオンザウオーター以外に数あるコッツウオルズの小さな村のいくつかを寄り道しなかったことは正解だった。さらに高速道路を無料にしている英国国土交通省(そんな省があるかどうかは知らないが)には感謝しかない。もし日本のように有料道路だったら無駄な通行料を徴収されるところだったのだから。
今年できたばかりのターミナル5は、ターミナル1,2,3,4から少し外れた場所にあるようでターミナルビルや駐車場ビルといった建物が密集しているような印象もなく周囲の視界もひらけている。道なりに走っていくと真新しいターミナルビルに到着。Hertzの看板はないか周囲に目をやりながら走っていると前方に救世主を発見した。黄色と黒と白、Hertzカーラーに塗装されたバスである。事務所と各ターミナルビルと結び、レンタカー利用者の送迎を行っているバスだ。
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停車しているバスの前に回りこみ、雨の中傘もささずに、もちろん持ってもいなかったが、ドアをあけバスに向かって走っていった。謎の東洋人が自分に向かって走ってくるので何事かと恐怖を感じたかもしれない。アメリカだったら銃を向けられたかもしれない。ドライバーは女性だった。運転席のウインドウを開けたドライバーに私は「Hertzに車を返却したいが場所がわからない。あなたの後についていってもいいか」とたずねた。おばさんは困ったような顔をしたが、こちらのあせった顔を哀れんでか「OK」といってくれた。地獄に仏とはよくいったものである。英国の場合、地獄にキリスト、もしくはマリア様というべきか。おばさんドライバーに後光が射していた。

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第47話 ヒースロー空港 レンタカーの返還場所がわからない [ロンドン]

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空港は近い。燃料計の針は真ん中にあり、まだ半分近く残っていることを示していた。レンタカー屋の口車に乗って最初に満タンにした私が馬鹿だったのか。何十リッターかのガソリンをただでくれてやったことになると思うと腹が立つ。ポリタンクを調達してガソリンを土産に持ち帰りたかった。そんなことよりレンタカーの返却場所に迷えずにいけるだろうか。手元にはインターネットからひっぱりだした地図しかない。けちらずにちゃんとした道路地図を買っておくべきだったと後悔してみてもいまさらどうにもならない。
ヒースロー空港には5つのターミナルがある。成田と違って広大なのだ。私たちが今日搭乗手続きをするのは完成して日の浅い第5ターミナル。しかしレンタカーの返却場所はターミナルとは離れた別の場所にある。いやあることになっている。手元の地図によれば第1第2ターミナルに近いようだった。高速道路の表示板に最初に現れたのは第5ターミナルへの分かれ道。ここでおりないことは確かである。さらに本線を進む。すぐに第1第2ターミナル方面への分岐点になった。迷わずウインカーを点滅させて本線を離れる。ここからは勘に頼るしかない。ハンドルを握っているし、雨で視界は芳しくないし、視力の悪いには悪条件が重なりすぎていた。私は前夜頭に叩き込んでいた空港周辺の地図を思い出しながら車を走らせていたのである。本線を離れると何車線もある一般道に合流した。しかし一般道に入っても分岐が立て続けにあり、どこを曲がっていいのかはまったくわからなくなるまでに時間は要しなかった。あとは私の方向感覚を信じるのみ。前方に滑走路をくぐるトンネルが見えてきた。これを抜けてしまうと雪国ではなく、ターミナルが点在する空港の敷地内に入り込んでしまう。この辺を左折しなくてはと思ったときは遅かった。あわてて車線を左側にうつしたもののトンネル前にある最後の左折チャンスを逃したのである。トンネルに入るしかない。しかし私の車が走っているその車線、一般車が走る車線と次第に離れていき、一般車と平行する別のトンネルに進入していった。入り口からして狭い、1台が通るのがやっとである。さらにトンネル内に照明がない。気のせいだろうが道幅が少しずつ狭くなっているようにも思えた。はるかかなたに明るくなった箇所がある。出口だろう。でもこのまま走っていてサイドの壁にぶつかるのではないだろうか。不安はつのる。後方でライトが光った。慎重にゆっくりと走る私の車に向かってかなりのスピードで迫ってくる。クラクションまでならされた。ルーフにオレンジ色のライトが点灯していたのでタクシーであることは間違いない。でもタクシーが入ってきたということはトンネルから出ることは間違いなくできそうだ。
いまだ雨が降り続き日差しは皆無だったが、トンネルをでたときは太陽の光が燦燦とふりそそぐ楽園に到着したような心境だった。後方のタクシーにせっつかれるようにトンネルを抜けて道なりに緩やかな上り坂の狭い道をらせん状に走っていくとターミナルビルのタクシー乗り場にでた。どうやら私が通ってきたのはタクシー専用のトンネルだったようである。

