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第143話 メトロの回数券をW買い [パリ]

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外国人からすれば自販機=お金が間違いなく入っている機械がそこかしこにあふれている日本の街角の風景は信じられないことなのかもしれない。私たちはそれほど疑問に感じないが、日本はそれだけ治安が良いということか、安全だと日本人が勘違いしているだけなのか。海外の街角ではほとんど自販機をみかけない。地下鉄等の駅構内には切符や回数券の券売機がある。でも駅は夜になればシャッターが閉まり入ることはできない。それに機械そのものも日本製ほど精密ではない気がする。
今回の銀婚旅行の最終日、睦美と最後の晩餐ならぬ午餐のため会うことになっていた。ホテル界隈を散策した後、クルニー・ラ・ソルボンヌ駅からメトロに乗るべく階段を下りて地下に向かう。10号線、一部区間地上を走る5号線と乗り継いで睦美のアパルトメントに近いルパブリック駅を目指すのだ。今日はルパブリック界隈にある睦美の馴染みのレストランへ連れて行ってくれることになっている。アルジェリア料理か、ベトナム料理か、はたまたトルコ料理かはわからない。ただフランス料理や日本食でないことだけは確かだった。帰路もメトロを利用してここまで戻ってくるつもりだったので回数券=カルネを買うことにした。10枚つづりの回数券うち往復で4枚しか使用しないが残りは睦美にあげればいい。カルネは3割近く割安ではあるのだが、明らかに往路復路でそれぞれ切符を買った方が安上がり。でも面倒くさいし、睦美も喜ぶだろうと思いカルネを購入することにしたのである。
カルネはクレジットカードで買うことができる。カードでしか買うことができないのかもしれない。私は券売機の前に立ち表示言語を英語に変更。画面の指示に従いカードを挿入した。初回は半分挿入したまま何の反応もなくカードが戻された。カード情報をうまく読み取れなかったと思い私は再度カードを挿入する。今度はマシンが情報を読み取ったような手ごたえを感じた後、カードが戻ってきたのである。そして束になったカルネが出てきた。それをとって券売機を離れようとすると再び音がして10枚束になったカルネが落ちてきたのである。奥さんと顔を見合わせた後、それをすばやく手にとった。10枚分の決済で20枚ゲットできた。私たちにはまだ運がある。フランスで少なからずユーロを消費したことに対するナポレオンからのご褒美かとも思った。これで睦美も16枚のメトロ乗車券を私たちから受け取ることになり喜ぶことだろう。機械モノは日本製に限ると再認識するとともに、こうした恩恵があるのなら洋モノマシンもまんざら悪いとはいいきれないとも思った。私たちは改札をぬけ、10号線の終点であるオーステリッツ駅の表示板のあるホームに向かった。
しかしこの儲け話にはちゃんと落ちがあった。帰国後2カ月。カード会社から届いた請求明細書にはちゃんとカルネを2冊かったことが記されていたのである。寂しいことではあるが洋モノ機械の急速な進歩を認めざるを得なかった。

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第142話 オタク街サンジェルマンデプレ 学生街はパリの秋葉原 [パリ]

