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第98話 夜は質素にチーズとパンとテイスティングの残りのワイン [ヴェズレイ]

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地元有志たちの練習のようではあったが、幸運にも寺院内で賛美歌を聴くこともできた。夕食前に教会を訪れていた観光客たちも皆静かに教会内で幾重にも反響する不思議なサウンドに聴き入っている。厳か、荘重、神聖、日常生活ではそうは簡単には遭遇しない雰囲気を体感した私たちは、ディナーのためホテルに戻ることにした。
今宵も昨夜同様に部屋食である。食材はいたって簡素。明日はオンフルールで魚介料理を楽しみ、パリに入れば連日お祭り騒ぎだろうから、ここ2日の部屋食は胃腸にとってもありがたい中休みなのである。フェブレイさんのVIPアパルトメントのダイニングテーブルの大きさには遠く及ばないがホテルの部屋のテーブルだか、そこに並ぶワインは昨夜と一緒で豪華だ。ただ器はガラスのボトルではなく、ラベルもないペットボトルに変化していたが。昨夜飲み切れなかったワインを空のペットボトルに詰め替えてこの地までもってきたのだ。3種類のワインの残りモノだが、総量はボトル1本分以上にはなっていただろう。
明日はこの旅の最大の難関ともいえるヴェズレイからオンフルールまで500キロ以上におよぶロングドライブである。食べるカーナビは存在しても本物のカーナビは当然ない。いつも隣に座る奥さんは寝ているだけなのでナビにはならない。私の手元にあるのは東日本道路全図のようなフランス国土の半分が新聞紙大の紙1枚に記されている道路地図だけである。インターチェンジの詳細もわからない。高速道路がどのように一般道につながっているのかも判別できない。最大の難所はパリ市内の迂回路だ。そこを間違ってしまうと時間的にもロスになるし、あらぬ方向に行ってしまう可能性もある。頼りは私の方向感覚と勘しかない。大半は高速道路だし、130キロで走り続ければ、途中休憩しても9時出発で3時にはチェックインできるはずだ。今夜は高速道路の番号を記憶するなど経路の予習をして早寝するしかない。明日の晩は潮風を頬に感じながら獲れたての生牡蠣を食べることができるのだろうか。不安と期待の移動日である。
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第97話 NHKアナウンサーが涙した最高の眺め [ヴェズレイ]

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今夕の教会訪問はヴェズレイの丘から見えるブルゴーニュの夕景を眺めること、さらに運がよければ教会内で生の賛美歌が聴けるかもしれない。しかし最大の目的はさきほど目星をつけておいた参道の食品雑貨店やチーズ専門店で今夜の食材、つまみ類を調達することだったのだが。
サンマドレーヌ教会への往路は商店が並ぶ参道を通らず、村人たちの生活が垣間見ることができる1本裏手の道を歩いた。この地で生活している人たちすべてが参道のお店やレストラン、教会内部の仕事に従事しているとは思えない。鉄道はないから車で近くの町の職場に通っている男たちもいるのだろう。家々は皆小さい。とはいっても庭がないだけで室内は私たちの日本の住居ト以上に部屋があるに違いない。家々の窓の外側には綺麗な花が飾られている。壁面全体を真っ赤な蔦のような葉で覆われた家もあった。陽が沈みかけている。私たちは寺院に向け足を速めた。
寺院を囲むように緑の木々と芝で覆われたサッカーができるくらいの広場がある。寺院を建造したときはそんな意図はなかったのだろうが、今は訪れる人たちにとって絶好の展望スポットである。夕方ではあるが何人かの観光客が眼下に点在する村々、その先に広がるブルゴーニュの風景に息することも躊躇うように感嘆している様子である。
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フランスの世界遺産を紹介したNHKの特別番組の中でこの場所から放送した女性アナウンサーはこの風景を見て涙を流していた。私たちがヴェズレイのことを知ったのも、ぜひ訪れたいと思ったのもその番組を見たからである。涙こそ流れてはこなかったが、こんなにも広大な眺めなのに音がまったくない、静寂そのもの、眼下の村人の誰かが家の中でワイングラスを落としだけでもその音が聴こえてきそうな雰囲気は体験したことがない。雲ひとつなく、ブルゴーニュの果てまで太陽がまるでご褒美を与えるように暖かい日差しを差し向けている。これが曇天だったら印象も変わっていただろうに。私たちは幸運だ、ついている。新婚旅行で訪れたスイスのピラトス山でも雲ひとつない晴天。山の頂に建てられたホテルの窓からルツェルン湖の全景や周囲のアルプスの山々がきれいに全て見えたのだ。この場所だっていつもこのような晴天ばかりではなかろう。私たちのために神が与えてくれた眺めに違いない。

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第96話 ゲイは身を助く [ヴェズレイ]

