SSブログ

第89話 高級ワインお持ち帰り [ニュイサンジョルジュ]

DSC00779.JPG
通常試飲会では、口に含んでワインの評価が下されたなら口の中に残ったワインを専用のクラッシャーに吐き捨てる。しかし私たちはそんなことはできない。口に含んだワインはすべて喉を通過させ胃袋でもテイスティングをしたのである。
白ワインのミュルソーは普段我が家の食卓で飲んでいる白ワイン(といっても定価なら1本2千円はする代物だ)とは異なり葡萄本来の味を感じる。口の中でまとわりつくわけではないが濃厚だった。コルトンはコルトンでここ何年触れたことのない香りを楽しめた。私たちはワインの輸入会社にはいたが飲み手のプロではない。だからフェブレイさんも専門的なコメントを私たちに求めることはなかったが、5本すべてを抜栓して試飲が終わるとどれが最も美味しいと感じたかとシンプルに尋ねてきた。私は正直に美味しいと思ったコルトンを挙げた。奥さんも同様である。するとフェブレイさんはまだボトルに3分の2以上残っているコルトンを持っていきなさいという。日本に持っていきないさいという意味ではない。コルクが抜かれているので飛行機に持ち込んだらこぼれて周辺の乗客に迷惑をかけることは必至。つまり部屋で飲みなさいという意味なのだ。部屋のワインセラーにもワインは用意されていたがさすがにコルトンはなかった。私たちは喜んで好意に甘えることにしたのである。白ではどれかというのでミュルソーを指差すとそれも持っていきなさいという。さらに赤のニュシサンジョルジュも渡してくれた。
思えば私たちは試飲会の最中何も食べていない。今夜はフェブレイご夫妻がディジョンの親戚の家を訪れることになっており私たちだけでのディナーとなることはわかっていたので、パテやハムなどおかずになりそうなものは昼間ニュイサンジョルジュの商店街で調達しておいた。朝のバゲットの残りと部屋のセラーにあるワインを1本あければ十分満足な夕食と考えていた私たちには、コルトンやミュルソーは思いがけないプレゼントである。私たちは先ほど同様、フェブレイさんの後を必死についていき地上を目指した。3本の貴重な戦利品を手にしているので絶対転倒しないよう足元に一層の注意をはらいながら。

nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

第88話 テイスティングで久方ぶりの高級ワインを [ニュイサンジョルジュ]


ひと休みした後、フェブレイ社の事務所棟へ向かう。今夕はフェブレイさんが私たちだけのために試飲会を開いてくれるというからだ。社内にテイスティングルームがあるのかと思っていたらそうではないらしい。テイスティングルームは地下の酒蔵の一角にあるそうだ。フェブレイさんの後に続き昨日も案内された酒蔵に足を踏み入れる。垂涎モノの瓶詰めされたワインの間を延々と歩く歩く。通路ごとに照明があり、フェブレイさんはそれを点けては消し、点けては消しを繰り返しながら目的地を目指す。ここでフェブレイさんに見捨てられたら私たちは餓死するだろう。帰り道がまったくわからない。照明を消されたら一巻の終わりである。ワインは飲み放題かもしれないがチーズのようなつまみがないと私たちはそうそう飲み続けることはできない。高級ワインの中で溺死するなら本望だとはとても思えない。私たちは必死にフェブレイさんを追った。
DSC00668.JPG
やがてテイスティングルームに到着。酒蔵の中の応接室とでもいおうか。テーブルの上にはすでに数十個のワイングラスがおかれていた。入口近くの小さな台には今日試飲させてくれると思われるワインが数本置かれている。私たちがテーブルにつくとテーブル上に今日の日付が印字されたA4サイズのテイスティング用のファイルが置かれていた。開くとフェブレイ社の概要や、現社長であるフェブレイさんの次男坊エルワン氏が掲載された専門誌のコピーがファイリングされている。そして今日のテイスティングワインリスト。5つの銘柄の横は空白になっており、試飲する者がその評価を書き留められるようになっている。
DSC00783.JPG
今日テイスティングするワインは赤3本、白2本。その銘柄はすべて私が知っているものだった。加えるならただ知っているだけでここ数年口にしたことのない銘柄ばかりである。私の頭の中の電卓が稼動する。紀ノ国屋さんで5本すべてを購入したら片手を間違いなく超える。銀座レカンあたりですべてオーダーしたら原チャリが何台か買える金額になること間違いなしだ。飲みたいと思っていたコルトンもある。20数年ぶりのコルトンだ。ブルゴーニュを訪れた甲斐があったというものだ。

nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。