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いつもは待ち合わせ場所や目的地に向かうため利用するメトロの駅に歩くだけで、ソルボンヌ大学周辺をゆっくりと歩くこともなかった。でも今日は睦美との最後のランチをとるための約束時間まで余裕があったので通ったことのない道を選んで歩くことにした。
するとショーウインドウにドラゴンボールなど日本のアニメの主人公のフィギア(人形)たちが勢ぞろいした店を見つけた。そしてその先を歩くと同じような店がまたある。道の反対側にもそうしたフィギアや模型をディスプレイしたショップが目立つ。まだ午前中なので店はあいておらず中には入れなかったが妙な気分だった。ここはパリの秋葉原か。東大の周辺にこんな店が立ち並んでいるのだろうか。まあ客はソルボンヌの学生に限ったわけではないだろうし、雀荘が軒を連ねるよりはましかもしれない。パリにメイド喫茶や耳掃除やさんなどが登場する日も遠くはなさそうである。しばらく歩くと道路の反対側にピンク色の看板にLittle Tokyoという文字が描かれた異様な店があったのでカメラを向けた。すると店の前を通ろうとしていたと思われる太った中年のフランス人おじさんが、私が撮影しようとしていることに気づき立ち止まってくれたようである。私は急いでシャッターを切ると、そのおじさん再び歩き出し店のドアに鍵を差し込んだのである。どうやら店主だったようだ。
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私たちは周辺をひとまわりした後、そのLittle Tokyoに立ち寄ることにした。開店準備はすでに終えたようで店内には灯りもつき、店主はドア横のレジ前でくつろいでいる。その店は本屋さんだったが、なんと日本のアニメ本ばかりをそろえる専門店。日本のマンガ本なのだが開いてみるとフランス語で書かれている。日本の文化、それもアニメやゲーム、漫画などを紹介するジャパンエキスポがパリで数年前から開かれ人気を集めていることは知っていたが、この店主らしきおじさんも日本の漫画を売ることで美味しい生活ができているのだろう。そのためにメタボになってしまったのかもしれないが。
マンガ本の価格は日本円で1000円前後。日本のマンガ本が今現在いくらするのか知らないが妥当な値段ではなかろうか。日本の若者の活字離れが進み本の売れ行きが悪いという日本出版業界にとって、海外への版権譲渡事業は思わぬ追い風になっているに違いない。

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第141話 セキュリティゼロの一時預かり [パリ]

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エレベーターは混んでいたがフロントに列はなかった。本当は午後タクシーで空港へ向かう時間まで部屋を確保しておき、最後のパリ散策後に一旦部屋に戻り、シャワーを浴びてパリの垢を落としてからさっぱりとした気分で帰国の途に着こうと考えていた。だがチェックイン後、チェックアウトを今日の午後3時ごろまで延長したら追加でいくら払わなければならないか尋ねたらしっかり半日分いただくといわれそれを断念したのである。
支払いを済ませると空港までのタクシーは必要ないかと尋ねられたので午後3時の手配をお願いした。あと何時間かのパリ散策、この大荷物を持ち歩くわけにはいかないので荷物を預って欲しいというとフロントマンは笑顔で頷いた。フロントで預ってもらい、引取りの際必要となる番号札を受け取り、フロント裏にでも置いて保管してくれるのかと思ったら、パリの社会はそんなに甘くない。預り場所を指示されたのである。そこは階段裏の小さな小部屋、掃除道具をいれるような薄暗い部屋だった。すでにいくつかのスーツケースが置かれている。私は空いているスペースにスーツケースをおさめ、折れないように杖をその隙間に差し入れた。コンピュータが入ったバッグもあるが、これをもって歩くわけにはいかないので、貴重品だけを別の手提げバッグに入れ替え、スーツケースの横に置いた。私がどんなスーツケースを持っていたかなどフロントの人たちが覚えているわけがない。別の宿泊者が私の汚れた洗濯物が詰め込まれたスーツケースや、誰も土産物としては購入しないであろうと思われる杖を持ち去っても絶対にわからないだろう。チェックアウトしたらあとの責任は負いませんよということなのだろう。
フロントマンが闇組織とつながっていて、裕福な日本人ツアー客の荷物がある、午前中に盗みにこいと今頃連絡しているかもしれない。私たちは午後ホテルに戻ってきたときにスーツケースや杖が残っていることを祈りつつホテルをでた。

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第140話 チェックアウト [パリ]

