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第113話 ソルボンヌ大学前のホテル [パリ]

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ホテルはパリ第一大学(ソルボンヌ)入口の直ぐ横にあった。ホテルの前にあるソルボンヌ広場のベンチでは学生たちが本を広げて勉学にいそしんでいる。気のせいか全員賢そうだ。実際頭脳明晰なのだろうが。少なくとも今夜雀荘に行く相手を見つけるべく、うろついている輩はいないようだ。
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ベラールさんが実際に室内を含めホテル内をチェックした上で私たちに推薦しただけのことはある。ロビー全体がワンワンとして騒がしさすら感じられるアメリカ系の大型ホテルと異なり、こじんまりしていて静か、とにかく落ち着く。二人がスーツケースを持って乗り込んだらいっぱいになる小さな小さなエレベーターに乗って部屋へ向かう。大学前の広場に面した部屋はアメリカ系のホテルと違い広いとはいえない。スーツケースを2個拡げたら歩くスペースがなくなりそうだ。しかし縦長の窓が二つあり部屋は明るい。眼下を学生たちが行きかい右手にはソルボンヌ大学の入口があり警備員のチェックを受けた学生たちが学内に吸い込まれている。
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ふと室内のテーブルをみると美しいブーケとフルーツ、そしてシャンパンクーラーにはヴーヴクリコのハーフサイズが冷えていた。テーブルにカードが置かれている。案の定、ベラールさん夫妻からのウエルカムドリンクのプレゼントだった。私たちはパリに向かう高速道路のサービスエリアでコーヒーを飲んで以来、何も飲んでおらず、喉がカラカラに渇いていることに気づいた。到着時間がもう少し早いと思ったのだろう。すでに氷は全て溶けてしまっているが充分に冷えたシャンパンを開栓し、喉を潤すことにした。道に迷って遅れたのはこちらの責任だ。もっとギンギンに冷えたものと取り替えろとは言えないのだから。
あっという間にハーフサイズのボトルが空になった。私たちにしてみれば三ツ矢サイダーを飲んでいるようなものなのだから当然だろう。シャンパンを飲みながら奥さんはパリ在住の友人睦美に電話をかけ無事パリ到着を告げた。彼女は夕飯時にホテルを訪れ、ディナーをともに食べることになった。お好みの店に案内してくれるそうである。電話を切った後にスーツケースをあけベラールさんご夫妻へのお土産をとりだした。日本出発時からスーツケースの重量増加の要因であった「日本の色(カラー)」を紹介する総ページカラー刷りの大型本がようやく手元から離れていく。私たちは明日の正式晩餐会を待たず、とりあえず手土産を持ってベラール邸を訪れることにしたのである。

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第112話 ようやく一安心 タクシーでホテルへ [パリ]

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運良くタクシーが前を通ってくれればいいが待っていても埒が明かない。私は奥さんと荷物を残してこのビル内にあるホテルの入口に向かった。ホテル前なら客待ちのタクシーが列をなしているはずだと思ったからだ。しかし、ホテル正面入口に着く前にベンツのワゴンタクシーが見つかった。丁度客を降ろしているところだった。私は客が支払いを終えると同時にドライバーに近寄り、あそこに荷物があるので車を移動させて欲しいといった。少しアフリカの血が入ったフランス人と思われる30歳前後のドライバーは愛想もよく、その場で乗りなさいという。ドライバーが男色で、初めて楽しむ東洋人の獲物をみて興奮していたとしたら、乗ったとたんアクセルを踏み込み通りにでて郊外の彼の家に一直線かもしれない。そうなったら奥さんと荷物はおいてきぼりになる恐怖はあったが、私はお言葉に甘えて数十メートル歩くことを放棄し後部座席に乗り込んだ。
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ドライバーにホテルの住所を記したメモを渡すとすぐにOKと車を動かした。英語を理解するドライバーは終始上機嫌だった。少し大回りしてこの東洋人から通常の1日分の売上に匹敵する額を頂戴しようと考えているのだろうか。なめてもらっては困る。私はパリには4,5回来ている。ただの観光客ではない。モンパルナスからカルチェラタンへの距離がだいたいどれほどわかっている。パリの地図だって頭の中に入っているのだ。遠回りしたらその場で羽交い絞めにしてやってもいい。海外では猜疑心が一層強くなるのが私の悪いところかもしれない。
ドライバーは悪人ではなかったようだ。リュクサンブーグ公園の脇、カルチェラタン界隈を通り車は10分程度でパリ第一大学(ソルボンヌ)横のホテルに横付けされた。後方のドアを開けスーツケースを引っ張りだしてくれたドライバーに法外なチップを与えると「ありがとうございます」と日本語で礼をしてきた。パリを訪れる日本人がいかに多いのかを知らされた。でも近い将来、いやすでに東洋人を見ると「謝謝(シェイシェイ)」というドライバーが多いのかもしれない。

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