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第38話 高速なのか一般道なのかわからないM40 [ロンドン]

車の後部がスロープを脱したと同時に私はハンドルを左に切る。無事一般道に合流はできた。しかし、ギアチェンジという作法をここ数年忘れていたので、ローのままアクセルを踏み込んでしまい、エンジンの回転が異様にあがり周辺の歩行者もびっくり。停車発進を何度か繰り返すたびにそんな騒音をロンドンの街にまきちらしてしまった。
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昔取った杵柄か、市内をほんの数分走ったらマニュアル車の操作には慣れたような気がする。あとはオックスフォード方面に伸びる高速道路M40への進入を無事果たせば今日のツアーの難関は90%クリアしたといえる。ハーツの事務所からそれほど遠くないところにM40への進入口があるはず。私はインターネットからひっぱりだした地図を見つつ進入口方面に車を走らせた。片側三車線ある一方通行の道路を走行中のこと、大きな幹線道路にぶつかったらそこを左折しなければならないことはわかっていたので私は左車線を走行していた。しばらくすると左側車線前方にロンドン名物ダブルデッカー、二階建路線バスを発見。バスは停留所に停車するようで左ウインカーを点滅させた。私はバスを追い越そうと中央車線にでる。となんとすぐ前に幹線道路が。今私が走行している中央車線は直進専用レーン。左折するには左車線に移らなければいけない。前方の信号は青だ。左側へ車線変更しようとサイドミラーを見ると、なんと停留所に止まっているはずのバスが走っている。バスのウインカーはフェイントだったのか。私はアクセルを踏み込み直進し、交差点に入るなりハンドルを思い切り左に切り中央車線から一気に左折したのだ。フォードフォーカスはタイヤを鳴らしながらもスピンすることなく、反対車線に飛び込むことなく片側4車線の一番中央寄りの車線に進入できたのである。バスも左折したようだが、無謀なツーリストの運転にクラクションを鳴らして警告することもなかった。私は交差点に周囲に警察官がいないかったことだけを祈った。幸い英国のパトカー独特のけたたましサイレンは聴こえてこなかったので私は胸をなでおろしたのである。
交通ルールを無視したことが思いもよらぬ幸運を私に引き寄せてくれた。中央車線を百メートルも走らないうちに中央寄り2車線は緩やかなスロープにさしかかったのだ。最も左側とその隣の車線はスロープになることなく直進。つまり中央寄り2車線は緩やかなスロープを経て交差点を跨ぐことになるのだ。それは自動的にM40につながることを意味していた。私の記憶と日本での予習が正しければこのまま高架が続きロンドン市街地から離れることに違いない。交通違反は犯したものの私は一度も道に迷うことなく目的地に向かう道に合流できたのだ。私は珍しくフロントガラスいっぱいに青空の広がるM40をコッツウオルズに向けてアクセルを力強く踏んだのである。

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第37話 いざマニュアル車で市内へ [ロンドン]

