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第46話 フルコースのブレックファースト [コッツウオルズ]

朝食も昨夜と同じ階下のレストランである。さすがに朝は宿泊者以外利用する者はいない。私たちの他に2組の初老のカップルがすでに朝食をとっていた。ロンドンのホテルのようにビュッフェではない。テーブルにはディナーのようなコースメニューが置かれており、飲み物から卵料理にいたるまで何種類かが記されていて、その中から選択する仕組みである。ルームサービスで朝食を注文するときのように昨夜のうちにドアの外に食べたいものや飲みたいものをチェックしたオーダーシートのようなものをぶらさげておけば時間的ロスもないのにと思う。しかし儀式を重んじる大英帝国のなごりだろうか、テーブルにわざわざオーダーをききにくるのだった。
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テーブルに置かれた食器は、ホテルチェーンの食器洗い機や乱暴なウエイターの扱いにも耐えうるような輝きのないものではない。日本のデパートの特選売場で販売されているブランド品ある。紅茶も私が前々から欲しいと思っていた真鍮製のポットで供される。しかし問題が生じた。私たちは8時にはレストランに入り、30分から40分で終え、部屋に戻り各自用足しをして9時半前、それも限りなく9時に近い時間帯にはチェックアウトする予定だった。そうすれば、たとえ道に迷ったとしても12時過ぎにはヒースロー空港のレンタカーオフィスに到着できるはずなのである。ところが最初のトマトジュースや紅茶が供されてから次がなかなかでてこない。卵、私の場合目玉焼きとソーセージなどはひとつの皿に盛ってくれればいいのにそうはいかない。上品なのである。卵をもってきてからソーセージが出てくるまで間があくのだ。それにコース料理だけあってその他にもいろいろとおまけがつく。せっかくのんびりした場所にきたのだから会話を楽しめというのだろうか。でもこちらにも予定があるのだ。
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リヨン行きの飛行機に乗り遅れたらどうしよう。私たちが搭乗する4時以降のフライトは1便しかない。でもそれも満席のはずである。ヒースロー空港でスーツケースに座り込み、途方にくれる私の姿が脳裏に何度となく浮かんだ。
すべてを食べつくし飲み干した私たちがレストランを出たのは9時過ぎだった。30分は予定をオーバーしている。私たちは部屋に戻り身支度を整え、傾きかけた部屋に別れを告げた。フロントデスクにはルイスハミルトンが座っている。この人は24時間勤務なのだろうか。あるときはフロントマン、あるときはバーテンダー、そしてあるときはソムリエ兼ギャルソン。英国版多羅尾伴内のような人である。料金はディナーの時にオーダーしたワイン代が加算されて日本円で5万円強。ほぼ予定通りである。ボートンオンザウオーターとホテルの感想を聞かれたので、「必ずまたきます」と社交辞令を述べた。
トランクにスーツケースを積み、私たちはホテルの駐車場をでてヒースローにつながる高速道路M4を目指す。雨はあいかわらず降っているような降っていないような。ワイパーを常時作動させる必要もないほどの振りだった。

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第45話 川に携帯灰皿を落とす [コッツウオルズ]

