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第30話 トイレをさがしてナショナルギャラリーへ [ロンドン]

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ひとやすみして喉をうるおした後、ネルソン提督の像や、三越の入口に鎮座するライオンのモデルとなった巨大ライオン像があるトラファルガー広場に向かって歩く。途中紅茶専門店で初の土産物として小さな小さな紅茶詰め合わせを購入した。店を出ると私たち二人は何かを飲んだ結果として必ずやってくる人体の摂理。尿意を感じていた。しかしこの辺りには大きな商業施設はない。この界隈で公衆トイレを利用した記憶もない。だがロンドンには便利な施設が点在している。入場料、入館料無料の美術館や博物館だ。そこには必ずトイレがある。そしてすぐそばまできているトラファルガー広場にはルーヴルやメトロポリタンに大きさで及ばないものの世界的に知られるナショナルギャラリーがある。イタリアやオランダ絵画を鑑賞するだけが美術館の役割ではないのだ。
屈強なガードマンが仁王立ちする正面から入館する。もちろん窓口で入場チケットを購入する必要もない。ただなのだから。寄付金を募る箱は置いてあるが任意だ。私たちはその箱に気がつかないことにしてガードマンの横をすり抜ける。これまでディズニーランドに隣接するホテルをはじめ、台北市内、ロサンゼルス空港、ボストン空港などワールドワイドに不審者扱いされた私だが、ナショナルギャラリーのガードマンに呼び止められることはなかった。私たちはすぐに館内案内図を見る。どのエリアから鑑賞しようかと策を練るわけではない。まずはトイレの位置を知りたかったのである。
目的地は地下にあった。掃除の行き届いた綺麗なトイレで任務を終えた私たちは第二の目的である美術鑑賞のために1階にもどり時間の許す限り館内を歩くことにしたのである。日本にいたときも年に1,2度は美術館に足を運んでいたが、日本で催される企画展は入館料も高いが入館者も多く、時には絵を観にいったのか人の頭を観にいったのかわからないこともあった。しかし西洋の美術館は違う。広々しているし無料だし、好きな絵画をソファーに腰を下ろして何時間でも鑑賞することが可能なのだから。風景画でも人物を描いたものでもどんな絵でも自分の感覚にあったものは受け入れる私だが、たったひとつどうにも好んで鑑賞しようとは思わないジャンルがあった。それが宗教画である。案の定、宗教画が掲げられたエリアにきたら気持ちが悪くなり、絵を鑑賞するためではなく気分の悪さを解消するためにソファーのお世話になってしまったのである。しばらく休息して元の体調になった私は、その後しばらく宗教画以外の作品に触れた後、ナショナルギャラリーを後にした。

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第29話 昼下がりのコベントガーデン [ロンドン]

地下鉄ノーザンラインを乗り継いでレスタースクエア駅で下車する。乗車時間は乗り換え時間をいれても15分とはかかっていない。30年以上経たとはいえ、さすがに1年近く住んでいてほぼ毎日利用していたので、案内板を見上げたりガイドブックを開いたりすることなく移動できた。
地上に出てからわき道を通りコベントガーデン方面へ。この辺りもよくきたところなので迷うことなどない。途中インド料理店があったのでメニューをチェックする。明日の晩、つまりロンドン最終日のディナーはカレーと決めていたのである。インドが植民地であったからだろうロンドンには昔から美味しい本格的なインド料理店が多い。30年前にもインド料理店に連れていってもらったことがあるが、ビールを頼むときには冷えたビールをとあえて告げないとその辺に置いてある生ぬるいビールを持ってこられると同行者が言っていたことを思い出した。辛いカレーにはぎんぎんに冷えたビールでなければいけない。とりあえず値段だけをチェックしてコベントガーデンへ。ここにきたのには目的がある。ミニカーショップを訪れるのだ。奥さんにはそのことは伝えていない。たまたま店があったという筋書きで店に立ち寄り物色する予定だった。店はすぐにみつかった。住所を前日暗記していたのでたやすいことだ。ロンドンは通りの名前と番地を覚えるだけだから簡単なのだ。その店にはプラモデルなどは売っていない。道路沿いのショーウインドウにも様々なサイズのミニカーが陳列されている。店内に入ると子供の姿は見当たらない。いい大人ばかりだ。レジカウンターのいた店員が日本からきたカモにチラッと視線を向ける。店内はミニカーで溢れていてどこからみていいのかもわからない。視力の良くない私は少しでも鮮明に見えるようにと右手ひと指し指を目じりにあてて顔の外側に引っ張る。度の強いめがねをかければ済むことなのだが。そんな私の様子を他のお客が異様な目でみていることに気づいたが関係ない。奥さんもつまらなそうにそれほど広くはない店内を散策しているようだった。結局何ひとつ購入することなくその店をでた。事前調査で訪問すべきミニカーショップはパリにもある。あわててロンドンで買うこともないと思ったからだ。
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集中してモノを探していたからだろうか、店内の熱気の影響からか喉の渇きをおぼえた。奥さんも同様の様子なので通り沿いの小さなカフェスタンド、ロンドンだからティースタンドだろうか。とにかく軽食と飲み物を提供する小さな店に入る。店内にもテーブルと椅子はあったが、少しでも涼みたい心境だったので私たちは店に面する決して広くはない舗道に置かれたテーブル席を利用することにした。
久しぶりに飲むコーラが美味しい。私たちの横を時折ダブルデッカーやロンドンタクシーが通る。舗道を歩く人たちも店先でくつろぐ私たちに目を向けることはない。まあ別に気ぐるみをきているわけでもないただの東洋人が座っているだけだから注目することなくて当然なのだが。

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