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第139話 ベラール夫妻とのお別れ [パリ]

劇場からホテルまで駐車場所までもどる途中、セーヌの対岸にそびえる青光りするエッフェル塔をバックに記念写真。まっすぐにホテルに向かってお別れかと思ったら、ベラールさん遠回りして夜のモンパルナス周辺を案内してくれた。道路沿いにはレストランの色とりどりのイルミネーションが光る。暗くて背景が見えないだけにパリというよりロサンゼルス郊外を走っているようでもあった。
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車はソルボンヌ広場に到着、いよいよご夫妻とお別れである。一旦車から降りて私たちとの別れを惜しむ二人に、私たちは滞在中のおもてなしに対し深く深く感謝していることを、ありったけの単語を並べて伝えた。お別れのセレモニーを終えるとロレッタさんはミニクーパーの後席ではなく助手席に乗り込む。「オルボワール」 また会えるかもしれないし、永遠の別れになってしまうかもしれない。私たちはミニクーパーのテールランプが見えなくなるまで手を振り続けた。
手を振り続けたからではないが、小腹が空いた気がする。そう思ったのは私だけではなさそうだ。エスカルゴを食べたホテル横のカフェはまだ営業していたので腹を満たすことにする。パリ最後の晩餐はコンサート前に済ませてはいるがフルコースではなく軽食だ、あれから時も経った。空腹も無理はない、これが本当の最後の晩餐になると自分に言いきかせた。選ばれた食べ物はピッツア、パリの最後をピッツアで締める、何ともお洒落である。この2週間余りのいろいろな出来事を思い出しながら、周囲から聴こえるフランス語を肴にピッツアと黒ビールを腹に納めた。
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明日の午前中は睦美の住まいに行き、彼女とパリ最後のランチをとり、午後にはホテルにもどった後、シャルルドゴール空港へ向かうことになっている。あと72時間後には間違いなく私は日本のオフィスにいて、たまった2週間のお仕事をひとりもくもくと片付けているのだ。とにかく明日がある、残された時間を楽しもう、そういいきかせつつ、私たちは荷造りをすべくホテルに戻った。

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第138話 初めてのクラシックコンサート [パリ]

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日本でもかつてロンドンで生活していた時にもロックコンサートには何度も足を運んだことはあるがクラシック、フルオーケストラの演奏を劇場で聴くことは私にとって初めての経験だと思う。当初はオペラ鑑賞を薦めたベラールさんだったが私たちの滞在中にパリ市内でオペラの上演はなく、この劇場でのコンサートだけが私たちがクラシックに触れる唯一のチャンスだったそうである。
正面入口から劇場に入るとロビーフロアの中央に緩やかなスロープの階段があり、その階段は途中で左右に分かれていた。ロビーはすでに着飾った紳士淑女で溢れている。もちろんイブニングドレスやタキシードといった人がいるわけではない。それに近い人もいたが、大抵はジャケットを羽織った紳士、ドレス姿のご婦人方である。ジーパン姿の若者は当然見つけられない。当然ベラールさんはチケットを4枚入手してくれていたが、並びの席ではなかった。私たちが日本を出発間際に手配をお願いしたので、チケットの残数も少なかったのだろう。二枚は1階、それもステージの最前列の真正面。残りの2枚は二階席だという。ベラールさんと私は二階席、ご婦人方はコンサートホールの迫力を味わってもらおうとステージ前で鑑賞することになった。歴史ある劇場だけに内部は映画で観たことのあるようないかにも重厚なクラシックをおきかせしまっせという雰囲気が漂っている。この会場に小林幸子や美川憲一が派手な衣装で登場したらおかしなことになることだけは間違いない。
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その夜の指揮者はフランスでも若手有望株といわれる人物。彼の指揮にあわせステージ上のバイオリン奏者が激しく弓を動かす様子は、海岸に打ち寄せる荒波を見るようで衝撃的だった。休憩時間にロビーにおりる。ベラールさんは知人を見つけたらしく、挨拶を交わした後に私を紹介してくれた。「何だお前、日本人なんかとつきあってんのか」とは言っていなかったと思いたい。少し遅れてロレッタさんと奥さんがロビーに現れる。指揮者を目の前に演奏をきいた奥さんは指揮台の上で踏み鳴らす彼の足音まで聞こえ迫力があったと興奮気味だった。
しばしの休息の後、それぞれの席に戻って後半の演奏を堪能した。日中の疲れだろう。大音響の中、途中ベラールさんが居眠りをしているのを私は目撃してしまった。私も睡魔に襲われたから当然といえば当然。しかしステージ下で見る奥さんは居眠りすることすら許される状況ではなかっただろう。

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