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第3話 さよならJAPAN [往路]

機はサテライトを離れ誘導路を通って滑走路に向かう。離陸が込み合っているのか、風の影響か、誘導路でしばらく待たされる。乗客たちはくつろいているようではあるが内心不安でもあるに違いない。管制官から離陸OKの指示を待つパイロットは乗客以上に緊張していることだろう。離陸と着陸が最も神経を使うときいたことがある。もっとも航行中も気を緩めてもらっては困るのだが。窓から外をみると成田-シンガポール間に就航間もないシンガポール航空の総二階建旅客機エアバスA380が私たちに続いて離陸するようである。滑走路に続く誘導路をゆっくりと移動していた。私は初めてみるA380をデジカメで撮影した。離着時にデジカメの使用は禁止されているのだが私は特別なのだ。
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管制塔からGOサインがでたのだろう。甲高いエンジンがさらに甲高くなる。スピードがあがる。窓から見えるサテライトの姿も目で追えなくなり一瞬のうちに後方に消えていく。このまま滑走を走り続けたら私たちは三里塚の草地に散ることになる。ロンドンの地を踏む前に千葉の地に叩きつけられたのではたまらない。次の瞬間機内が静かになる。滑走路を疾走していたタイヤの走行音が消えたのだ。タイヤが外れてしまったわけではない。無事離陸したのだ。タイヤが格納される音がきこえる。地面がみるみる下の方に遠ざかる。私たちは日本を離れた。今欧州に続く空へと舞い上がったのである。
夏休みでもないし連休を控えているわけでもないが、機内の座席はほぼ埋まっていた。私たちの座席の横、つまり3列シートの真ん中、両側にギャングウェイがあり窓のない列の三席には誰も座っていなかった。離陸しているので途中から乗り込んでくることもないだろう。しりもち事故があった際は危険なので最後部は敬遠されるのだろうか。これから13時間あまり、私たちは供される餌を食し、照明を落とされ強制的に窓側のブラインドをおろさせられ睡眠することを強要される。そしてまた食し、眠りにつかされるというブロイラーのような時を過ごさなければならない。鶏と違うところは座席の前の小さなスクリーンで日本上映前の映画を楽しめるということだろう。

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