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朝食前、奥さんの一服につきあって外に出る。奥さんは日本から持ってきた折り畳み傘を手に、私は今回の旅に傘を持参していなかったので手ぶらだった。絶え間なく雨は落ちていたが大粒ではないし、しとしとというまでもいかない程度の降り。雨に濡れている気はしないが、しばらく歩くと髪や服が湿っぽくなっている、一番厄介な降り方といえるかもしれない。川べりの公園には誰もいない。当然いかなる店もオープンしていないから舗道を歩く人影もない。ゆったりと流れる小川の音と朝早くから川下りを楽しむ鴨の鳴き声が時折きこえてくる。静寂という言葉がこれほどマッチする村は世界のどこにもないに違いない。
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小さな橋を渡り、私たちが宿泊したホテルが正面に見える川沿いの舗道で立ち止まった奥さんは、ポーチから煙草をとりだしライターで火をつけた。煙草を吸わない私にはわからないが、空気の澄んだ、こうした場所での一服は、ホームの端の喫煙スペースで吸う煙草よりはるかに美味しいのだろう。住人の迷惑、環境問題などをまったく無視できればの話だが。「あっ」という声を奥さんが発した。昨今のヨーロッパには煙草を吸える場所は皆無に等しいという私の脅し文句を信じていた奥さんは、今回の旅行に携帯灰皿を持参していた。外で一服するときはその携帯灰皿を利用していたのだが、どうやらそれを川に落としたらしい。幸い携帯灰皿は川底に沈むことなくなんとか浮いている。また川の流れがゆっくりなので下流にどんどん流されるということもない。奥さんは私に助けを求めているようだった。私は奥さんの持っていた傘を奪い取り、傘を裏返して川に差し入れた。ドーム状となった開いた傘の内側で川の水とともに携帯灰皿をすくいあげようという作戦である。ところがだ、緩やかに見える川の流れも意外と強い。傘が裏側に水が入ると傘がどんどん流されるのがわかる。さらにこのまま川の流れに身をゆだねると傘の骨が折れることは間違いない。私は傘の内側にたまった川の水を落としながら傘を川から引っ張りあげた。
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携帯灰皿はあきらめるしかない。これを機に煙草をやめればいい。と私は言った。しかし奥さんはあきらめない。靴も靴下も脱いで川に入れば容易に取ることができることはわかっている。しかし灰皿ごときをとるために私がそんなことをする必要もない。まして川に入り込んでいる私を住人に見つけられたら、東洋人が鴨を生け捕りにしようとしていると通報され逮捕されて国際問題に発展する可能性もある。私はもうこれ以上何もしませんよという意思表示をした。すると奥さんは少し下流に行き川べりにしゃがみこんだ。どうやら川の中に手を突っ込み流れてくる灰皿をキャッチするつもりのようである。川べりの舗道と川の間は少し傾斜しているので安定が悪い。奥さんは片手を差し出し私におさえていてという。どうやらバランスを崩して川に転落することを防ぎたいようだ。それとも川に落ちるときは道連れにしてやるという魂胆だろうか。差し出してくる手を払いのけ、しゃがんでいる奥さんを軽く足でければ彼女だけ川に転落させることもできる。転落しても深させいぜい30センチ。溺れ死ぬこともない。そんな衝動にかられながらも私は奥さんの手をしっかりと握っていた。
川の中ほどに流されることもなく、なんとか手の届く川べり灰皿が流れてくる。これを逃したらあきらめるしかない。絶妙のタイミングで奥さんは川に手を入れた。そして奥さんは大事な携帯灰皿をキャッチしたのである。私たちは鴨の密猟者の嫌疑をかけられ、地元警察署で冷たいパンと牛乳を食べることもなく、ホテルで豪華な朝食にありつけることとなった。水辺で大事なものを扱うときは細心の注意を払うべきできである。私たちがボートンオンザウオーターで学んだ教訓である。

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第44話 世界対応ドライヤーが一瞬でお釈迦 [コッツウオルズ]

ところで今回の旅行に備え奥さんは外国でも使用できるドライヤーを購入していた。外国仕様ではなく外国でも使えるというところが味噌だ。
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しかし、この味噌がとんだミスを招く結果となってしまったのである。ロンドンではホテルそなえつけのドライヤーを使用していた奥さん。さすがこのホテルにはドライヤーは装備されていなかったため、ヨドバシカメラで手にいれたドライヤーの海外デビューとあいなったわけである。バスタブがないためシャワーを浴び洗髪してでてきた奥さんは、これまたヨドバシカメラ発、世界各国どのコンセントにも対応できるという万能アダプターにドライヤーのコンセントを差し込み、スイッチをONにした。その瞬間「ボッ」という音とともにドライヤーは沈黙したのである。火柱こそ見えなかったがきっとショートしたのだろう。国内外対応機種のため、国内では100V側、海外では220V側にスイッチをあわせなければいけなかった。しかし奥さんは日本で使用していたときのままでスイッチをONにしたのである。ドライヤーは海外では全く稼動することなくゴミと化した。まあ、奥さんの髪が燃えなかっただけ幸いと思うべきだろうか。海外専用のドライヤーを購入していればこんなことにはならなかったのに。私は不要な紙をさがし、それにOUT OF ORDER と記してドライヤーに巻きつけ、さらにコードでぐるぐるまきにした。あと10日あまり、奥さんは洗髪後も乾かすことなく、朝起きたときのままティナターナーのような髪型でパリを闊歩するのだろうか。これから宿泊するホテルの各部屋にドライヤーが装備されていればいいのだが。二兎追うものは一兎をも得ず。先人はまことに偉い。
明け方、濡れた路面上を走るような車の音で目がさめた。カーテンの端を少しめくって外を見る。まだ夜中の雰囲気だが午前6時は過ぎていた。オレンジ色の街灯に照らされる道路は確かに濡れている。雨か。激しい降りではない。大半のイギリス人なら傘を使用することなく歩くであろう程度の雨である。しかし日本人なら絶対に傘を開く降りだ。今日は朝食後早々にチェックアウトし、ヒースロー空港に向かい、夕方の便でリヨンへ発つ。つまり移動日だ。しかし天候は良いにこしたことはない。慣れないマニュアル車を操り、知らない道を走らなければならないのだから。