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パリ最後の朝を迎えた。7時前なので窓からみえる広場の明かりも灯っている。その周囲の道を大きな騒音を立てて清掃車が動き回っていた。明け方のうちに掃除をするからパリの朝、道路にゴミが舞っていることがないのだろう。
地下のレストランで朝食を済ませ部屋に戻る。レースのカーテンを開けて空をみあげると、8時を過ぎていたがまだ夜は明けきってはいない。でも今日も天気はよさそうである。下を覗き込むと広場は学生たちの知性が火花を散らしているようですでに活気に満ちていた。隣のカフェのテラスにはエスプレッソを飲みながらノートに何かを書き込んでいる学生がいる。ホテル前のベンチに座って煙草を吸いながら教科書だろうか本を広げている女子大生もいる。雀荘で一夜を過ごし、講義中深い眠りにつくために大学へきているような不良学生は少なくとも私の見渡せる範囲には見受けられない。大学の通用口に目を向けると警備員に身分証明書を見せて学生がぞくぞくと構内に吸い込まれていく。ソルボンヌ大学の学生たちのこうした朝の光景を見るのも今日が最後だと思うと、なかなか窓から離れられなかった。
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荷造りはほとんど昨夜のうちに済ませておいたので、パジャマや洗面道具など、今朝までつかっていたものをスーツケースの残り少ないスペースに詰め込むだけである。最後に部屋やバスルームをみて忘れ物のチェック。クローゼットから土産物の杖をとりだし重いスーツケース二つを転がしてドアに向かう。振り向くとテーブルの上に置かれたベラールさん夫妻が贈ってくれた綺麗な花たちが「ボンボヤージュ、お気をつけて」と私たちを見送ってくれているようだった。
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このホテルの難点はエレベーターが1基しかなく、さらに3,4人乗るといっぱいになるほど小さいことだった。チェックアウトする人が集中するから朝方のエレベーターは当然混雑する。手ぶらなら4階から螺旋階段で降りてもどうということはないが、大きなスーツケースを持って2往復するほど私も若くはない。何度も宿泊客と彼らのスーツケースでいっぱいで、ひとりとして追加で乗るスペースがないエレベーターを見送り、誰も乗っていないエレベーターの到着をじっと待つしかなかった。

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第139話 ベラール夫妻とのお別れ [パリ]

劇場からホテルまで駐車場所までもどる途中、セーヌの対岸にそびえる青光りするエッフェル塔をバックに記念写真。まっすぐにホテルに向かってお別れかと思ったら、ベラールさん遠回りして夜のモンパルナス周辺を案内してくれた。道路沿いにはレストランの色とりどりのイルミネーションが光る。暗くて背景が見えないだけにパリというよりロサンゼルス郊外を走っているようでもあった。
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車はソルボンヌ広場に到着、いよいよご夫妻とお別れである。一旦車から降りて私たちとの別れを惜しむ二人に、私たちは滞在中のおもてなしに対し深く深く感謝していることを、ありったけの単語を並べて伝えた。お別れのセレモニーを終えるとロレッタさんはミニクーパーの後席ではなく助手席に乗り込む。「オルボワール」 また会えるかもしれないし、永遠の別れになってしまうかもしれない。私たちはミニクーパーのテールランプが見えなくなるまで手を振り続けた。
手を振り続けたからではないが、小腹が空いた気がする。そう思ったのは私だけではなさそうだ。エスカルゴを食べたホテル横のカフェはまだ営業していたので腹を満たすことにする。パリ最後の晩餐はコンサート前に済ませてはいるがフルコースではなく軽食だ、あれから時も経った。空腹も無理はない、これが本当の最後の晩餐になると自分に言いきかせた。選ばれた食べ物はピッツア、パリの最後をピッツアで締める、何ともお洒落である。この2週間余りのいろいろな出来事を思い出しながら、周囲から聴こえるフランス語を肴にピッツアと黒ビールを腹に納めた。
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明日の午前中は睦美の住まいに行き、彼女とパリ最後のランチをとり、午後にはホテルにもどった後、シャルルドゴール空港へ向かうことになっている。あと72時間後には間違いなく私は日本のオフィスにいて、たまった2週間のお仕事をひとりもくもくと片付けているのだ。とにかく明日がある、残された時間を楽しもう、そういいきかせつつ、私たちは荷造りをすべくホテルに戻った。

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第138話 初めてのクラシックコンサート [パリ]