カウンターでキーを渡され、車が置いてある場所、ガソリン注入口の位置とディーゼル車ではないことの念をおされただけで、誰も車のところまでついてきてはくれない。あとはご勝手にどうそということなのだろう。今日明日の二日間私たちの命を預ける車、シルバーのフォードフォーカス。事務所裏手にある半地下のハーツ専用駐車場に停まっていた。日本で私が乗っているマーチをちょっとサイズアップした程度の大きさで扱いも楽そうだ。マニュアルシフトということを考えなければの話だが。駐車場はつめれば30台以上の車が停められるだろうが、そのときはフォーカス以外に2、3台があるだけ。それも何かの修理中のようだった。
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とりあえずハッチバックを開けてスーツケースを積み込む。後部座席を利用することなくスーツケースは収納された。さあいよいよ出発である。エンジンをかける前にシートに座りハンドル周りやインパネのスイッチ類を確認する。走行距離は1万キロにも達していない。新車といってもいいだろう。右ハンドルだし、操作方法に大差はないに違いない。英国と日本の違いこそあれ同じ四輪の車である。恐れることは何もない。私は自分にいいきかせた。スターターを回すと国産車にないお腹に多少響く心地よいエンジン音が伝わってくる。ギアをローに入れゆっくりとクラッチを離し、アクセルを踏み込む。プスンプスン。車は少し前のめりになるように停まった。数年ぶりのマニュアル車操作である。エンストも仕方あるまい。助手席の奥さんの表情が不安そうだった。運転する私も不安なのだから当たり前である。
なんとかクラッチとアクセルの感覚をつかみ私はロンドン市街地デビューすることにした。駐車場内を低速で数十メートル走ると前にゲートがある。バーがおりていて停まらざるを得ない。せっかく動き出したというのにここでとまれというのか。私はギアをセカンドに入れることなくクラッチを踏み、惰力でゲートまで車を移動させた。ゲートにつくと、ゲート横の建物からネクタイをしめたジェントルマンが出てきた。「契約書をみせてください」という。大胆にも勝手にここから車を盗み出す輩でもいるのだろうか。
契約書を確認すると前のバーがあがった。私は再びクラッチとアクセルペダルを巧みに操り発進させた。すると前方にあまり緩やかとはいえないスロープが。半地下から地上に出るにはどこかで登りを体験しなければならないことはわかるがいきなり出現するとは神様も意地が悪い。まして登りきったら道路のはずである。一旦停車しないわけにはいかない。つまり坂道発進をしなくてはならないはずだ。緊張でハンドルを握る手が汗ばむ。坂はアクセルを踏み込めばなんなく登る。登りきったところに歩道がある。その向こうが車道だ。大通りを折れた脇道ではあるが通行量は結構ある。私は歩道の手前、半地下から地上にでる寸前で車を停めた。左右を見て人も車もこないことを確認した後に道路に出ることにした。車の後部はまだ坂道にある。これまでのようにアクセルを緩やかに踏んだのでは車は動かない。多少強めにアクセルを踏み込む。と同時にクラッチを緩める。エンジンの回転があがる。でも車は動かない。さらにアクセルを踏み込む。このまま思い切りアクセルを踏めば車は瞬時に向こう側の建物に突っ込むかもしれない。はたまた宙に舞って飛び立つかもしれなかった。
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第36話 オートマチックはありません [ロンドン]

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ここはロンドン市内の中心地。マウイのハーツ事務所のように広大なスペースなど確保できない。だから事務所も小さく、通常のゴールドカードメンバーズのサービスは受けられないことは承知していた。すぐに車に乗りたければヒースロー空港の事務所にすればよかったが、ホテルからヒースローに向かったのではタクシー代が馬鹿馬鹿しい。だから少しの間、朝のラッシュ時のロンドン市内を運転しなくてはならないという危険を冒してまで、この事務所で借りることにしたのである。
カウンターの向こうに座る決して愛想が良いとはいえないレディーに私は予約確認書を渡した。彼女はコンピュータ画面と睨めっこしつつキーを何度かたたく。私はオートマチックのコンパクトカーを予約していた。マニュアルシフトの車ならかなり料金も安かったが、日本と同じ左側通行とはいえ、外国、それもラウンドアバウトなる臆病者は一生ぐるぐる回っていなければならないような交差点が存在する英国をマニュアル車で走破することは無謀と考えオートマチックにしていたのだ。もっとも後日訪れるフランスではオートマ車が極端に少なく、やむなくマニュアル車で予約したのだが。
彼女が突如私に質問してきた。「独身ですか」などと尋ねるわけもない。奥さんが横に座っているのだから。彼女は「マニュアル車を運転できますか」ときいてきのだ。私は思わず「はい」と答えてしまった。嘘ではない。ここ数年運転した記憶はないが私が免許を取得した頃はオートマチックの方が珍しかったぐらいである。「だけど契約書にも記されているとおり、私はオートマチック車を予約しているんだけど」というと彼女はショッキングなことをいった。「それはわかっています。でもここにマニュアル車はありません。ヒースロー空港ならならあります」というのである。お話にならない。何ヶ月も前に日本で予約した意味がない。「冗談じゃない、ここに今日、オートマ車を借りる人がくることはわかっているのだから前日にオートマ車をここに配車しておくべきではないか。いったい貴社のサービスはどうなっているのか。責任者を出しなさい」日本なら私は当然そのように文句をいったであろう。しかしここは欧州、イングランドである。サービスを論じても馬の耳にピアス、糠にドリルであろう。それに言葉の問題もある。あまりに暴言を吐いて名誉毀損で逆に訴えられてもことである。私はフランスでの予行演習と考えマニュアル車を借りることにした。出費もおさえられるし。

