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第135話 時を経ても変わらない丘からの眺め [パリ]

DSC01519.JPGベラールさんはサクレクール寺院に向かう前に私たちを近くの葡萄畑に案内してくれるという。ル・クロ・モンマルトルというワインを年間1000本製造しているだけの小さな畑だが、味は確かなようでこれまでに賞を獲ったこともあるとか。パリ18区によって運営されるいわば公共の畑から収穫された葡萄で作られたワインの収益はすべて近くの社会福祉施設に寄付されるという。日本とフランスの文化の違いをあらためて知らされた。私たちもパリで社会貢献したかったが、年間1000本しか製造されないのではもちろん私たちが入手できるはずもない。
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辿り着いたモンマルトルの丘の頂点に建つサクレクール寺院前からの眺望は期待通りに素晴らしかった。ロンドンのプリムローズヒルから見るロンドンの風景は高層ビルの出現によって様変わりしていたが、何十年か前にみた景色とほとんどというかまったく変わっていないところがパリの魅力かもしれない。サクレクール寺院で手を合わせ、世界平和を祈願した後、似顔絵を描く画家の卵、画家崩れ、単なる絵の上手な商売人たちや、歩行者からのおひねり目当てに芸を披露する大道芸人を冷やかしながら車に戻った。モンマルトルからそのままホテルに戻るのかと思っていたら、ベラールさんは少しばかり遠回りしてコンコルド広場、エリゼ宮、日本大使館前を経由してくれた。さすがにここには昨日もおとといもきたよとはいえず、助手席で初めて見るかのように私はキョロキョロしていたのである。エリゼ宮を警護する警官に向かって何か投げつてもいいかとベラールさんに言うと、さすがに「ノン」という答えが返ってきた。
4時前にホテルに到着。私たちはコンサート鑑賞用衣装に着替えるため一旦別れた。朝から半日、混雑するパリ市内を運転し、ベラールさんもかなり疲れているに違いない。それでも再び6時には迎えにきてくれるという。ベラール夫妻にとってもタクシーで劇場まで行った方が楽だとは思うのだが。ホスト、ホステスとして私たちを徹底的にもてなしてくれる姿には本当に感謝、感激である。

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第134話 モンマルトルの丘 車停められません! [パリ]

ポンピドーセンター内で昼食を終えて外に出るとベラールさんが私たちから少し離れたところで電話をかけはじめた。館内でも時折携帯のチェックをしていたから外に出て初めて連絡をとったのだろう。フランス語で話しているのでもちろん内容はわからないが、友人との他愛もない会話ではなさそうである。かなりシリアスな表情をしている。ビジネス上のトラブルかもしれない。忙しい最中、丸一日時間をとらせてしまったことを申し訳なく思った。電話を切ると次はどこに行きたいかと尋ねてきた。さすがにパリから少しばかり離れた「ヴェルサイユ宮殿」とはいえない。半日仕事になってしまうだろうから。結局眺めの良いモンマルトルの丘に向かうこととなった。天気も良いのでパリの街が綺麗に望めるに違いない。
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夜は歓楽街となるピカール界隈を抜け車はモンマルトルの丘を登り始めた。この辺りは特に道幅が狭い。しかし両側にはぎっしりと車が停まっている。駐車している車の脇を歩く太陽の下では違和感のあるけばけばしい女性を見つけては「まだ仕事の時間ではないのに」とベラールさんがいう。丘を登りつめたものの問題は駐車できるかである。運良くサクレクール寺院などの見物を終えて駐車スペースを離れる車に出くわせばいいがそうはうまくいかない。ありとあらゆる路地に入り込み隙間を見つけようとするが見つからない。ベラールさんの顔にも疲れがみえる。「夜のコンサートもあるし、一旦ホテルに戻りましょう」というがベラールさんはあきらめない。もう二度とパリの土を踏めないかもしれない日本から珍客をなんとしてもパリを一望できるモンマルトルに連れて行こうというのだろうか。
20分ぐらいは丘の周辺を彷徨っただろうか。ようやくミニが収まる駐車スペースが見つかった。駐車した場所から少し先にある券売機でパーキングチケットを購入。車のダッシュボード上に放り込む。これで1時間は堂々と車を停められるのだ。私たち3人はゆっくりとサクレクール寺院に向かって歩き出した。石畳の道は当然くるまの乗り心地も悪いが歩くのもまた厄介である。しかし靴底を通しての石の感触とともに先人たちの会話が聞こえてくるようで、アスファルトやコンクリートの舗道上を歩くよりは一歩に重みを感じた。

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