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第131話 強くなければ生きていけないパリ交通事情 [パリ]

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地上に出てもベラールさんのドライビングは70歳代半ばとは思えない荒っぽさである。少しでも隙間があれば横の車線に割り込む、これは無理でしょと思うようなところでも車を滑り込ませるのだ。そして例え割り込みがあきらかであっても後続の車に「ごめんね」「入れてくれてありがとう」的な会釈合図などすることは皆無である。
片側2車線の道路を走行中のことだ。右側の走行車線に路線バスが走っていた。ベラールさんはその先の交差点を右折しなければならないことに気づいた様子。バスも結構なスピードで走っている。普通の人ならバスを先に生かせて、その後続の車に会釈をしてバスと後続車の間に割り込ませてもらうはずだ。ひとまず右車線に移ってから、その先の信号を右に曲がるであろう。ところがどっこいパリジャンは違う。ベラールさん何を思ったか突然アクセルを踏み込んだのだ。ウインカーは右折を知らせている。そしてバスとその前を走る車の間に強引に、いや無謀といった方が適切かもしれないが、とにかく車をすべりこませるというか直角に入り込みそのまま交差点を右折したのである。つまり2車線の左側、センターラインよりの走行車線から、右側の車線を同方向に走行するバスを無視して大回りして右折したのだ。まるでアクション映画、香港映画のジャッキーチェンだ。
当然バスの運転手さんがブレーキをかけなければバスはミニの側部に激突していたに違いない。まかり間違えば大惨事。“日本人夫婦パリで事故死”のニュースが日本のメディアを賑わせたに違いない。しかしバスの運転手から急ブレーキを余儀なくされたベラールさんの横暴な割り込みに対する怒りのクラクションがきこえてこない。突如左側車線から現れた車が前を横切っていたことなど無視しバスは平然と直進していったのだ。ひょっとするとブレーキすら踏んでいなかったのかもしれない。パリでは当たり前の光景なのだろうか。パリの道路では弱肉強食、遠慮していたらいつまでたっても目的地にはつかないのかもしれない。高速道路ではマナーのよろしいフランス人も街中では別の顔を持つということか。いつもは穏やかなベラールさんですらそうなのだから。

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第130話 ベラールさんの運転 [パリ]

私が出張でヨーロッパを訪れていた12年前のこと、ロンドンのオランダパーク近くのイタリアンレストランで取引先のイギリス人と夕食をとっていたとき、以前から彼の態度、もしくは性格、それとも彼が英国人であるということを不快に思っていたのか、ベラールさんは、突如彼を荒々しい言葉でののしりだしたことを思い出した。彼が失礼なことをいったわけではない。どちらかというと和やかに食事をしていたのだが。そのときのベラールさんは今にも血管が切れるのではと思うくらい興奮していた。同席していたフランス人の部下になだめられてその場は収まったが、ベラールさんは英国嫌いであるという一面を知らされた場面だった。そのベラールさんがミニに乗っている。BMWに移ってからのミニではない。リアにはGBと大英帝国を示す大きなエムブレムが取り付けられた英国生まれ育ちの最終版ミニクーパー40周年記念モデルである。奥さんの車であるにしろ、よく英国車を購入することをOKしたものである。ベラールさんも70代半ばにして人間が丸くなってきたのだろうか。
ゴールドのミニクーパー、中はローズウッドがふんだんに使用されているまさに小さな高級車である。高級車といえば大型車、どうして日本ではこういう小さな高級車が生まれないのだろう。生産しても売れないのかもしれない。私は日本人の感性を呪った。外観は小さいミニだが、中は意外にも広い、となればたいしたものだが、中はやはりそれなりに狭い。後部座席にすわった奥さんは、帰国後、ミニは乗り心地も悪いし、何より息苦しかったと嘆いていた。
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ベラールさんはマニュアルシフトのミニを操り駐車スペースから車を出した。一方通行の駐車場内をかなりのスピードで走る。やがて地上へつながるらせん状の上り坂に入る。するとベラールさん、アクセルを踏み込み、タイヤをキーキー鳴らしながら地下7階から地上へ猛スピードで走るのだ。まるでフランス映画「タクシー」の一場面を見ているようであった。いくら対向車がこないことがわかっていても、ひとつハンドル操作を誤れば壁面に激突である。私のドア側アームレストを握る手も自然と汗ばむ。後部の奥さんは悲鳴をあげつつウインドウ上部に備えつけられたグリップを握りしめ地上への無事帰還を待っているようであった。

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