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第35話 営業開始前のレンタカーオフィス [ロンドン]

滞在4日目。ロンドンに3泊した私たちはレンタカーでコッツウオルズへ向かう。日本でハーツのレンタカーを予約しており、さらにゴールドカードメンバーなので現地での手続きも簡単なはずだった。前年社用でマウイに行った際には、空港近くのハーツ事務所に行くと電光掲示板に私の名前とともに、借りる車の駐車スペースの番号が提示されており、その場所に行って荷物をトランクに収納すればすぐに目的地に向かって出発できたのである。事務所によって署名したりする必要もないのだ。ハーツゴールドカードメンバーズの謳い文句は、「エアコンを効かせて貴方の車は待機しています」だったが、さすがエコの時代、車に乗り込んでも車内は冷えてはおらず、しばらくは窓を全開で走ったのだが。ロンドン市内のハーツ事務所はマーブルアーチのほど近くにある。ホテルから歩いていけない距離ではないが、大きなスーツケースを転がしていく気もしないのでタクシーを拾った。
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思えばロンドンタクシーには今回の旅行では二度しか乗っていないことになる。あとは地下鉄とバスと徒歩で通したわけだ。至近距離ではあったがドライバーは、余計な回り道をすることもなく最短距離で目的地に私たちを輸送してくれた。車は8時に借り受けることになっていたが数分前に事務所前に到着。案の定、中に灯りはついているが正面のドアには鍵がしまっている。私たちはスーツケースを事務所前に置き、オープンを待った。8時少し前、中でスタッフが動き出し、正面玄関付近のプランターなどを移動しはじめた。私たちの存在に当然気づいただろうが鍵を開けようとはしない。接客は8時からと労働契約書に記されているのだろう。ハーツの事務所の位置、またそこからどうやってM4というコッツウオルズへつながる高速にのればいいのか、その経路は日本にいる間に何度もグーグルの地図と航空写真で確認済み。私はオープンを待つ間ずっと、車はどこにおいてあり、どこからこの通りに出るのだろう、そしてその後どうやってM4に合流するべきなのかと必死にシミュレートしていた。8時になると内側のロックが外され私たちは中に入る。お待たせいたしましたのひとこともない。朝の挨拶だけである。挨拶があるだけましかと私は自分を納得させた。

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第34話 「No Photo」と叫ぶ親 [ロンドン]

