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第38話 高速なのか一般道なのかわからないM40 [ロンドン]

車の後部がスロープを脱したと同時に私はハンドルを左に切る。無事一般道に合流はできた。しかし、ギアチェンジという作法をここ数年忘れていたので、ローのままアクセルを踏み込んでしまい、エンジンの回転が異様にあがり周辺の歩行者もびっくり。停車発進を何度か繰り返すたびにそんな騒音をロンドンの街にまきちらしてしまった。
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昔取った杵柄か、市内をほんの数分走ったらマニュアル車の操作には慣れたような気がする。あとはオックスフォード方面に伸びる高速道路M40への進入を無事果たせば今日のツアーの難関は90%クリアしたといえる。ハーツの事務所からそれほど遠くないところにM40への進入口があるはず。私はインターネットからひっぱりだした地図を見つつ進入口方面に車を走らせた。片側三車線ある一方通行の道路を走行中のこと、大きな幹線道路にぶつかったらそこを左折しなければならないことはわかっていたので私は左車線を走行していた。しばらくすると左側車線前方にロンドン名物ダブルデッカー、二階建路線バスを発見。バスは停留所に停車するようで左ウインカーを点滅させた。私はバスを追い越そうと中央車線にでる。となんとすぐ前に幹線道路が。今私が走行している中央車線は直進専用レーン。左折するには左車線に移らなければいけない。前方の信号は青だ。左側へ車線変更しようとサイドミラーを見ると、なんと停留所に止まっているはずのバスが走っている。バスのウインカーはフェイントだったのか。私はアクセルを踏み込み直進し、交差点に入るなりハンドルを思い切り左に切り中央車線から一気に左折したのだ。フォードフォーカスはタイヤを鳴らしながらもスピンすることなく、反対車線に飛び込むことなく片側4車線の一番中央寄りの車線に進入できたのである。バスも左折したようだが、無謀なツーリストの運転にクラクションを鳴らして警告することもなかった。私は交差点に周囲に警察官がいないかったことだけを祈った。幸い英国のパトカー独特のけたたましサイレンは聴こえてこなかったので私は胸をなでおろしたのである。
交通ルールを無視したことが思いもよらぬ幸運を私に引き寄せてくれた。中央車線を百メートルも走らないうちに中央寄り2車線は緩やかなスロープにさしかかったのだ。最も左側とその隣の車線はスロープになることなく直進。つまり中央寄り2車線は緩やかなスロープを経て交差点を跨ぐことになるのだ。それは自動的にM40につながることを意味していた。私の記憶と日本での予習が正しければこのまま高架が続きロンドン市街地から離れることに違いない。交通違反は犯したものの私は一度も道に迷うことなく目的地に向かう道に合流できたのだ。私は珍しくフロントガラスいっぱいに青空の広がるM40をコッツウオルズに向けてアクセルを力強く踏んだのである。

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第37話 いざマニュアル車で市内へ [ロンドン]

カウンターでキーを渡され、車が置いてある場所、ガソリン注入口の位置とディーゼル車ではないことの念をおされただけで、誰も車のところまでついてきてはくれない。あとはご勝手にどうそということなのだろう。今日明日の二日間私たちの命を預ける車、シルバーのフォードフォーカス。事務所裏手にある半地下のハーツ専用駐車場に停まっていた。日本で私が乗っているマーチをちょっとサイズアップした程度の大きさで扱いも楽そうだ。マニュアルシフトということを考えなければの話だが。駐車場はつめれば30台以上の車が停められるだろうが、そのときはフォーカス以外に2、3台があるだけ。それも何かの修理中のようだった。
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とりあえずハッチバックを開けてスーツケースを積み込む。後部座席を利用することなくスーツケースは収納された。さあいよいよ出発である。エンジンをかける前にシートに座りハンドル周りやインパネのスイッチ類を確認する。走行距離は1万キロにも達していない。新車といってもいいだろう。右ハンドルだし、操作方法に大差はないに違いない。英国と日本の違いこそあれ同じ四輪の車である。恐れることは何もない。私は自分にいいきかせた。スターターを回すと国産車にないお腹に多少響く心地よいエンジン音が伝わってくる。ギアをローに入れゆっくりとクラッチを離し、アクセルを踏み込む。プスンプスン。車は少し前のめりになるように停まった。数年ぶりのマニュアル車操作である。エンストも仕方あるまい。助手席の奥さんの表情が不安そうだった。運転する私も不安なのだから当たり前である。
なんとかクラッチとアクセルの感覚をつかみ私はロンドン市街地デビューすることにした。駐車場内を低速で数十メートル走ると前にゲートがある。バーがおりていて停まらざるを得ない。せっかく動き出したというのにここでとまれというのか。私はギアをセカンドに入れることなくクラッチを踏み、惰力でゲートまで車を移動させた。ゲートにつくと、ゲート横の建物からネクタイをしめたジェントルマンが出てきた。「契約書をみせてください」という。大胆にも勝手にここから車を盗み出す輩でもいるのだろうか。
契約書を確認すると前のバーがあがった。私は再びクラッチとアクセルペダルを巧みに操り発進させた。すると前方にあまり緩やかとはいえないスロープが。半地下から地上に出るにはどこかで登りを体験しなければならないことはわかるがいきなり出現するとは神様も意地が悪い。まして登りきったら道路のはずである。一旦停車しないわけにはいかない。つまり坂道発進をしなくてはならないはずだ。緊張でハンドルを握る手が汗ばむ。坂はアクセルを踏み込めばなんなく登る。登りきったところに歩道がある。その向こうが車道だ。大通りを折れた脇道ではあるが通行量は結構ある。私は歩道の手前、半地下から地上にでる寸前で車を停めた。左右を見て人も車もこないことを確認した後に道路に出ることにした。車の後部はまだ坂道にある。これまでのようにアクセルを緩やかに踏んだのでは車は動かない。多少強めにアクセルを踏み込む。と同時にクラッチを緩める。エンジンの回転があがる。でも車は動かない。さらにアクセルを踏み込む。このまま思い切りアクセルを踏めば車は瞬時に向こう側の建物に突っ込むかもしれない。はたまた宙に舞って飛び立つかもしれなかった。
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