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第43話 床が斜めになったホテルの部屋 [コッツウオルズ]

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ひととおり村の散策を終えてホテルに戻るとハミルトンに部屋の準備はできていますといわれた。部屋まで案内してくれる様子もない。その必要もないことはすぐにわかった。10室とないこのホテルの階段を昇った正面の部屋だという。スーツケースはすでに部屋に運んでくれたとのこと。私たちはキーだけを受け取り部屋に向かった。フロントのすぐ脇にある階段は絨毯がしきつめられはいるが日本の住居のように狭い。小柄なハミルトン青年がこの狭い階段を、あの重たく大きなスーツケースを持ってあがってくれたのかと思うと申しわけない気がした。
築300年を経過しているだけのことはあって、階段の床は足を踏み込むたびに絨毯の下で異様な音をあげる。のぼりきった正面が私たちの今夜の寝床だ。鍵という名にふさわしい昔っぽいキーをドアに差し込むが容易には開かない。微妙な癖があるようである。扉を蹴飛ばせば簡単に侵入できるから鍵などあってもなくても同じようなものなのだが。ようやく開錠となって扉を開けてびっくり。部屋の壁と天井、カーテンがすべて深紅というかワインレッドというか真っ赤なのである。日本の一般ホテルではありえない配色だ。それでも落ち着かないという印象を抱かせないのは何故か。歴史の重みか。そんなものではないだろう。ルーツが欧州にある私にこの配色になんら違和感をもたらさないのだろう。部屋全体の色には違和感はないが床がどうみても傾いているような気がする。奥さんも間違いなく傾いているという。17世紀末に建造されたのだから少々の傾きは当然といえば当然なのだろうが。窓際に近づき外を見るとホテル前の広い芝生の前方に先ほどまで川べりを歩いていたウインドラッシュ川が見える。静かな夜と穏やかな朝が迎えられそうである。
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部屋でスーツケースを開けるなどしてひと休みした後、夕食まで時間もあるので再度、村にくりでることにする。川に沿って通る道路沿いのダウンタウンには数軒のお店があった。そこで掘り出し物でもみつけることにしたのである。時代ものの鍵を苦労して閉めてからフロントでハミルトンに鍵を預けた。彼が夕食の時間をきいてきたので7時にと伝える。すると彼は、レストランは向こうだが、最初にバーにきてくださいという。バーはフロントの背後にある。いきなりテーブルには案内しないのだろう。アペリティフでも振舞ってくれるに違いない。フロント横のドアをあけると先ほどまでの好天ではなく、空はなんとなくどんよりしていた。これが1日に四季があるという英国の典型的な気候なのだろうか。今夜は雨になるかもしれないと思いつつ私たちはダウンタウンに向かった。

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第42話 音のない村 [コッツウオルズ]