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日本でもかつてロンドンで生活していた時にもロックコンサートには何度も足を運んだことはあるがクラシック、フルオーケストラの演奏を劇場で聴くことは私にとって初めての経験だと思う。当初はオペラ鑑賞を薦めたベラールさんだったが私たちの滞在中にパリ市内でオペラの上演はなく、この劇場でのコンサートだけが私たちがクラシックに触れる唯一のチャンスだったそうである。
正面入口から劇場に入るとロビーフロアの中央に緩やかなスロープの階段があり、その階段は途中で左右に分かれていた。ロビーはすでに着飾った紳士淑女で溢れている。もちろんイブニングドレスやタキシードといった人がいるわけではない。それに近い人もいたが、大抵はジャケットを羽織った紳士、ドレス姿のご婦人方である。ジーパン姿の若者は当然見つけられない。当然ベラールさんはチケットを4枚入手してくれていたが、並びの席ではなかった。私たちが日本を出発間際に手配をお願いしたので、チケットの残数も少なかったのだろう。二枚は1階、それもステージの最前列の真正面。残りの2枚は二階席だという。ベラールさんと私は二階席、ご婦人方はコンサートホールの迫力を味わってもらおうとステージ前で鑑賞することになった。歴史ある劇場だけに内部は映画で観たことのあるようないかにも重厚なクラシックをおきかせしまっせという雰囲気が漂っている。この会場に小林幸子や美川憲一が派手な衣装で登場したらおかしなことになることだけは間違いない。
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その夜の指揮者はフランスでも若手有望株といわれる人物。彼の指揮にあわせステージ上のバイオリン奏者が激しく弓を動かす様子は、海岸に打ち寄せる荒波を見るようで衝撃的だった。休憩時間にロビーにおりる。ベラールさんは知人を見つけたらしく、挨拶を交わした後に私を紹介してくれた。「何だお前、日本人なんかとつきあってんのか」とは言っていなかったと思いたい。少し遅れてロレッタさんと奥さんがロビーに現れる。指揮者を目の前に演奏をきいた奥さんは指揮台の上で踏み鳴らす彼の足音まで聞こえ迫力があったと興奮気味だった。
しばしの休息の後、それぞれの席に戻って後半の演奏を堪能した。日中の疲れだろう。大音響の中、途中ベラールさんが居眠りをしているのを私は目撃してしまった。私も睡魔に襲われたから当然といえば当然。しかしステージ下で見る奥さんは居眠りすることすら許される状況ではなかっただろう。

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第137話 無謀な縦列駐車 [パリ]

開演まで1時間あまりしか時間がないので軽いディナーということでベラールさんはこの店に決めたようである。私も奥さんもベラールさんの薦める舌平目のムニエルをオーダーした。ワインはベラールさんがセレクトしたミュスカデ。食事中、映画「モンテーニュ通りのカフェ」に登場したような若い女性ではなく、神経質そうな細身のおっさんギャルソンが私の水の入ったグラスに誤ってワインを注いでしまった。日本人なら「いいですよ」といって新しいグラスを用意してもらってワインを注いでもらうだろう。しかしさすがベラールさん、おっさんギャルソンのミスを許すことなく、ドスの利いたフランス語の低い声で叱責した。リヨンでの私がそうであったようにあのようなミスをした場合でも、日本人客はチップを当たり前のように払ってしまうのだろうが、ベラールさんは店側にミスがあった場合にはチップは不要といっていた。当然といえば当然。チップとは彼らの顧客へのサービスに対する評価なのだから。
私たちが食事と会話に集中していると後ろの席の客がざわつきだした。外を指さして何かいっているのだ。彼らの席も道路に面しているので外の様子もよくわかる。私たちも道路を見ると、店の前の歩道に沿って停められた2台の車の間に、おばさんが駐車しようとしているのだ。どう考えてもおばさんの車が入るスペースはない。ところがそのおばさん、前後の車に何度も自らの車をぶつけ、ちょっとずつスペースを広げて停めようという魂胆のようだ。バンパーはぶつけるものという教育が行き届いているのだろうか。車がぶつかる度に後ろの席の客が非難の声をあげる。そのうちベラール夫妻も小声ながら参加していた。あまりに常識外れの行為なのだろう。
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ところが時間はかかったがそのおばさん自らの努力で確保した空間に見事車を納めたのである。得意気に車から降りてきたおばさんに、ベラールさんがレストランの窓ガラスをこぶしで叩いて非難する。おばさんそれに気づいたがベラールさんにニッコリ微笑んで歩いてどこかにいってしまった。さすが前のコンサートにきた客ではなかったようだが。

