SSブログ

第115話 博物館のような邸宅で再会 [パリ]

正面ドアのロックが外れたようなので私たち中に入った。中といってもその建物の玄関ロビーのようで薄暗い。先にはまた別のドアがある。その横にはまたしてもインターホンが。そして外と同じに暗証番号を打ち込むテンキーが。そこでさらに番号を押さないと目の前の扉は開かず住人たちのプライベートスペースには入れないシステムのようだ。Wチェックということか。しばらくすると分厚いガラスドアの向こうにベラールさんの姿が見える。建物の中からは何の操作をすることなく自動ドアでロビーにでられるようだ。ベラールさん登場、仕事が激務だったのか、昼寝の最中だったのか頭がぼさぼさである。
DSC01067.JPG
私は2年前にベラールさんが来日したとき成田空港まで車で迎えにいき宿泊先の新宿のホテルまで送ったことがあるが、私の奥さんは数年ぶりの再会だ。文字通り玄関先での挨拶の後、外のドアを開けるための暗証番号を教えてくれた。明日はこの番号を使って中に入り、今いる玄関の中のインターホンで呼び出してくれればいいという。ベラールさんは奥さんがフランス語を多少話すことを知っているので最初フランス語で数字をいった。奥さんは復唱しメモしたが、ベラールさんは確認のためだろうか英語で再度数字を教えてくれた。これで完璧である。中に入ると右手に小さなエレベーターがあった。手動で開けるかなりレトロ感漂うエレベーターである。それに3人以上は乗れそうにない。ベラール邸は二階と三階とのこと。三階は事務所スペースも含まれているようだ。ゆっくりと動くエレベーターが二階に到着する。これまた手動で扉をあけるとそこはもうベラールさんの家だった。エレベーターを降りると自宅ということはベラールさんは2,3階2フロアを独占していることになるのだろうか。ベラールさんが靴を脱ぐようにスリッパを差し出してくれた。日本の住居を真似て室内は土足厳禁にしたそうである。
DSC01059ss.jpg
エレベーターをおりた瞬間、そこはまるで美術館、博物館のようだった。前回訪れた際も廊下に数々の作品、当時は娘さんが描いた作品を中心に壁が数々の絵画で埋まっていたが、今は若手画家の作品も収集しているとか。アーチストを育てるパトロン、もしくは自分が目をつけた画家が大成することを楽しみしているのだろう。奥さんの姿が見えないので所在を尋ねると絵画教室に行っており不在とのこと。夫婦ともにアートと歴史には目がないようである。明るいリビングに通されるとそこは大英博物館かアンティークショップかと錯覚するほどの彫刻や歴史を感じさせる各国の古美術品が点在する。リビングのコーナーには飾り棚が設けられこれまた世界各国で買い求めてきたであろう民芸品というには軽すぎる、値の張りそうな品々が展示されていた。室内の作品群に気をとられ唖然としているとベラールさんがおもむろに庭の見える窓際に私たちを誘導した。

nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

第114話 夕暮れ時のパリ5区を歩く [パリ]

DSC01077ss.jpg
ホテルからベラール邸までは地図でみる限り徒歩で5分程度。ヴィクトル・ユーゴー、アレキサンドル・デュマ、キューリー夫妻などフランスに貢献した偉人たちが眠るパンテオンを左手にみつつ直進し狭い道を左折すればベラール邸に到着する。私は12年前に訪れているが、そのときは日も暮れかかっていたし、ベラールさんの車に便乗していただけなので、ライトアップされたノートルダム寺院の横を通ったことは覚えているが邸宅がどこに位置するのかなど全く記憶にはない。ただ一軒家でもないマンション風建物の中にもかかわらず広い庭があったことを覚えている。
ちょうど通りで立ち話をしているおじさんがいたのでメモを見せてこの住所はどこか尋ねると前のビルを指差す。そこのインターホンを押せばいいと親切に教えてくれた。インターホンの横にはこのビルだかマンションだかのテナント名あるいは住人の名が掲示されており、尋ねたい相手の横のボタンを押せばその事務所?部屋?につながるようになっている。さらに住人用なのだろう、暗証番号を入れれば開くようにテンキーもあった。私はミッシェルベラール邸のボタンを押した。反応がない。日本のようにせまい家なら、外でインターホンをならせば、家の中でチャイムやブザーが鳴っている様子がわかるがここではそうはいかない。留守なのだろうか、応答がない。しかたないことだ、今日パリに到着することは日本を発つ前に日程表もメイルしておいたし、昨夜オンフルールから電話もしている。でも今日伺うとは何もいっていない。明日の晩にパーティをしようと家に招待されていただけなのだから。重たい本を持参したがポストに入れるわけにもいかない。明日再度もってくればいいだけの話である。
あきらめてその場を立ち去ろうとしたらインターホンから声がきこえた。ベラールさんの声に間違いない。どなたさん?とフランス語でいわれたので名を告げると驚いたような声をだした。アポなしの訪問は先方からはあまり好まれない。海外ならなおのことだ。第一線を退いてはいるものの相手はまだ仕事をしている身だ。自宅が仕事場とはいってもまだ労働時間内、自由がきかないかもしれない。私たちの行動は無謀だったと後悔しても時は戻らない。しかしベラールさんはすぐに行くから建物の正面ドアのロックが外れたら中に入って待っていてくれといってインターホンを切った。

nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。