地下鉄からヴィクトリア線、セントラル線と乗り継いでポートベローに近い、ノッティングヒルゲート駅まで行く予定だったが、途中、テムズ河畔に小さな公園があったので一休みすることにした。ベンチに腰をおろし、奥さんは一服、私はテムズの心地よい風をうけながらロンドン上空を流れる雲を眺める。公園には3,4歳の女の子を連れたお父さんとお母さんがいた。その娘は家から持参したと思われる、日本で見かけない木製の乗りものを乱暴に扱いながら奇声を発し、公園内をいったりきたりしている。私はその乗り物が珍しかったのでカメラにおさめようと娘の方にレンズを向けた。その瞬間、後方で母親と談笑していた旦那が「No Photo!」と大声で叫んだのである。みると凄い形相だ。別にお前の娘を撮ろうとしたのではない。お前の娘が粗雑に扱っている乗り物をカメラにおさめたいだけだといいたかったが、そういっても親父は「No Photo!」と叫びつづけ、もしかすると懐からジャックナイフを取り出したに違いない。いったいあんたは何様。ポール・マッカートニー?チャールズ皇太子?それほどの人物の子ならプライバシー、肖像権があっても仕方ないが、その親父はどうみても高名なミュージシャンには見えない。カメラを持っている私に対する嫉妬だと思うしかなかった。
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不快な思いをした公園を後にした私たちはピムリコ駅から地下鉄を乗り継いで目的に向かう予定ではあった。ところが当の駅が閉鎖されていて利用できない。週末は閉鎖される駅があることを忘れていた。私はここからヴィクトリア駅までバスで行き、そこで最も古いロンドン地下鉄、半地下を走るディストリクト線に乗りノッティングヒルゲート駅に向かうことに。ロンドン市内の地下鉄路線図が頭に叩き込まれた私だからできる臨機応変な変更といえよう。昨日購入したロンドン交通局発行のパスは地下鉄も乗り放題。おもわぬところで久方ぶりのダブルデッカー=2階バスを楽しめることになった。
25年ぶりに2階バスにも乗り、ポートベローでのみの市をのぞき、その途中で生まれて初めてファラフェルを食した後、地下鉄でオックスフォードサーカスへ戻りリバティー、ヘムレイズ、カーナビーストリートを散策、そしてロケハンしたカレー屋とは異なるカレーやさんで夕食をとりロンドン滞在3日目を終えた。
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第33話 ウエストミンスターからテートブリテンへ [ロンドン]

ビッグベン周辺は王室の戴冠式が行なわれるゴシック建築のウエストミンスター寺院や葉巻をくわえたチャチール像もある市内でも有数の観光スポットだ。開店準備をしていた露店の土産物屋の主人も今日は笑いがとまらないに違いない。
サトウさんとわかれた後、私たちは一般のツーリストに戻り、ウエストミンスター寺院を訪れた。ところが日曜日のため信者たちの礼拝中ということで一般観光客の入場は許されなかったのである。信者だといえば入れないこともなかったが、何回か内部には入ったこともあるので簡単にあきらめたのである。寺院周囲を歩いて次の目的地デートブリテン(かつてのテートギャラリー=美術館、今はテートブリテンとテートモダンの二つに分かれて展示されている)に向かう途中で、新婚カップルの写真撮影現場に遭遇した。花嫁はウエディングドレスとまとってはいるが、本物の新婚さんではないらしい。雑誌かなにかの撮影のようである。さらに彼らの顔立ちは西洋人ではない。完全に東洋系、日本の雑誌かと思って近づいていくと、キムチの臭いがしてきたわけではなく、普通に話していても喧嘩をしているような韓国語が耳にとびこんできた。韓国のファッション雑誌だろうか。近寄ってモデルの顔をのぞきこんだが、それほど美形ではなかった。
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ウエストミンスター寺院を眺めた後、テムズ河畔を歩き、私の好きな画家ターナーの作品を多く所蔵するテートブリテンに向かった。かつてはテートギャラリーと呼ばれていたこの美術館、2000年にテムズ川の少し下流の対岸にテートモダンが開館してからは、イギリス美術専門の美術館となり、テートブリテンと名前を改めたのである。ターナーが好きだとはいっても私にとっては2度目の訪問。なんと1年余り住んでいた30年前には1度も訪れていなかったのである。最初に訪れたのは数年前の出張時。美術をはじめとして芸術分野全般にうるさい、当時勤めていた会社のフランス法人の責任者とともに入館したのが最初である。といっても出張時の合間、その後大英博物館にも行くことになっていたので、ほぼ駆け足状態。ひとつひとつ立ち止まって鑑賞する余裕はなかった。今回も時間の制約はあるもののターナーの作品を十分堪能できるだけの時間はあった。
街中の教会前の階段よりもスケールの小さい階段をのぼるとそこはもう入口。といってもゲートがあるわけでもない。例によって入館は無料。警備員に怪しい人物と判断されない限り、無条件で入館できるのだ。開館後間もないこともあり館内は人影もまばら。入館料も馬鹿高い上に、作品というよりも人の後頭部しかみえない日本の美術館での鑑賞とは比べ物にならない。すべてのフロアを周った後、地下の土産物店でお買い物をすませ私たちは次の目的地、蚤の市で有名なポートベーローへ向かうことにした。テートブリテン前から船に乗ってテートモダンにも行きたかったが、それは次回のお楽しみということにして。

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