SSブログ

第149話 中国人が席巻する免税店 [パリ]

出発までまだまだ時間はあったが私たちは出国審査を行ないターミナル内で待つことにした。もうこれでホテルに忘れ物をしてきたことに気づいても戻ることはできない。私たちはすでに出国したことになるのだから。
30数年前に感動した宇宙ステーションのような動く歩道はいまだ健在。シャルルドゴール空港を利用するのが初めての奥さんは異次元の世界に来た人のようにキョロキョロしていた。どこかのんびり休めるカフェのような店はないかと歩いてみたがあっという間に行き止まりに。新しいターミナル2はデパートの特選フロアのような雰囲気なのだろうが、ターミナル1はなんとも寂しい、飲食店はもちろんのこと免税店の数も成田にも遠く及ばない。免税店などのショップが並ぶフロアを歩いて気がついたが、いたるところで中国語が聞こえてくる。ノートルダム寺院やシャンゼリゼでも中国人団体客に遭遇したことから推測するに、中国からパリを訪れる観光客の数は日本からの観光客をすでに大幅に上回っているのではなかろうか。そして彼らの声は異様にでかい。時に耳障りなほどである。中国語の発声法からそうなるのか、はたまた存在をアピールするためにそうなるのかはわからない。農協ツアーが話題となっていた時代の日本人も今の中国人観光客のようだったのだろうか。
IMG_5286.jpg
42035723_CXyXPMZHbNWYH4j0kuLJcA_c9b9BFpAA2NEkz6DNSGs-640x480.jpg
小銭を使い切るために私たちは免税店に入った。かつての海外土産の定番、ウイスキーや煙草もあるが、さすがフランス、ワインの品数も圧倒的に多い。棚ごとに生産地の異なるワインが陳列されている。私でも聞きなれた地名のワインがほとんどだ。奥に入り込むと温度湿度管理されたセラーがあり高額ワインが収められていた。そしてそこには中国人の先客が。なんとそのお相手をしている販売員は中国語を話していた。彼女の顔を見て納得。彼女はフランス人ではなく中国人だったのである。よほどここで高額ワインを購入していく中国人が多いのだろう。フェブレイさんが中国はこれから大変有望な市場になるといっていたことは間違いなさそうである。
免税店内を散策しているとニュイサンジョルジュで購入したマスタードや、オンフルールで買ったパテの缶詰類もある。ここで買えばよかったと思っても後の祭りだ。値段は多少高くても、免税店ではなく現地で買い、現地の粗末な袋に入っていることにお土産としての大きな意義があるのである。私は自分自身を納得させた。免税店で土産用の煙草やチョコレートなどを買い財布の中の小銭もあとほんの僅か。最後の最後に残った小銭をにぎりしめて立ち飲みスタンドに行き飲み物をオーダーした。フランスでの最後の晩餐、午餐ならぬ最後のティータイムである。あとは帰国便が待つサテライトへ移動し手荷物検査を受けるだけだ。

nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

第148話 土産の杖を梱包してくれるスタッフ [パリ]

provance_4-635ss.jpg
私たちは幸いにも追加料金の徴収は免れたようである。でも規定重量をオーバーしていることは明らかだ。とすると航空会社がサービスしてくれたのか、それとも女性スタッフには会社の置かれた厳しい状況など関係ないから細かいことは気にしないことにしているのか、追加料金を要求してからの私とのやりとりが面倒くさいのでフリーパスにしてくれたのかもしれない。とにかくスーツケースはこれで航空会社の手に渡ってしまった。もう手出しはできない。あとはスーツケースが無事に私たちと同じ便に積み込まれ成田空港で無事私たちの手元にもどってくることを祈るしかないのだ。
でもまだ問題は全て解決してはいない。最大の問題は私が手に持っている土産としてヴェズレーで購入した杖だ。杖の先は長丁場の巡礼にも耐えられるよう鋭利な金属が取り付けられている。私自身でその部分に紙を幾重にも巻き、他の人に危害を加えることがないようにはしてあるが、テロリストの手にかかれば立派な武器になることは明らか。「これは機内には持ち込めませんよね」と尋ねると「ええ」といって、彼女は私たちの後方に立っていた黒人男性スタッフを呼んだ。その杖を渡すと男性スタッフはすぐに理解したようで、カウンター内からダンボールを引っ張り出し、長方形のカートンを組み立て、杖をその中に入れたのである。もちろん杖を押し込んだだけでは中で杖が転がってしまうので、動かないように新聞紙などを丸めて押し込んだ。パターやゴルフクラブなどを買って帰る乗客のためにこうしたサイズのカートンがちゃんと用意されているのだろう。日本の航空会社ならではの肌理の細かさに感心する。女性スタッフが梱包の出来栄えをチェックしOKがでると男性スタッフはカウンターからまた離れていった。見事な分業システムである。女性スタッフによって到着地が印字されたシールを段ボールに貼られ、箱詰めされた杖はスーツケース同様コンベアに載りバックヤードに消えていった。成田で受け取って開けてみたらポッキリ折れていたなどということがないよう私は神に再度祈った。
しかし梱包してくれたあの男性職員、ブランド物でもない、ただの木の杖を梱包したのは初めてだったのではないだろうか。日本人は妙なものを買うと、今夜あたり家族に話すのかもしれない。

nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。