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ホテルへの帰路、緩い下り坂を歩いていると店外に様々な絵葉書を飾った店があった。絵葉書だけを売っている写真屋のようである。小さな入口から店内に入ると中は薄暗く、レジ前にも店員がいない。かろうじて商品である絵はがきが見える程度の明るさの店内を歩き、ヴェズレイやパリの昔の町並み、昔の子供を写したノスタルジックなはがきを何点か選んだ。だがお勘定をしたくても店員がいない。このまま立ち去ることも可能だった。エクセキューゼモアと何度か呼びかけるとやがて店員、というか店主と思われる中年の男が奥から現れた。彼は店内の照明をつけ、科(しな)を作ってレジ前に立つ。私たちが選んだ葉書を彼に手渡すと彼はいきなりペンを手に取り、それぞれの葉書の裏面、宛名を書く面に何かを書き出したのである。「人が買ったものに何をする」と叫びたかったが彼は一心不乱にその1枚1枚に署名をしているようだった。「ひょっとしてこの店内にある葉書はすべてあなたが撮影した写真を葉書にしたものなのですか」と尋ねると「そうだ」という。しかし顧客の了解もなくサインをするとはたまげた写真家である。かなり著名な写真家なのかもしれないと思い、彼の写真をとってもいいかいうとOKの返事。カメラを向けると彼は手を前で組み、若干、斜に構えてレンズを見る。その姿はどうみてもゲイだった。確認することはできなかったが。
一旦ホテルに引き上げた私たちは夕方近くに再度サンマドレーヌ教会を訪れるためにホテルをでる。さきほども寺院内部に入り、日本からの来訪者に日本語で説明するガイドと思われる人物の後を追い、つかず離れずと微妙な距離を保ちながらこの寺院の歴史、概略の説明に耳を傾けた。もちろん体は別の方を向き、あなたの話など聞いていませんよというスタンスで、耳だけダンボのように広げてガイドの話に集中していたわけだ。
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しかしそのガイド、どうやら来訪者が雇った本職のガイドではないようで、日本からきた教授らしき来訪者にただちょっと知っているので説明していただけのようだ。多分こちらの大学院あたりで学んでいる将来の准教授候補か。説明を受ける日本からのきた初老の来訪者は先生先生と呼ばれていたのだが、どうやら歴史は専門ではなさそうだった。ガイド役がマグダラのマリアのことなどを説明しても何も食いついてこないのだ。そんな話どうでもいいや、そろそろ日本食を食べたーいてな調子である。しかし私たちにはありがたいガイド役であった。

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第95話 木彫りの杖 [ヴェズレイ]

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サンマドレーヌ教会の横にある土産物屋に入る。大仏や八幡宮近くにあるそれとかわらない。絵葉書や指輪、仏像や大仏様ではなくキリストやマリア像が陳列されているところが大きな違いといえば違いである。店内をまわりひととおり商品をみた私は、廉価の土産品を物色する奥さんを店内に残し外にでた。すると入り口の横に、柄の部分に彫り物がある木製の杖が。柄の部分は犬とか馬とかの動物が彫られている。多分ここからスペインのサンティアゴ・デ・コンポステーラへ巡礼に行く人が、こうした杖を購入していったのだろう。富士登山の杖のようなものだと思った。
柄の部分に貼られた値札をみてびっくり。お買い得なのである。私は馬好きの知人への土産として1本購入することを決めた。もちろんこれをもってこの先どうやって移動するか、日本にどうやって持ち帰るかという問題があったので迷いに迷ったが。今後のフランス国内の移動は車なので問題ない。だが難問は日本への持ち帰りをどうするかである。木製とはいっても、一応ここからスペインまで長丁場の巡礼にも耐用すべく杖の先には金属の突起物がついている。使いようによっては人を殺傷できる威力もありそうだ。となると機内には当然持ち込めない。スーツケースと一緒に預けたら、飛行機の貨物室に収納される前に折れてしまう可能性もあるし、紛失してしまうかもしれない。悩みに悩んだ結果、最終的には、ケセラセラ、まあどうにかなるだろうと購入することに決めた。
それほどその杖の価格がリーズナブルだったのである。日本に持ち帰る1本をどれにするかも一苦労だった。柄の部分にあたる馬の表情がそれぞれ異なっていたのである。機械で彫っているものではないことは一目瞭然。額が異様に広い馬もあれば、見事に調和のとれた顔の馬もいる。その中でも一番自然な表情に近い馬を引き抜き私は店内に戻った。店主と思われるおじさんに杖をさしだすと彼が苦笑したようにみえた。「これ、本当に買うの?日本へ持ってかえるの?」と呆れた表情に見えたのだが気のせいだろうか。私はいくら価格がリーズナブルだからといって途中で無くなってもいい、壊れてもいいとは思わなかった。絶対にこの馬を無事に日本まで持ち帰ってみせると心に誓ったのである。

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第94話 日本人ツアー客同泊 [ヴェズレイ]

