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第71話 村はずれの自動車修理工場でようやく目的地を確認 [ニュイサンジョルジュ]

ウインカーを点滅させて広い敷地のディーラーに入っていく。敷地内には数台のプジョーが置いてあったが輝きもなく新車ではなさそうだ。修理待ちの車なのだろうか。日本にあるカーディーラーなら車が入ってきたことを確認すれば誰かがすっ飛んできて駐車場所を指示してくれるだろうが、ここはフランス。建物の中にいるおっさんはこちらの存在に気づいてはいるものの建物から出てくる気配はない。プジョーのディーラーになんでオペルが?といぶかっているのかもしれない。まして運転しているのは謎の東洋人カップルである。手元で拳銃に弾をつめているのかもしれない。私は誰の邪魔にもならないので建物の正面に車を停めた。ワイン愛好家の間では知られた村とはいえ、ブルゴーニュにある小さな村のディーラーの親父が英語を話すとは思えない。私は奥さんにフェブレイ社の所在をききだすように指示した。
私たちが車からおりるとようやく親父が奥から出てきた。「手をあげろ」とフランス語で言われても多分私たちは理解できない。親父の忠告を無視して構わず歩み寄ったところを撃たれるかもしれない。でも親父は拳銃をかまえてはいない。軽く挨拶した後、奥さんが親父にたずねた。もしフェブレイという名が日本の鈴木や山本と同じで、電話帳の1ページうめつくすほど存在するかもしれないと考え、私はジョセフフェブレーと正式名称を伝えた。
親父はその場所を知っているようで、私たちにそこへの行き方を説明し始めた。これでフェブレイさんに再会することができる。私は安堵したが、問題は奥さんが親父の説明を和訳できるかにかかっていることに気づいた。やりとりをきいているとそれほど複雑ではなさそうだ。親父の説明を奥さんが復唱して確認しているから問題ないだろう。そう思うしかなかった。最初の信号を左に折れてしばらく走ると左手に小さな橋がある。そこをわたればFAIVELEYの文字が見えるとのことだった。今現在、親父の他に店内には従業員がいないようなので、プジョーを買うからそこまで先導しろともいえない。私たちは満面の笑顔で感謝の意を表しディーラーから再び国道に入った。
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最初の信号を左折すると正面に教会の尖塔が見えた。さきほどこの村の手前のぶどう畑からこの村を見たときに目立っていた教会であろう。その教会のすぐ手前に小さな橋があった。ウインカーを点滅させてゆっくりと左折する。緩い上り坂を道なりに数十メートル走ると左手の煉瓦を積み上げた湾曲した塀に描かれた大きなFAIVELEYの文字を見つけた。リヨンのホテルをチェックアウトしてから7時間以上を費やしてようやく、そして無事に到着したのである。

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第70話 やっとの思いでニュイサンジョルジュ到着 [ニュイサンジョルジュ]

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フロントガラスの端から端までブドウ畑が拡がる。コートドールの中腹を走っているとやがて緩やかな下り坂となり、その下り坂の先に集落が見えた。ランドマークであろう教会の尖塔も見える。親切なおばさんと別れてから通り過ぎてきたワインの名称としてききなれた村々のように車であっという間にパスしてしまうほど小さな集落ではない。村というより町と呼ぶにふさわしいひろがりがある。
ニュサンジョルジュだと直感した。直感するまでもなくブージョの次がニュサンジョルジュであることは地図でも明らかなのである。ほとんど車が通らないコートドール中腹の道から、収穫されたばかりのブドウを積んだトラック、瓶詰めされたワインを満載したトレーラー、ワイナリーを見学するツーリストを乗せているであろう観光バスなどが頻繁に通過する74号線に出た。74号線はニュイサンジョルジュ村を縦断しているようである。途中いくつか信号のある交差点にも出くわしたが、大きな問題に気づいてしまった。私はフェブレイさんの会社がどこにあるのか知らないということである。住所も知らない。手紙は彼の自宅に送っていたし、会社宛に送っていたときも日本でいう私書箱のようなものらしく、数字の羅列だけだったのだ。ホームページも見ていたが住所は記載されていない。ニュイサンジョルジュを示す郵便番号のようなものだけだった。日本の地方にある小さな市や町よりも狭いので、社名さえ記されていれば郵便物は届くのだろう。予定ではニュイサンジョルジュ近くに到着したら電話をして、どのように走れば会社に到着するのか訪ねることになっていたが、予定は大きく狂った。電話が通じなかったのだからいまだにどこをどういけばいいのかわからない状態である。いつしか74号線を走る車のフロントガラスから見える光景は、再び左右どちらもぶどう畑という状況になっていた。FAIVELEYの看板を私も奥さんも必死に見つけようとしたが、見つけ出す前に村を通り過ぎてしまったようである。
周囲はまたまた一面のブドウ畑になってしまった。Uターンして再度チャレンジするしかない。それほど大きくない村とはいっても通り過ぎた間には信号もいくつかあったし路地もあった。ダウンタウンと思われる地域もあった。東京のようなビルはないからFAIVELEYの文字がおどるネオンサインが屋上にあるわけもない。これは誰かに尋ねるしかない。車をブドウ畑脇の空き地に突っ込みユーターンした私は、村の外れにあったプジョーの看板を見逃していなかった。ディーラー兼修理工場に違いない。あそこの職人なら世界に知れた「フェブレイ」ブランドを知らないわけがないと勝手に思い込んだ。というより思い込むよりなかったというべきか。

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