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第95話 木彫りの杖 [ヴェズレイ]

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サンマドレーヌ教会の横にある土産物屋に入る。大仏や八幡宮近くにあるそれとかわらない。絵葉書や指輪、仏像や大仏様ではなくキリストやマリア像が陳列されているところが大きな違いといえば違いである。店内をまわりひととおり商品をみた私は、廉価の土産品を物色する奥さんを店内に残し外にでた。すると入り口の横に、柄の部分に彫り物がある木製の杖が。柄の部分は犬とか馬とかの動物が彫られている。多分ここからスペインのサンティアゴ・デ・コンポステーラへ巡礼に行く人が、こうした杖を購入していったのだろう。富士登山の杖のようなものだと思った。
柄の部分に貼られた値札をみてびっくり。お買い得なのである。私は馬好きの知人への土産として1本購入することを決めた。もちろんこれをもってこの先どうやって移動するか、日本にどうやって持ち帰るかという問題があったので迷いに迷ったが。今後のフランス国内の移動は車なので問題ない。だが難問は日本への持ち帰りをどうするかである。木製とはいっても、一応ここからスペインまで長丁場の巡礼にも耐用すべく杖の先には金属の突起物がついている。使いようによっては人を殺傷できる威力もありそうだ。となると機内には当然持ち込めない。スーツケースと一緒に預けたら、飛行機の貨物室に収納される前に折れてしまう可能性もあるし、紛失してしまうかもしれない。悩みに悩んだ結果、最終的には、ケセラセラ、まあどうにかなるだろうと購入することに決めた。
それほどその杖の価格がリーズナブルだったのである。日本に持ち帰る1本をどれにするかも一苦労だった。柄の部分にあたる馬の表情がそれぞれ異なっていたのである。機械で彫っているものではないことは一目瞭然。額が異様に広い馬もあれば、見事に調和のとれた顔の馬もいる。その中でも一番自然な表情に近い馬を引き抜き私は店内に戻った。店主と思われるおじさんに杖をさしだすと彼が苦笑したようにみえた。「これ、本当に買うの?日本へ持ってかえるの?」と呆れた表情に見えたのだが気のせいだろうか。私はいくら価格がリーズナブルだからといって途中で無くなってもいい、壊れてもいいとは思わなかった。絶対にこの馬を無事に日本まで持ち帰ってみせると心に誓ったのである。

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第94話 日本人ツアー客同泊 [ヴェズレイ]

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部屋はそれほど広くはないが明るく綺麗だ。この程度の広さなら奥さんも落ち着いて眠れるだろう。西洋建築の特徴、縦長の窓から望む澄んだ青空と緑が眩しい。冷蔵庫は当然ないがバスタブはある。バスルームにも大きな窓があるが野鳥の囀る森の木々が見えるわけではない。眼下に広がる村が見えるわけでもない。隣接した従業員宿舎の窓がすぐそこにあった。ブラインドがなければ全てご覧いただけます状態だった。しばらく休憩の後サンマドレーヌ教会に向け参道をゆっくり散歩することにした。
退室しようとドア付近に行くとドアの外がやかましい。そして何やら聞き覚えのある騒音が。なんと関西弁を話す団体客のようである。サンマドレーヌ教会があるヴェズレイはキリスト教の三大巡礼地のひとつスペインにあるサンティアゴ・デ・コンポステーラへの巡礼路として世界遺産に登録されているが、この雑音を発する集団が敬虔なキリスト教徒とも思えない。パリからオプショナルツアーでわけもわからずやってきたご一行様であろうか。しかし滞在中奥さんがこのご一行様の一人と、ホテルの外で一服中に遭遇し情報収集したところ、ジュネーブやパリなど欧州のロマン・ロランゆかりの地を訪ねるツアーご一行様だったとか。ノーベル賞作家ロマン・ロランが最期を迎えた地はここヴェズレイ。私たちより遥かに学術的な旅をしている方々だったようである。しかしながら集団となると静かなホテル内をヘルスセンターとでも思っているのか大声を発しながら移動するというところはいただけない。学問も大事だがまずマナーを学んで欲しいものである。
参道の両側には様々な店がならんでいた。江ノ島の参道のように土産物屋だけではない。この丘自体がひとつの集落なので、酒屋もあれば八百屋もレストランもあるのだ。ふとんやさんはなかった気がする。興味深い土産物屋もあったが帰路に寄ればよいかと教会へ向かう。
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途中ワインショップに立ち寄った。ブルゴーニュの聴きなれた地名畑名が記されたラベルのワインが店内には溢れていた。すると女性スタッフが試飲をできますよと声をかけてくれた。この東洋人、ラベルを見つめる眼光が鋭い、ただものではない、ワインジャーナリストではないか、と思ったのだろうか。今朝までニュイサンジョルジュにいたことなどを話しつつ何種類のワインを試飲させていただき、何も買わずに店をでた。それはそうだ日本に持ちかえるワインをわざわざこの地で買う必要もない。今夜のワインを手配する必要もない。フェブレイ社での試飲で余った高級ワインをペットボトルに詰め替えてこの地まで持ってきているのだから。
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