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第136話 クラシックコンサート前に腹ごしらえ [パリ]

私たちは6時前にはホテル前の通りに立ち、ベラール夫妻の車が到着するのを待った。日は暮れかかっているのだがソルボンヌ広場はまだ学生たちで賑わっている。4人乗車するのだから、今回は今朝駐車場でみたミニクーパーの隣にあったベラールさん専用ワーゲン・パサートで登場かと思っていたら、パンテオン方面からやってきたのはさっきまで乗っていたゴールドのミニクーパー。助手席に座っていたロレッタさんがシートを倒して後部座席に移動。続いて私の奥さんも狭い後部座席に入り込む。4人乗るとさすがにシャコタンの車に乗ったような気がするが錯覚だろうか。
車はオルセー美術館を左手にみつつセーヌ川沿いに西へ進んだ。途中、橋を渡って対岸に。そしてホテルをでて15分ほどで、劇場近くに到着した。問題はまたしても駐車スペースの確保である。人の通りもないセーヌ川沿いとはいえ、シャンゼリゼ通りもそう遠くはないので道路の端は車でぎっしりと埋まっていた。それでも少し探しただけで空きスペースを発見。ミニなら十分停められる。パリ市内にでかけるにはミニが最適というベラールさんの言葉が思い出された。パサートを停めるとなったらまだまだ時間が必要だったに違いない。
車を停めてからセーヌ河畔をしばらく歩く。左手にはセーヌ川、その向こうには私の苦手な青いエッフェル塔がそびえている。やはりシックなブラウンの鉄骨が浮かび上がる従来のライティングの方がクラシカルで好きだ。EU誕生何周年記念かは知らないが、法隆寺の五重の塔を真っ赤なライトで照らすようで興ざめだ。鋭角に右折するとそこがシャンゼリゼ劇場のあるモンテーニュ通りだ。この辺りは超高級ブティックが並ぶパリ市内でも屈指の豪奢なところ。ロレッタさんはいつもこの辺りで服を買っているとベラールさんが言って笑う。私が言えばジョークであることは明白だが、ベラールさんが言い放つとあながちジョークとも思えない。
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ベラールさんはシャンゼリゼ劇場の前のカフェ「バー・デ・テアトロ」を予約してくれていた。このレストランはフランス映画「モンテーニュ通りのカフェ」で主人公の女性がギャルソンとして働いていた店である(私たちは帰国後、パリが舞台ということでこの映画を観にいったのだが、スクリーンに映し出された「バー・デ・テアトロ」にお互い思わず「あそこだ」と声をあげてしまった)。私たちは赤いキャノピーの真下、前面ガラスで覆われた窓側のテーブルに案内された。店内にはそれほど大きくないにテーブルがぎっしりとならんでいるが全て埋まっている。大半がコンサート前に軽食をとるために入店してきた客なのだろう。

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第135話 時を経ても変わらない丘からの眺め [パリ]

