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第107話 岐路を間違え大混乱 [パリ]

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パリ市街が近づき、今度は環状線に乗るべくどこかで本線を外れ右方向に向かわなくてはならない。奥さんの判断を仰いでも意味がない。自分でやらねばならない。トンネルに入る。はるか先は明るい。トンネルといっても山とか丘ではなく公園の下でも走っているのだろう。パリ北西部にある公園、ブローニュの森に違いない。だとすれば次の岐路を右方向に向かえば環状線に乗れる。岐路はトンネル内にあった。私はウインカーを点滅させ本線を外れた。しかし様子がおかしい。環状線にしては車線が少ない。前を走る車もない。バックミラーを見ても後続車のライトが見えない。するとすぐに明るくなった。外へ出たのだ。そして車の通りの少ない一般道に合流する。環状線への進入に失敗したことを悟った。
私は車をとめ昨日高速道路のサービスエリアで購入したパリ市街全図を広げる。自分のいる位置を確かめたかったのだ。パリ市街西部にいることは間違いない。ならばさっき走っていたトンネルはブローニュの森近くの地下に間違いなさそうだ。現在地のめぼしをつけた私は車をモンパルナスに向け再び始動させた。
エッフェル塔も見える、セーヌ川も見える、とにかくこの川を渡らねばならないのだが橋が見当たらない。いけどもいけども川に沿っているだけ。目的地である高層ビルモンパルナスタワーもまだ確認できていない。右往左往すること10分余り。隣の奥さんを見ていたら私がハンドルを回すたびに手にした地図を回している。そうしないと方向がわからなくなるというのである。頭の中で地図の中を走ることができないらしい。もし地図が車内に固定されていたら奥さんはハンドルをまわすたびに地図の周りを移動して車の走っている方向を把握するのだろう。余計複雑だと思うのだが、そうしないとわからないというのだから黙ってみているしかなかった。
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都内同様パリ市内の狭い道は一方通行が多い。迷っては右折し、次を左折しようと思ってもなかなか曲がれず、ついにはどこを走っているのだかわからなくなってしまう。ここまでたどり着いているのだから陽が暮れるまでには車を返却できることはできるだろう。でもモンパルナスの方向はわかってもそちらに車が向かっていない。出口のない迷路に入りこんでしまったようだ。私は最後の選択としてタクシーを捕まえ目的地に向かうしかないかと思った。そのタクシーに奥さんを人質として乗せ、私はタクシーの後を着いていこうという魂胆だ。タクシーにまかれたら一巻のおわりではあるが。

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