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身軽になった私たちはボートンオンザウオターの街にくりでた。といってもホテルを出ればそこが静かなダウンタウンだ。コッツウオルズにある村の中でも人気のある場所だが、観光客はそれほど多くはない。鎌倉の長谷や大仏界隈の賑わいとは雲泥の差である。車のクラクションなどきこえない。鴨の鳴き声が聴こえる程度だ。川には5本の石橋がかかっている。車が通れるのは1本だけ、あとは歩行者専用だ。橋を行き来して川の両岸を歩いても15分もかからない。私たちは川べりにあるレストランに入り昼食をとることにした。いくつかのレストランの外に掲げられたメニューをみてまわっていると英語とともに日本語で書かれたメニューをだしている店もある。それだけ日本人も訪れるということだろうか。私たちが入ったのはレストランといってもフィッシュアンドチップスがメインの店。日本でフィッシュアンドチップス作りにチャレンジしたことはあるが魚が異なるせいか私の記憶にある本場のフィッシュとは別物に仕上がってしまった。本場のフィッシュアンドチップスは33年ぶりである。私たちは喫煙できるパティオ(屋外のテラス席)でいただくことにした。静かな村のレストランで川をながめながら青空の下で食事ができるなんて極楽である。帰国後のことは忘れ去り、今を満喫しつつ山のようなチップスも、シンプルな味の大きなフィッシュも平らげて店をでた。
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レストランを出た後、川沿いの遊歩道を外れ、村人の居住地に足を踏み入れた。どの道を歩いていても人とすれ違うことがない。家の中から人の声もきこえてこない。犬にも猫にもでくわさない。シェスタ(お昼寝タイム)の習慣など英国にはないはずだ。一人で歩いていたら、すべての村人たちが家の中から物音も立てずに異邦人の動向を監視しているのではないかと錯覚して恐怖に慄くかもしれない。昨日までのロンドンの雑踏が嘘のよう、とにかく静かな村である。
どの家も絵本に描かれているようなで作りで可愛らしい。中には大人が住む家にしては天井が低く小さすぎるのではないと思わせる小人サイズハウスもあった。しかし外には大人の洗濯物が干されている。普通の英国人が住んでいるのだろうか。また完全に屋根が傾いている家もあった。震度2程度で崩壊するに違いない。何か魔法の国に入り込んだような錯覚に陥る村である。
ボートンオンザウオターは小さな村だ。だから観光客はここに宿泊することもなく、バスできてダウンタウンで下ろされ、川べりを歩き、水辺のベンチで一休みしてから土産物屋をのぞいているうちに迎えのバスがやってきて、それに乗って次のコッツウオルズの村へ向かうのが定番なのだろう。でも私たちは静かなこの村に1泊する。車はあるが別の村を訪れる気などさらさらない。この静けさを存分に味わいたいのである。といって他に歩くところもなくなったので私たちは自動車博物館と、日本で例えるなら東武ワールドスクウェアのようなボートンオンザウオターの村全体をミニチュアで再現したモデルヴィレッジを訪れることにした。

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第41話 静かな静かなボートンオンザウオター [コッツウオルズ]

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昼少し前に目的地ボートンオンザウオターに到着。通りの右手に土産店らしき店がならび、左手には穏やかなウインドラッシュ川が流れている。川といってもテムズ川のような川ではない。幅は5,6メートル。子供が水遊びできるほどの浅さである。ここを訪れる前に見た写真ではそこを鴨がゆったりと行き来しているはずだ。その川の両側には公園と遊歩道がある。通りを150メートルもいけばダウンタウンを外れ住宅地に入ってしまう小さな小さな村である。
今日の宿泊先ダイヤルハウスは通りを少し奥に入った場所にあった。時代を何世紀も遡ったようなおとぎ話にでてきそうな外観を持つホテルである。それもそのはず築300年を経ているホテルなのだ。ホテル横の駐車場に車を停めると、奥の方から日本語らしきことばがきこえてくる。それも関西弁だ。泊りがけできたのだろうか。それともちゃっかり駐車場だけ拝借したのだろうか。宿泊したならもう少し早い時間にホテルをチェックアウトして、コッツウオルズの他の村へいくはずである。今頃車を出そうとしているということは、別の場所に宿泊して、今日の最初の訪問先としてボートンオンザウオーターに立ち寄ったというところか。つまり図々しい後者の連中に違いない。同じ日本人として恥ずかしい。もっとも確認したわけではなく、言葉のアクセントから私が勝手に解釈しただけだが。
スーツケースは2個トランクに積んであるが、ここで降ろして部屋に持ち込むのはひとつだけ。そのひとつで用が足りるよう、中身はちゃんとわけていれてある。駐車場は舗装されておらず砂利が敷きつめられているだけなので重たいスーツケースを引きずることもできず、手でしっかりと持ってフロントへ向かった。このホテルはレストランも有名で、宿泊者だけでなく村や近隣住人も食事を楽しみに訪れるという。食事にきたひとは正面の入口から入るが、宿泊者は裏手の勝手口のような小さな扉から入館することになる。もちろん都内のホテルのように、また箱根辺りにあるオーベルジュのようにドアマンなどは配されていない。ゲスト自らでドアを開けるのだ。
ドアをあけるとすぐ左手に小さなデスクがあった。オフィスにある事務机サイズだ。その向こうにF1レーサー、ルイスハミルトンのような青年が座って私たちを迎えてくれた。名前を告げ、メイルでうけとっていた予約確認書を渡す。青年はデスク脇のパソコンを操作し予約確認書に間違いがないことを確認した。そしてまだ部屋の用意ができていないと申しわけなさそうにいう。当然だ。まだお昼。午前中チェックアウトを終えたばかりの人もいるだろう。部屋の掃除やベッドメーキングだってできているはずがない。それは問題ないけどこのスーツケースを預かってもらいたいと私はハミルトンに告げた。ハミルトン青年は笑顔で快諾してくれた。