DSC01519.JPGベラールさんはサクレクール寺院に向かう前に私たちを近くの葡萄畑に案内してくれるという。ル・クロ・モンマルトルというワインを年間1000本製造しているだけの小さな畑だが、味は確かなようでこれまでに賞を獲ったこともあるとか。パリ18区によって運営されるいわば公共の畑から収穫された葡萄で作られたワインの収益はすべて近くの社会福祉施設に寄付されるという。日本とフランスの文化の違いをあらためて知らされた。私たちもパリで社会貢献したかったが、年間1000本しか製造されないのではもちろん私たちが入手できるはずもない。
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辿り着いたモンマルトルの丘の頂点に建つサクレクール寺院前からの眺望は期待通りに素晴らしかった。ロンドンのプリムローズヒルから見るロンドンの風景は高層ビルの出現によって様変わりしていたが、何十年か前にみた景色とほとんどというかまったく変わっていないところがパリの魅力かもしれない。サクレクール寺院で手を合わせ、世界平和を祈願した後、似顔絵を描く画家の卵、画家崩れ、単なる絵の上手な商売人たちや、歩行者からのおひねり目当てに芸を披露する大道芸人を冷やかしながら車に戻った。モンマルトルからそのままホテルに戻るのかと思っていたら、ベラールさんは少しばかり遠回りしてコンコルド広場、エリゼ宮、日本大使館前を経由してくれた。さすがにここには昨日もおとといもきたよとはいえず、助手席で初めて見るかのように私はキョロキョロしていたのである。エリゼ宮を警護する警官に向かって何か投げつてもいいかとベラールさんに言うと、さすがに「ノン」という答えが返ってきた。
4時前にホテルに到着。私たちはコンサート鑑賞用衣装に着替えるため一旦別れた。朝から半日、混雑するパリ市内を運転し、ベラールさんもかなり疲れているに違いない。それでも再び6時には迎えにきてくれるという。ベラール夫妻にとってもタクシーで劇場まで行った方が楽だとは思うのだが。ホスト、ホステスとして私たちを徹底的にもてなしてくれる姿には本当に感謝、感激である。

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第134話 モンマルトルの丘 車停められません! [パリ]

ポンピドーセンター内で昼食を終えて外に出るとベラールさんが私たちから少し離れたところで電話をかけはじめた。館内でも時折携帯のチェックをしていたから外に出て初めて連絡をとったのだろう。フランス語で話しているのでもちろん内容はわからないが、友人との他愛もない会話ではなさそうである。かなりシリアスな表情をしている。ビジネス上のトラブルかもしれない。忙しい最中、丸一日時間をとらせてしまったことを申し訳なく思った。電話を切ると次はどこに行きたいかと尋ねてきた。さすがにパリから少しばかり離れた「ヴェルサイユ宮殿」とはいえない。半日仕事になってしまうだろうから。結局眺めの良いモンマルトルの丘に向かうこととなった。天気も良いのでパリの街が綺麗に望めるに違いない。
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夜は歓楽街となるピカール界隈を抜け車はモンマルトルの丘を登り始めた。この辺りは特に道幅が狭い。しかし両側にはぎっしりと車が停まっている。駐車している車の脇を歩く太陽の下では違和感のあるけばけばしい女性を見つけては「まだ仕事の時間ではないのに」とベラールさんがいう。丘を登りつめたものの問題は駐車できるかである。運良くサクレクール寺院などの見物を終えて駐車スペースを離れる車に出くわせばいいがそうはうまくいかない。ありとあらゆる路地に入り込み隙間を見つけようとするが見つからない。ベラールさんの顔にも疲れがみえる。「夜のコンサートもあるし、一旦ホテルに戻りましょう」というがベラールさんはあきらめない。もう二度とパリの土を踏めないかもしれない日本から珍客をなんとしてもパリを一望できるモンマルトルに連れて行こうというのだろうか。
20分ぐらいは丘の周辺を彷徨っただろうか。ようやくミニが収まる駐車スペースが見つかった。駐車した場所から少し先にある券売機でパーキングチケットを購入。車のダッシュボード上に放り込む。これで1時間は堂々と車を停められるのだ。私たち3人はゆっくりとサクレクール寺院に向かって歩き出した。石畳の道は当然くるまの乗り心地も悪いが歩くのもまた厄介である。しかし靴底を通しての石の感触とともに先人たちの会話が聞こえてくるようで、アスファルトやコンクリートの舗道上を歩くよりは一歩に重みを感じた。

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