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第28話 なつかしいチョークファーム駅 [ロンドン]

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サトウ家を後にした私たちは地下鉄チョークファーム駅まで歩いた。かつて毎日歩いた道、迷うはずがない。リージェンツパークロードにでてからプリムローズとは逆方向、つまり右手に行く。4,50メートル歩いていくと道幅は広いが車は通ることのできない橋にでる。その橋を渡ればチョークファーム駅まで1分とかからない。サトウ家から駅まで5分も要しないのだから、下宿先としては最高のアクセスだ。今日サトウ家に来たときのように、リージェントパークを突っ切れば徒歩ですら中心部にもいけるわけだから。ところで駅に通じる歩行者専用陸橋には3-4メートルはある塀があり橋の下が見えない。かつて私は下に何があるのかまったく関心がなかったのだが、ある日LONDON AZというロンドンの詳細地図を見て初めて知った。橋の下には地下鉄ではなく英国鉄道の列車が走っていたのだ。ユーストン駅からでた英国北部に向かう列車が走っていることになる。駅を出発して間もないので、列車の走行音も聞こえてこなかったのだろう。プリムローズ駅周辺は何もかわっていなかった。駅が高層の商業ビルになるわけもないのであたりまえといえばあたりまえだが、30年以上街並みが大きく変わっていないということは凄いことだと思う。駅入口のすぐ横には新聞・雑誌、菓子類や飲料、たばこなどを売る、今でいうコンビニのような小さな店があったが、その店もまだ健在だった。私もかつて学校帰りに雑誌やマーブルチョコなどを買った記憶がある。
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お馴染みのロンドン地下鉄マークが掲げられた入口から構内へ。といっても切符売場を含めても教室より小さいかもしれないが。ゲートでパスを通してから鉄格子のシャッターがついたリフト(エレベーター)で地下ホームまで降りていく。現代的な音も振動も少ないエレベーターに交換されているかと思ったら、鉄格子リフトも新しくなってはいなかった。何から何まで昔のままだ。体にかなりの衝撃を受けて地下で停まるとロンドン地下鉄を感じる何ともいえない生暖かく埃っぽい空気を頬に感じる。電車が駅に近づくにつれて、走行音がけたたましくホームに轟き、私の全身に生暖かい空気が激しく当たっていくのだ。でも決して嫌いではない。その瞬間自分が今間違いなくロンドンにいることを感じ取れるのだから。

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第27話 See You Again [ロンドン]

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話が33年前の話におよんだときのこと。私はこの周囲も随分変貌したことに驚いたと話した。そしてこの先にあった食料品店、インド人夫婦が経営していたあの店はどうなりましたかとたずねると、お二人が口をそろえてあの店はずい分と前になくなったという。しばし間をおいてパトリシアさんが私に疑問を投げかけてきた、「あなたは食事つきでここにいたんじゃなかったかしら?」というのである。余計なことを口走ってしまったと後悔しても時は戻らない。私は時々ペプシなどの飲み物を買いにいっていたとごまかした。お宅の夕食の量が少なかったから仕方なく通っていたとは口が裂けてもいえない。
会話をする中で知ったことだが、サトウ家では私と前後して50人あまりの学生さんが滞在していたとのこと。もちろん寝るだけのため、下宿先として利用していた学生もいただろうし、私のように完全なホームステイとして家族とどっぷり生活をともにした人もいただろう。しかし、今もってカードや手紙などによって交流がある人は私と、ドイツ人の二人だけだという。決して居心地が悪かったわけでもないだろうが、一宿一飯の恩義という言葉が西洋にはないのかもしれない。でも私がサトウ家でお世話になった日本人第1号ではないと当時きいていたのだが。
時計を見ると2時を過ぎていた。思い出話を含め双方話は尽きないが私たちも短いロンドンの滞在を有意義に過ごさなくてはならない。今日のノルマはこれからナショナルギャラリーに行くこと。もちろん1時間や2時間で観て回れるわけもないが、今日を逃すと時間がない。明日もテートモダンに行きたいし。私たちはおいとますることにした。これまで知らなかったメイルアドレスを交換し、スポールのマグカップの入った紙袋を忘れることなく私たちは席を立った。メイルアドレスを知ったということは、今後はクリスマスカードだけではすまない。近況報告を随時していかなくてはならないだろう。いかに平易な単語で自分の気持ちを伝えるか、英作文を必死に構成する自分を想像すると少しばかり気が重たくなった。玄関に行く狭い廊下でハグをして外に出る。ロンドンらしからぬ青空は広がっていた。そして玄関前の階段で記念撮影。パトリシアさんはご主人にぴったりと寄り添う。近いうちにまたお会いしましょう。お互いにそうはいったものも私たちがロンドンを訪れない限り会うことはないだろう。絶対近いうちにロンドンに帰ってきたい。私のロンドン行きたい熱が再び大きく燃え上がった瞬間である。

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