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第81話 静かなニュサンジョルジュの夜の街 [ニュイサンジョルジュ]

フェブレイさんが迎えにきてくれるまでの間、私はシャワーを浴び、奥さんは落ち着かないぐらい広いリビングのソファーでしばし仮眠をとった。
7時半ごろフェブレイ夫妻に連れられてダウンタウンのレストランへ徒歩で出発した。すでに太陽は沈み闇夜である。村にはほとんど人が歩いていない。昼間も誰も歩いていないのだから当たり前かもしれない。ダウンタウン、村の商店街に入ると少なからず人は歩いていた。数少ない村のレストランに向かう人たちだろう。商店街に入るとすぐにパン屋さんがあった。アンさんがここのパンはおいしいから明日の朝届けてあげるといってくれた。その他にも色とりどりのパッケージに納まったチョコレートが並ぶスイーツショップ、洋食器屋さんやみやげ物屋さんらしき店もある。しかし、当然すべての店はすでにクローズ。いくつかの店舗がショーウインドウの照明を点けて、「明日いらっしゃい」と誘っているようだった。明日の日中、店の開いている時代に一度訪れてみる価値はありそうである。
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予約してくれたレストランは商店街に入って2,3分のところにある“ル・カボット”という店。ニュイサンジョルジュのみならずブルゴーニュ地域全体でも最近評価の高まっているお店とのこと。実際、帰国後日本で購入したフランスを特集した雑誌にもそのレストランは紹介されていた。
座席数は30もないかもしれない。5,6卓がそこそこのスペースを確保しながら配されている。雰囲気も超一流といわれる、真っ白なテーブルクロスに皺ひとつみつけることすら困難な格式ばったフランス料理店とはおおいに異なる。現代風の、といっても日本の著名な空間デザイナーが好むような奇をてらった作りではなく、いたってシンプルで落ち着く店だった。若い店主が今夜ディナーを楽しむテーブルまで誘導する。案内されたテーブルにくるとフェブレイさんは直ぐに座らず私たちを立たせたまま何か考え込んでいる様子。座る位置で思案しているようだった。「まあ適当に」という座り方は日本からきた賓客に対して失礼にあたるということなのだろうか。壁を背にしてフェブレイさんと私の奥さんがならんで座り、その反対側に私はフェブレイさんと、アンさんは私の奥さんと対面するよう座るよう指示される。ゲスト夫婦が並んですわるのではなく、このように交互に対面して座ることが正式らしい。
当然店主とフェブレイさんは顔なじみのようで、席につくと何か早口のフランス語で話しはじめた。「久しぶりデンナあー、フェブレイはん。お仕事でっか、こちらにはいつ戻ってキハったん」「いやスイスでのんびりしてたかったんだけどさあ。こいつら、アジアの外れ、日本、知ってる、日本?中国より向こうの国、ちっちゃい国よ、あそこから呼びもしないのにくるっていうんで。しょうがないから、嫌がる奥さんつれて、わざわざ俺もスイスからでてきたんだわさ。生魚食うような味なんてわかんない野蛮な連中だから昨日の残りもんのいいとこみつくろってだしといてよ」「がってん承知のすけ」といったかいわないかは不明だが、しばし親しげに話していた。

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