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部屋はそれほど広くはないが明るく綺麗だ。この程度の広さなら奥さんも落ち着いて眠れるだろう。西洋建築の特徴、縦長の窓から望む澄んだ青空と緑が眩しい。冷蔵庫は当然ないがバスタブはある。バスルームにも大きな窓があるが野鳥の囀る森の木々が見えるわけではない。眼下に広がる村が見えるわけでもない。隣接した従業員宿舎の窓がすぐそこにあった。ブラインドがなければ全てご覧いただけます状態だった。しばらく休憩の後サンマドレーヌ教会に向け参道をゆっくり散歩することにした。
退室しようとドア付近に行くとドアの外がやかましい。そして何やら聞き覚えのある騒音が。なんと関西弁を話す団体客のようである。サンマドレーヌ教会があるヴェズレイはキリスト教の三大巡礼地のひとつスペインにあるサンティアゴ・デ・コンポステーラへの巡礼路として世界遺産に登録されているが、この雑音を発する集団が敬虔なキリスト教徒とも思えない。パリからオプショナルツアーでわけもわからずやってきたご一行様であろうか。しかし滞在中奥さんがこのご一行様の一人と、ホテルの外で一服中に遭遇し情報収集したところ、ジュネーブやパリなど欧州のロマン・ロランゆかりの地を訪ねるツアーご一行様だったとか。ノーベル賞作家ロマン・ロランが最期を迎えた地はここヴェズレイ。私たちより遥かに学術的な旅をしている方々だったようである。しかしながら集団となると静かなホテル内をヘルスセンターとでも思っているのか大声を発しながら移動するというところはいただけない。学問も大事だがまずマナーを学んで欲しいものである。
参道の両側には様々な店がならんでいた。江ノ島の参道のように土産物屋だけではない。この丘自体がひとつの集落なので、酒屋もあれば八百屋もレストランもあるのだ。ふとんやさんはなかった気がする。興味深い土産物屋もあったが帰路に寄ればよいかと教会へ向かう。
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途中ワインショップに立ち寄った。ブルゴーニュの聴きなれた地名畑名が記されたラベルのワインが店内には溢れていた。すると女性スタッフが試飲をできますよと声をかけてくれた。この東洋人、ラベルを見つめる眼光が鋭い、ただものではない、ワインジャーナリストではないか、と思ったのだろうか。今朝までニュイサンジョルジュにいたことなどを話しつつ何種類のワインを試飲させていただき、何も買わずに店をでた。それはそうだ日本に持ちかえるワインをわざわざこの地で買う必要もない。今夜のワインを手配する必要もない。フェブレイ社での試飲で余った高級ワインをペットボトルに詰め替えてこの地まで持ってきているのだから。
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第93話 食べるカーナビ 迷うことなくヴェズレイ到着 [ヴェズレイ]

フェブレイ夫妻と別れ74号線を少しばかり西に走る。予定では遅くとも1時前にはヴェズレイに到着するはずだ。リヨンから走ってきたA6号線と交わるジャンクションでリヨンとは逆、右方向にハンドルを切りパリ方面に向かう。しばし北上した後にA6を降りて一般道に。YAHOOの地図をプリントアウトし、昨夜も走路を復習してほぼヴェズレイまでの道路地図はインプットされている。その地名と実際に標識に表示された地名が一致したら、その周辺の地図を私の頭の中で広げ左折すべきか右折すべきか判断する。神業だと思う。私にナビは不要。私自身がカーナビなのだから。食べるカーナビである。
いくつかの小さな村を通過すると小高い丘の上に城のようでもあり教会にもみえる建物が見えてきた。サンマドレーヌ教会に違いない。どうやら目的地ヴェズレイにも無事到着できそうである。しばし九十九折の山道を走ると見慣れた風景が飛び込んできた。別に以前に訪れたから見慣れているわけではない。出発前にヴェズレイのことを調べる際に必ず写真で紹介されていた風景が目に入っただけである。だとすると右手に今夜私たちが宿泊するホテル・デ・ラポステ・デュ・リオンドールがあるはずだ。ピンポーン。これまた脳裏に焼きついているおとぎ話に登場しそうな石造りの建物があった。
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ホテル前にはイタリアンレッドのアルファロメオ8Cコンペティツィオーネが停まっている。私のオペルコルサはどこに停めればよいのだろうか。とりあえず正面に車をとめスーツケースをおろしてフロントに向かうことにした。
ホテル内部も外観同様ヨーロッパ調でこじんまりしていて落ち着いた雰囲気。ここはヨーロッパなのだからアメリカンのはずがない。三人入ればいっぱいになりそうなフロントデスクの向こう側では二人のレディが宿泊の応対をしている。もちろん英語は通じる、チェックインの旨と車をどこに停めればよいかと尋ねると左手の有料駐車場に停めて下さいという。その駐車場はホテルとタイアップしていて無料で駐車できるわけではない。日帰りの観光客同様パーキングメーターでチケットを買ってフロントガラスの内側に置くように指示された。とはいっても日本の観光地にある駐車場のように10分、15分20分30分1時間単位で課金されるわけでもなく一晩駐車しても千円にも満たない金額だったが。
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