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第86話 マルシェ [ニュイサンジョルジュ]

ワインショップをでてさらに進むと通行量もかなりある道路にでた。どこにあるかも定かでないフェブレイ社を捜し求めていた昨日、この付近も通過した記憶がある。通りのむこうに周囲に小型トラックやライトバンの停まった建物がある。市場に違いない。ブルゴーニュの庶民がいったいどんな食材をどのような値段で手に入れているのかは興味深い。私たちは迷わず通りを渡った。
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市場の中に入るとすでに大半の店は片付けおわり、残って営業している店も撤収作業をしながら、飛び込んでくる獲物を待ち構えているようだった。市場といっても鎌倉駅近くの青果市場とは一味違う。野菜果物を販売している店もあるが、スーパーにあるような、中のみえる大型冷蔵ケースを持ち込んでいる肉やさんや、さすがおフランス、日本の高級スーパー以上の品種を取り揃えチーズを売っている店もある。チーズに日本と価格差があることは一目瞭然だった。ここにはこの周辺で生活する人しかこないはずだ。ツーリスト価格にしていては商売にならないのである。チーズは日本までお持ち帰りできないし、VIPアパルトメントの冷蔵庫に何種類かのチーズがあったことも確認済みだから用はない。
私たちはイチゴふた箱だけを平台に残してほぼ帰り支度を終えた八百屋さんの前で立ち止まった。冷蔵庫に果物はなかった。今夜就寝前にイチゴが食べたい。あまれば明日の朝、イチゴジュースにすることも可能だ。最後に残っているイチゴだからまけてくれるに違いないと考えた奥さんは、親父に全部買うからいくらにしてくれるかフランス語で尋ねた。全部買ってもこの値段。びたイチもん、いやびたイチユーロまけないという。親父は強気だ。フランス語が流暢に話せれば、「今日この市場に来る人はもういないだろう。明日になったらこのイチゴは店頭にはだせまい。これを持ち帰ってすてるか自分の腹におさめるのと、半値にしてでも売って現金化するのとどっちがいい」と、いいたいところだが、私はフランス語が話せない、奥さんもそこまでは交渉できない。ここでイチゴを買わないと一生口にすることがないかもしれないというネガティブな考えに負けた私たちは、結局提示価格のままイチゴを買ったのである。フランスの農民は強いと実感した。
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市場をでて再びニュイサンジョルジュ銀座商店街へ。肉屋では今夜のディナーの惣菜になるようなパテなどを購入した。ご本人の了承をえて何年か前までは看板娘だったに違いない店員さんの姿も撮影。日本の商店街の肉屋ではできない芸当である。食器屋さんでは多分made in 東洋であろう猫の形をした箸置き(こちらではナイフフォーク置きというべきか)を購入した。また不気味な子供の頭と大きなしらみの模型がディスプレイされたショーウインドウを発見。
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薬局だった。なんでもフランスでは今でも季節によって子供たちの間にしらみが流行るとか。しらみの模型は感染防止薬品メーカーの販促用品なのだろう。フランスにしらみとは、世の中まだまだ知らないことがいっぱいあるものだ。すでにランチタイムも終盤。私たちは空腹に気づき、朝食の残りの食材で腹ごしらえするため一旦アパルトメントに戻った。

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第85話 いざ真昼のニュサンジョルジュ商店街へ [ニュイサンジョルジュ]

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ゆったりとした朝食を満喫した後、私たちはニュイサンジョルジュ銀座を散策に出かけた。昨夜訪れたレストランのある商店街である。昨日同様、VIPアパルトメントの近くで通行人に出くわすことはなかったが、各店がオープンした直後の商店街にはすでに買い物客がいた。今朝アンさんが購入したパン屋さんの店内は昼食、あるいは今夜のパンを求める客で賑わっている。何を買うでもなくショーウインドウを覗き込みながら石畳の商店街を歩き続けると婦人向け洋服屋さんの前の街路樹にリードを結ばれ、シェパードがおとなしく座って店内の様子を伺っている。ご主人様が買い物を終えて帰ってくるのを待っているのだろう。商店街の中ごろには小さな教会もあった。その前のちょっとした広場には水のみ場が。人のためか、犬のためか。時計の針の進むスピードが日本とはまったく異なる世界に私たちは今いるのだ。すると教会の鐘の音が商店街に響きわたる。腕時計に目をやると正午だ。商店街の買い物客にお昼を告げる鐘なのだろうか。
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商店街を抜けきるとそこはニュイサンジョルジュ駅だった。日に何本の列車が通るのかはわからない。レンタカーを利用しなければ、リヨンからここまで各駅停車を利用しなくていけなかったのか。もしくは昨日車で迷い込んだディジョンまでまずTGVか特急列車に乗って行き、普通列車に乗り換えて少し戻ってくるのだろうか。いずれにしても大きなスーツケース2個を引きずって、乗り換えありの列車の旅はしんどそうである。
商店街をとりあえず制覇した私たちはUターンして今歩いてきた道を戻ることにした。途中わき道にそれると大きなワインショップがあった。私はセギノールまではいかずとも、ブルゴーニュにきた記念に、自分へのお土産として気に入ったソムリエナイフが見つかったら買おうと決めていた。店内に入ると入り口付近には木箱に無造作に積み置かれた廉価版のワイン。店内の壁際のセラーには高級ワインが配されている。店のスタッフがいるにはいるが、「へいいらっしゃい。どんなワインをお探しで。これなんてお買い得でっせ」などとすりよってこない。入店したときにボンジュールと声をかけられただけで、一定の距離をおいて私たちを観察しているようである。ワインの産地として名の知れたでニュイサンジョルジュだから日本人の来店も少なからずいるはず。日本人受けしようと思って「シャチョウサン」と声をかけてこないところも真剣に商売をしているようで好感がもてる。
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壁際にならぶ畑名のついた高級ワインは日本の価格と比べて驚くほど安いというわけでもなかった。予想以上に価格差がない。フランス国内でも値上がりしているということなのか。来店客の大半が観光客なので、高めの価格設定をしているのだろうか。だいたい高級レストランで食事をするときをのぞいて、一般的なフランス人が高級ワインを躊躇なく購入し、抜栓しているとは思えない。ソムリエナイフもいくつかおいてあったが、ロフトや東急ハンズあたりで見かけるものと変わらずインパクトがない。私はソムリエ世界一になった田崎真也とかつて一緒に仕事をしていたことがあると店主に自慢することもなく店をあとにした。

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