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第40話 日本と相当異なるサービスエリア [コッツウオルズ]

ロンドン郊外でいくつかの信号とラウンドアバウトを体感すると、その後、A40に分岐するオックスフォードまでは日本では北海道でしか見ることができないであろう田園風景が左右に続く快適な高速道路だった。1時間ちょっと運転したところで一休みすることに。
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トイレのサインボードに従い本線を離れて雑木林に車を進める。そこには広い駐車場もない、売店すら見受けられない、日本のようなサービスエリアを想像していた方が間違いだったようだ。男女別のトイレと思われる建物が2棟あるだけ。自販機などもない。道路沿いには何台かのトレーラーが停まっている。「M40にはオックスフォードを過ぎるまでサービスエリアがないので注意」と出発前に読んだ本に記されていたことを思い出した。車をトレーラーの前方に停める。二人一緒に目と鼻の先にあるトイレへ向かうことには抵抗があったので交代で車を離れる。雑木林の中から突然賊が飛び出してきて、スーツケースをもっていかれたのではたまったものではないと考えたからだ。車内にひとり残っていたところで、プロの賊なら窓ガラスを割って車内に侵入し、スーツケースだけでなく人質も一緒に車ごと持ち去るだろうが。
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賊に遭遇することなく無事トイレ休憩を終えたのち、奥さんは車外で一服。木々の向こうから本線を疾走する車の音はきこえてくる。でも排気ガスの臭いはたくさんの木々の緑の香りによって完全にかきけされている。私たちが呼吸で吐き出す二酸化炭素を吸収し、私たちが生きていくに必要である酸素を放出してくれている大切な木々の下で煙草に火をつける神経が理解できない。奥さんの環境破壊、地球温暖化促進活動の後、私たちは再びフォーカスに乗り込みM40に合流し目的地に向かった。

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第39話 便利だけど慣れないと怖いラウンドアバウト [コッツウオルズ]

イギリスの道路には頭にM、A、Bとつく3種類ある。各アルファベットの後に1桁から4桁の数字がついておりドライバーにはわかりやすい。Mと頭につく道路は最高速度120キロ弱の高速道路。もちろん無料である。次が地方の主要都市を結ぶ頭にAのつく道路。最高速度は100キロ弱だが、片側2車線あってM道路に匹敵する通行量のある道路もある。その下が最高速度50キロ弱の頭にBのつく道路。これは各市町村を結ぶ日本でいうところの県道、市道のようなものである。
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M40に乗ってからしばらくは都心の首都高速のように高架を走っており順調だった。ところが、郊外に出たとたん、両側に普通のイギリスっぽい長屋風の住宅が現れたのである。家のガレージからそのまま高速道路に合流できるようだ。通行料無料のなせる業か。さらに順調に走っていたのに前方を走る車のストップライトが見えはじめ減速せざるをえない状況になった。車間距離がなくなり、やがて停車した。こんなところで渋滞?事故?12時までに目的地にはつけないの?色々考えていたら、前方に信号が見えた。高速道路に街中同様の信号があったのだ。これまたただだから文句はいえないのかもしれない。
イギリスの交差点には信号がなく、ラウンドアバウトといって、交差点に進入したらまず左折、時計回りに車を走らせ、自分が進入したい道路になったら左折していくという合理的なルールが確立されていることは知っていた。私のように外様のドライバーには、左折するタイミングを誤るといつまでたっても交差点内をぐるぐる回り続けて目的地方面に向かう道路に入れないという恐怖が伴う。しかし慣れてしまえば車を停車させることなくスムースに左折直進右折ができるので、くるま文化が根付いた国は考えることが違うと感心させられる。そんな旨いシステムがある国でも信号設置が必要なほど車の量が増えすぎたのか、外国人が多く住みついてドライバーのマナーが日本なみに低下して、こうせざるをえなくなったのだろうか。
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