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第20話 なつかしのプリムローズヒル [ロンドン]

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リージェンツパークを抜け、右手にロンドン動物園の馬舎を見て、運河用の幅の極端に狭いナロウボートが往来するリージェント運河にかかる小さな橋を渡ると片側1車線の一般道にでる。その向こう側がプリムローズヒルのゲートだ。
プリムローズヒルは一面芝生かどうかわからないが短い草で覆われ、その一部に樹木やベンチが配された典型的なロンドンの公園である。ただ他の公園と異なるのはなだらかな勾配をもった丘があることだ。旧くはローリングストーンズがこの公園でジャケット撮影したこともあるとか。最近は近隣に住むヒューグラントなど著名人が訪れることから観光スポットのひとつにもなっているという。私は33年前にサトウ家にホームステイしているとき、学校帰りや休日など、それこそ週に2,3度、いやもっとかもしれないがこのプリムローズヒルを訪れ、ひなたぼっこをしたり読書をしたり、ときに寝転んでヒースロー空港方面に向かって上空を絶えまなく飛んでいくジェット機をながめ、あの飛行機には私宛の手紙が載っているだろうかなどと考えていたのである。
当時は公園にいても会う人はごく少数。近隣住人や彼らに飼われる犬たちの格好のお散歩コースだったに違いない。新婚旅行のときもこの公園に奥さんとともに訪れ、重たいビデオ機材を肩にかけ丘を登ったものだ。その後仕事でロンドンに来た際は、サトウ家は訪問してもさすが時間的にこの公園にくることはできなかった。つまり私にとって25年ぶりの訪問。ここ何年か、夜毎ロンドンに行きたい、プリムローズヒルからロンドンの街を眺めたいといっていた私にとって、プリムローズヒルに立つということは今回の旅行において最大の目的であるといっても過言ではないかもしれない。
公園に足を踏み入れてまず驚いたことは公園にいる人の多さである。昔はポツンポツンと人や犬が見える程度だったが今日は違う。日曜日だからというわけでもなさそうだ。丘の上にも人がみえるし、公園内のベンチには誰かが必ずすわっているようだった。芝生にはサッカーボールで遊ぶ少年たちもいる。観光地化は噂ではなく真実だった。しかし人が多いといっても昔に比べればということ。日比谷公園や新宿御苑の比ではない。私の見渡せる半径200メートル圏内に100人はいないだろう。
プリムローズヒルの最も高いところにあがるためには最初から整備された道をのぼるか、ブッシュで覆われたゆるやかなスロープを登る必要がある。33年前は存在しなかったが、長い歳月の間に訪問者が丘のてっぺんに行く最短距離を発見し、そこを多くの人が通っていくようになったのだろう、獣道のように草が踏みつけられてなくなり土が見えているところができていた。私たちもその獣道を通っててっぺんをめざした。振り向けば、手前にロンドン動物園やリージェンツパークの緑、その背後にポストオフィスタワー、セントポール寺院のドーム、今はロンドンアイなる大観覧車も見えるはずである。でも私はてっぺんにのぼるまでそれをじっと我慢した。てっぺんにつくとそこは平地で一面に芝が拡がっている。このまままっすぐに歩くとどこに行くのか私は知らない。私は33年前、同じ道をつかって丘の上に立ち、同じ道を使って帰っていっただけだったことに気がついた。

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第19話 リージェンツパークを通りプリムローズヒルへ [ロンドン]

オックスフォードサーカスからリージェンツパークの入口までは10分程度で到着した。通り沿いに商店はまったくなく、オフィスやホテル、それに高級アパルトメントばかりである。車の通りもほとんどなく、道路の中央に立って写真を撮ることも可能なほどだった。もちろんウイークデイではこうはいかないだろうが。かつて私はボンドストリートにある語学学校に通っていた。往きは地下鉄、帰りは地下鉄かバス、そしてときおりリージェンツパークを通って徒歩で帰ったものである。何ごともなければ東京ドーム40個分の広さがあるこの公園を突っ切れば40分もかからない道のりだったが、公園内には誘惑が多い。放し飼いの犬もいる。リスもいる。池もある。ベンチもいっぱいある。だから1時間ぐらいをかけて帰っていたものだ。今日もリージェンツパークの北の端に位置する思い出のプリムローズヒルでしばし休憩したとしてもまだまだ時間の余裕がある。私たちは色づき始めた木々が点在する広々とした公園をのんびりと歩いた。
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ロンドンの公園には芝生が一面に拡がっている。私たちの感覚からすればとても広いと思われるリージェンツパークもロンドンでは小さい部類。ロンドン南部にあるリッチモンドパークなどは300万坪の広さがあるのだ。日本ではかなり広いと感じられる100坪の土地を有する建売住宅なら3万棟建てられる。4人家族だとすれば12万人が生活できる勘定だ。これだけあればひとつの行政区になるだろう。かつては王室の鹿狩り場だったというから当然といえば当然の広さなのかもしれないが。土曜日ということもあり繁華街とは異なり家族連れやカップル、犬の散歩組みが結構目立つ。公園脇に設けられた何面もあるサッカーグラウンドでは、色とりどりのユニフォームを着た少年サッカーチームが練習をしている。いくつかの女子チームもみかけた。ロンドンの中心地にこれだけの整備されたグラウンドを確保し、子供たちが存分に練習できる環境が整っているのだから日本と力の格差が生じることも仕方ないことかもしれない。
一方散歩している犬たちはリードにつながれることなくご主人様の目の届く範囲で自由に公園内を走り回っている。他の犬がいたっておかまいなしだ。犬同士が喧嘩している光景などみたことがない。30年前ロンドン郊外の公園にいた犬が皆放し飼いで、その犬たちが日本で散歩中の犬のように決して取っ組み合いの争いなどしないことにとても衝撃を受けたが、時は経てもロンドン在住の犬たちの心はあいかわらず穏やかなようでなんだかほっとした。
30分以上をかけてのんびりとリージェンツパークを突っ切ると19世紀半ばにオープンにしたロンドン動物園が見えてきた。かつては入場料も安く、水曜日とか木曜日とか、とにかく週に1回無料という曜日があったので、私もしばしば学校帰りや、帰宅後一休みしてから見物にきたものである。当時日本で異常なほど人気があったパンダも、こちらでは数ある動物の一種類にすぎず特別扱いはされていなかった。私も初めて訪れたときは見過ごして素通りしたほどである。パンダそのものもぬいぐるみのように白と黒に綺麗に色分けされてはおらず汚れてほとんど全身真っ黒。普通の熊とかわらなかった記憶がある。ロンドン動物園には新婚旅行の時にも訪れた。当時大変重たい思いをして日本から持参したビデオにも獲物を追うように檻の中で無駄のない歩きをする狼の姿が残っている。そのロンドン動物園、近年は経営難から閉鎖の危機もあったがなんとか乗り切ったそうだ。でも入場料が3千円近くにはねあがってしまったのだが。そんなわけで今回私たちはパスさせてもらった。

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