SSブログ

第109話 返却できると思ったら駐車場は別のビル内に [パリ]

2017-06-12ss.jpg
しかしまたしてもその男はとんでもないことを言いだした。「ここは事務所でではない。返却場所はあそこだ」といって道路の向こう側にそびえる高層ビルを指差した。しかし、インターネットで予約を入れた後の契約書にも返却場所と記されているのは間違いなくこの事務所でこの住所。だから私は日本にいるときインターネット上でこの界隈の地図を引っ張り出し、ここへ到達するまでのシミュレーションを何度もしてきたのである。もちろんそれが100%活かされたとは思ってはいなかったが。
それにリヨンでこの車を借りたときも、おばさん職員は返却場所としてこの住所をいっていた。それなのにここではないといわれても困る。だいたい私の緊張の糸はさきほどエンジンをきったときにプッツンしているのでる。あと数百メートルといえども無事に走りきる自身などない。だが男が代わりに運転してその場に連れていってくれそうにもないので、私は真の返却場所の所在地を再度尋ねた。
男はあのビルの地下だと道路の反対側を指差す。だがそこへいったいどうやっていくのか。こんな大通りでユーターンなど不可能だ。男はあそこを右折してしばらく走ると大きな交差点になるそこをぐるりとまわれば反対側の車線に戻れるとこともなげにいう。そりゃその男のようにパリで生活し毎日この道を走行しているのならたやすいことだろう。しかしここはフランス右側通行、日本が左側通行であることをこやつは知らないのだろう。それにパリは東京とは大きく異なりマナーやルールなど存在しない戦場のような交通状況。私の不安は募るが、ゴールを目指すにはチャレンジするしかない。
あのビルの地下駐車場に入り、駐車券をとって地下3階に行けばハーツの看板があり、そこが返却場所になるという。私は何度か確認した後、再び触れることの無いと思っていたセルをまわし、無法者ドライバーであふれたパリの大通りに慎重にかつ大胆に合流した。
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

第108話 ようやくレンタカー返却場所へ [パリ]

PA060333.JPG
しばらく走るとトラム(路面電車)が見えた。神が手を差し伸べてくれたのだろう。大半が地下を走るパリ高速環状線に沿うような地上の一般道には省エネを意識したトラム3号線が走っていることをガイドブックで学んでいた。これにしばらく並行して走り、どこかで左折すればモンパルナスだ。私たちは安堵した。
市街の一般道は大抵2車線なのだが、前触れもなく1車線になるところがある。さらに強引に車線変更するドライバーもいる。日本人らしく慎ましく遠慮していたのではなかなか先に進めないし、後続車に煽られる。私も図々しくいかなくてはいけない。だから2,3度相手に急ブレーキを踏ませるような危険な行為を犯した。奥さんは全く気づいていないようだったが。
パリ市内西部を彷徨ったが、ようやく最終目的地であるモンパルナス到着である。高速の出口を間違えておりてから1時間以上はたったのだろうか。大通りに面したハーツの事務所に到着した。幸い事務所の前に車を停止でき、私は静かにエンジンを切った。これで車の運転から解放された。後はハーツの係員が車を移動させてくれるはずである。私は事務所内に入り、カウンターにいた職員の男に車の返却にきたことを告げた。彼は私とともに外へでてきた。私は車のチェックをするのだろうと思ったが、彼の口から意外な言葉が発せられたでのである。
「これはうちの車ではない」と言い放った。そんなこといったってこれは1週間前、リヨンのハーツで借りた車に間違いない。途中で車が入れ替わったことなどありえない。私は車内のバッグから契約書を取り出し男に見せた。男はそれでも首を傾げているので私はガソリンの挿入口を開けて、その内側に貼られた「これはガソリン車である」ことを示したハーツのステッカーを見せ付けた。ディーゼルが普及しているヨーロッパでは、ガソリンと間違えて軽油を入れてしまう客がいるらしく、こうしたステッカーが貼られているのだろう。しかし、そのステッカーが思わぬところで効力を発揮した。男はようやく納得したようでハーツの車であることを認めた。

nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。